第13話 修学旅行編 兄妹喧嘩
ピリピリと肌に感じる弟の殺気。手を抜いたら本気で殺されるかもしれない。だが、こちらも殺される訳にはいかないし、殺す訳にもいかない。しかし動きを止めなければ、可愛い弟が反逆者になってしまう。
皐月の中で気持ちがだんだんと
____
ランドは瞬時に判断する。突っ込んでくる皐月と距離を取れば如月に狙い撃ちされるだろう。ならばこちらも突っ込むしかないと。
「
近接なら近接武器で対応しなければならない。ランドの両腕にトンファーが現れる。
他にも剣や弓等にも変えれるが、ここでその武器では対応出来ないと判断した。
皐月の能力は『
皐月の右ストレートが飛んできた。この攻撃を受けても良いが、亥突に触れられたらその分威力が増すだろうと判断し、拳に合わせて半身横にずらすと腰を低く落としガラ空きのボディに手を伸ばす。その攻撃は読まれていたのか、肘を曲げ振り下ろされるが、ランドは地面に手をつき回し蹴りを放とうとしたが、手をついた瞬間に地面が爆発を起こす。
舌打ちをし、地面が爆発した所でこちらに痛み等は感じないが手が使えなくなるのは防がないといけない。
大きく息を止め無理矢理身体の向きを変える。皐月の攻撃の右腕に掴まると、それを足場に後ろに飛び退いた。
その動きに合わせてクナイが三本飛んでくる。如月の血が付いているであろう。撃ち落とすか避けるか…撃ち落とすにしては隙が無いため地面を蹴り横に逃げる。
今度は皐月が両手を頭の上に組み飛び上がって襲ってきた。月明かりで影が出来、その行動にいち早く気づけたのが大きかった。ランドは更に1歩後ろに飛び退くと振り下ろされた両手が地面を砕いた。土煙が上がる。振り下ろされ一瞬の硬直。その隙をランドは見逃すはずも無く、土煙の中から皐月の頭をめがけて手を伸ばした。
皐月は両足に力を込め腕を自分の後ろに持っていく、その反動で足を伸ばしランドの頭を蹴りあげようと試みたが、その攻撃をサラッと
しかし、魔力を込めてる暇が無かったので普通の一撃になってしまったが、亥突との攻撃も
ダメージは入ってるハズだったが、皐月はすぐさま態勢を整えると一旦距離を置く。
「さっすが…キツいぜコイツはよ」
血が混ざった唾を吐き捨てた。兄のサポートを受けてるとは言え、2人がかりでこのザマとは何とも言えない気分だ。
「ランドよ。お主、本当にこの塔を破壊するのをやめないつもりか?」
如月が問う。ランドの目は辞めるつもりは無いと言う意思が見える。
「そうか…ならば、ワシも本気でお主を止めないといけぬな」
如月が両手を広げる。身体中に巻きついてた包帯が
「
人の血液と言うのは、綺麗な赤と言うよりも少し黒みがかかった色をしている。そして黒という色はランドには"見えない"色だ。魔陣血界を使えば自分の血液を自由に動かす事ができる。そしてそれは、ランドはまた見えない攻撃を受ける羽目になるという事だ。
この技は、昔ランドの妹の雪音に見られた時、ただでさえ不気味な姿をしている如月なのに、更に怖がらせた事もあり封印していたのだが、この際そんな事を言ってる場合では無くなったのだ。
皐月は一気に距離を詰め攻撃を始める。
皐月の攻撃を避ければ空中で爆発が起こり結果的には攻撃に当たるという負の連鎖。距離を取ろうにもどうすることも出来ない、今はこの攻撃を耐え
「ランドよ。諦めろ!この世の中、手を出してはいけないものと言うのがあるのじゃ。ワシらはお主を失いたくないこの気持ち…お主には分からんじゃろ」
「そんな気持ち…俺が分かるかよ。俺はただ守りたいだけなんだから、邪魔すんじゃねえよ!!!」
バンと言う音と共に皐月が吹き飛ばされる。ランドが何かをしたはずなのだが、何をしたのかは分からない。
「失いたくないって…俺だってみんなを失いたくないさ。でも、コイツらだって失いたく無い物があるんだよ!反逆者がなんだ!そんなものいくらだってなってやるよ!俺は守れるならば死んだって構わない!!」
身体の中を熱い炎が噴き上がる気持ちになってきた。これがどんな感情なのかは分からない。ただ激しく熱く燃え上がっていく。
「
身体の中の炎が全身を包む。魔力と言う魔力が吸い取られる感覚に襲われた。
「お前バカヤロウ!その技だけは使うんじゃねぇよ!」
皐月が飛び出しランドを止めに入ろうとするが、すぐに押し戻された。ランドの身体から噴き出すかのような魔力が熱く燃え盛り近づくことさえ出来ない。
「俺を止めれるもんなら止めてみやがれ!!」
一瞬にして姿が消えたかの様に見えた。が、すぐどこに行ったのかは分かった。それは、皐月のすぐ目の前。腰を低く落とし皐月の身体に手を当てていた。その姿はもう見た事のある弟の姿では無い。赤龍が
「
内臓が吹き飛ぶような感覚。生きたまま身体をえぐり取られるような痛覚。何が起きたのか分からない。ただ、視界は霞み手も足も動けず息も絶え絶えで皐月は後ろの木にもたれかかったまま静かに目を閉じた。
「貴様!自分が何をやってるのかわかっておるのか!!その力を使えば、お主の龍の呪いが更に進行し、命が刈り取られると何度も説明したじゃろうが!」
そんな兄の言葉に聞く耳はもたない。もうそんなのどうでもいいからだ。
ランドは地面を蹴り次は如月に襲いかかる。如月は撒き散らしていた血を1箇所に集め攻撃を防ごうとするが、直感で防ぎきれないと感じ目を瞑る。
しかし、一向に待っていても攻撃が来る事は無かった。そして気づき塔の方向へと振り返る。
背中から羽根が生え、ほぼ人間の姿をしていない弟が塔の真上にいる。止めようにも足が動かない。
如月は力のいっぱい声を荒らげたが、その声は弟に届かない様だ。
その日、大陸中を巨大な地震が襲う。後に震源元はプリムの街の一角からと判断された。
そして、人狼達が支配している管理塔が粉々に砕け姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます