第16話
☆☆☆
「あんた達、二人で大丈夫?」
サヤカが運転しながら後ろに座っている二人に声をかけた。
けれど、二人とも返事はせず、ソラが不安そうな表情を向けているのが、バックミラーで確認できる。
あれからりえは興奮を抑える為に安定剤を注射され、今は眠りについている。
「一旦学校に戻ろうか。私もまだ仕事残ってるし」
サヤカの提案に「そうしてください」と少し疲れたように言うソラ。
「あんたも寝てていいよ。学校ついたら起こすから」
「いえ……。先生、あの女の子って?」
「あぁ……。前もあの病院にいたんだよ、その時もりえ、気分が悪くなってた」
「何かりえと関係があるんですか?」
「それは何とも。私もあんな子見たことないし、近所子ってワケでもなさそうだしなぁ」
首を傾げるサヤカ。
「でも、三年の国方って人もあの子を見たって言ってたんです」
「国方が?」
眉をよせるサヤカ。
ソラは頷き、「学校で三つ網に赤いスカートの女の子を見たって」と言う。
「学校で……?」
呟き、サヤカは国方の言っていた言葉を思い出す。
『前ここで女の子見たんっすけど』
『先生、ここに幽霊が出るって知ってる?』
「まだ学校に国方がいるハズだから、話聞いてみよう」
そう言い、サヤカはスピードを上げた。
☆☆☆
三人は学校へ戻ると、まず最初にりえを起こして保健室に寝かせることにした。
ソラと同じくらいの身長だから、二人がかりで支えていけばそれほど重くはない。
「カギかけとくから、起きたら勝手に出ておいで。私は職員室にいるから」
まだ半場夢の中にいるりえに一言そう声をかけて、保健室を出る。
「私、国方さん探してみます」
「あぁ、わたしも早めに仕事終らせるから。でも、勝手な行動はするなよ? 特に地下室は変なやからが溜まるから」
「わかりました」
それだけ言うと、ソラはサヤカと分かれてまずは三年の教室へ向かった。
ほとんど生徒がいない中、グラウンドでは男子生徒達が部活に汗をかいている。
どこからか聞こえてくる発声練習は演劇部で、音楽室からの音楽は吹奏楽部。
けれど、それ以外の音は自分の足音だけで、ついさっきまで騒がしかった教室に人影はない。
「やっぱり、教室にはにないかぁ」
一通り三年の教室を見て回ったが、どの教室にも人はいなかった。
国方のことを思うと、図書室なんか行かないだろうし、今日は屋上も閉まっているし。
そう考えると残りは地下室だけになってしまう。
ソラはどうしようかとウロウロ歩き回りながら、国方の携帯番号くらい聞いておけばよかったと後悔する。
しばらくその場で困っていると、前方から見覚えのある男がやってくるのが目に入った。
「安田……」
少し嫌な顔をし、ソラは呟く。
けれど、安田はいつもと違い、なにやら慌てている様子に見えた。
「ねぇ、どうしたの?」
すれ違い様、ソラが声をかけると、一瞬「ひゃっ!」と声を上げて飛び上がる。
どうやら、ソラの姿も目に入っていなかった様子だ。
「どうかしたの?」
「え……、いえ、別に」
明らかに様子がおかしい。
「それ、何?」
安田が手に握り締めているノートに目をやり、ソラが聞く。
「いえ、なんでもないです」
咄嗟に、ノートをかくす安田。
「ふぅん」
頷き、興味なさそうに視線を宙に泳がせた後、スキを付いて安田の手からノートを奪い取った。
「あ! 何するんですかっ!」
慌てて取り返そうとする安田。
けれど、ソラよりも五センチほど背の低い安田はノートを取り返すところかソラに笑われてしまう。
「何、なんか怪しいもんでも書いてるの?」
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