第12話 修学旅行編 塔

「本っっっっっっ当にすみませんでした!!!!」


睦月が深々と頭を下げるのは、血だらけの布で顔面を抑えながらちょっとかくうえそうな衛兵のおじさん。

まさか、ランドが一般人に手を出すとは考えにくかったのだが、その血だらけの布が全てを物語っていた。

ここは龍エリアにある宿『竜のヒゲ』。昔懐かしい雰囲気のある宿なのだが、1階が酒場になっており、2階が宿になっていた。しかし、今日は学生が泊まるという事もあり、酒場は貸切状態にしてあった。

観光地と言えど日がくれれば外は治安が悪くなる為、学生達は各々おのおの、酒場に集まり飲み物を飲んだり、部屋で休んだりと自由に過ごしている。

そこへ、迷子になったランドを連れて衛兵のおじさんがやって来たのだ。


「いや…俺ちゃんと手加減したし…」

「手加減どーのじゃないの!衛兵さんと言えども一般人に手を出すなんてひどいのよ!」

「これは、赤龍せきりゅうに報告しないとね」

「お兄ちゃん最低…」


睦月むつき水無月みなづき雪音ゆきねの3人は呆れた顔でランドを見た。


「本っっっ当にすみませんでした!申し訳無いです!!」


音羽おとは先生__ランドと雪音の父親は、もう大丈夫ですからと言ってるおじさん衛兵に何度も何度も頭を下げ続けた。


「でも、俺けーごって奴をやっただけなんだよ」

「???」


3人は互いに顔を見合わせコイツは何を言ってるんだと思う。


「さっき、アッチでなんか変なやつが、敬語けーごを教えてやるって殴りかかってきて、そこのオッサンも警護けーごするって言うから殴りかかる前に大人しくさせようかなって」


きっと、ダメな大人に訳の分からないことを教えられ訳の分からない事をしたのだなと父親と兄妹は理解した。こういった変な事はすぐに覚えるのに、文字の書き方や読み方などの勉強は一向に覚えられないのは何故なのか不思議でならなかった。


「ほら、頭を下げてランドもごめんなさいをしなさい」


音羽先生がランドの頭をポンと叩く。


「ごめんなさいは仲直りする事だよな」

「うんそうだよ。ああぁこんな良い子に育ってパパ嬉しいよ」


いつもはしかめっ面な音羽先生が、急ににやけ顔になる。その変化に酒場にいた生徒達が驚いた。


「パパ…周りに人居るんだから親バカになるのやめてよ…恥ずかしいじゃん」


咄嗟に雪音が呟いた事でハッ!と気づき1回咳払いをし、またしかめっ面に戻るがもう遅い。周囲に音羽先生の印象というものが180°変わった事であろう。


「もう日が落ちて来ましたのでわたくしはこれで…」


と衛兵はペコりと頭を下げ酒場を後にする。酒場から出る時にランドがごめんと声をかけるとまたペコりと頭を下げた。


「にしても衛兵さんに手を出すなんて、本来なら懲罰もんなのによく許して貰えましたね」


近くの席に座っていた愛花あいかがジュースを飲みながら声をかけてきた。これも酒場からの気配りで、普段は置いてないジュース等を振舞っている。


「多分、この石を見せたんじゃないかな」


音羽先生がちらりとランドの腰にかかっている緑色の石を見せた。これなんですか?とクレイが質問してきた。


「実はランドは___と言うか、兄妹達もなんだけど、ドルク帝国の帝国軍に所属しているんだよ。で、この石はその帝国軍に所属してるよっていうあかしみたいな物なんだ」


ほほぉと頷きその石をよく見てみる。綺麗な石であるが特に変哲も何も無い。しかし、帝国軍と言うのには驚いた。

Sクラスにも、何とか王国の騎士は居るし、Bクラスにもなんちゃら王国の騎士など、どこかの王国や帝国に属している騎士や軍人等が多い学校とは思っていたが、まさかランドやその兄妹まで軍人だとは思わなかった。


「と言っても、軍に力を貸しているだけであって、ガチガチの軍人では無いんだけどね。それでもこの石を持った人は、『少尉しょうい』以上って言われてるよ」


何となくランドの強さというものが分かった気がした。幼い頃から戦闘訓練などをして強くなっていったのであろう。ただ何故それで呪い等受けないといけなかったのか…。という謎も残ったのであった。


「軍の任務にあたった時の収入とかは全部この石の中に入ってるんだよ。って、音羽先生知ってた?」


先生に代わり睦月が説明を始めた。音羽先生はいま初めて知ったという表情で首を横に振る。


「どうせランドの事だし、多分説明も無かったでしょ。軍関係者は、この石をピッてやるだけで買い物やら何やらが出来る優れものなんだから」


自分むつきにも配られた石を見せながら説明をする。音羽先生はどういう仕組みになってるのか石をぺたぺた触り色んな角度から見る。


音羽おとは先生とうさんもし良かったら、多分この酒場にもその石で会計するやつあるからランドの残高見てみない?」


酒場のカウンターの中には、この宿の主人であろう男がグラスを磨いている。睦月は近づき一言ひとこと二言ふたこと話すと、主人は足元をゴソゴソと探り、何かの機械を取り出した。言うならばその機械は、木星の外側の輪っかの部分みたいな機械だ。

睦月が手を招き、石を持った音羽先生が主人の持っていた機械に石をはめ込む。

ピピッと機械的な音が鳴り石に数字が表示される。雪音も気になり2人の間から覗いてみた。同じ班の他3人は気になったが、さすがに個人の情報なので自重する。


「………!!」


どうやら、雪音と音羽先生は2人して声が出ない様だった。見たこともない様な数字の列に言葉を失う。


「睦月お姉ちゃんもこれくらい持ってるの?」


何気なく聞いた質問。


「まさか。私はもっと少ないよ。ランドは夜目が効くから隠密とか危険な任務が多いから___」


と開いた口を慌てて塞ぐがもう遅い。それを聞いていた音羽先生が苦い顔をしている。


「いや、うん大丈夫だよ。知ってるよ。今は学校行って毎日帰ってきてくれるから良いんだけど、前は何ヶ月も家に帰ってこないとかあったじゃないか」


苦い顔から今度は落ち込みだす。前__と言うのは、学校に入学するよりも前のこと。非行少年ひこうしょうねんの様に家に帰らずとかでは無く、隠密で侵入した所で捕まって監禁されたり拷問受けたり等で家に帰れない事が多々あった。


「ランドは"あの人"から授かった大事な子供なのに、何でこんな危険な目に毎回合わされてるのか…」


それは先日あった呪いの本の時の話だ。あの日も1日家に帰らなかった。帰らなかったと言うより帰れなかったと言った方が正しいだろう。

あの日はランドの怪我を治すことが重要だった為、白龍はくりゅうの能力『慈愛じあい』で一日かけて治す必要があったからだ。

え?あの大きな身体で周りから岩男いわおなんて呼ばれてる奴が慈愛とかふざけてんのか!なんて思われるかもしれないが、白龍と黒龍こくりゅうは、本当の姿はドラゴンなのだ。首が長く空も自由に飛べる伝説とも言われる龍が本当の姿をしている。

博愛はくあいの龍と言われてるのが白龍。

破壊と滅亡の龍と言われてるのが黒龍。


訳あって2人は幼少期からずっと人間の姿で過ごしている。黒龍の能力『天龍眼てんりゅうがん』は、人間の姿でも発動する事が出来るが、白龍の慈愛は本当の姿に戻る必要がある為、あの日はランドを連れ山奥で治療を続けていたのだ。


「さぁさぁガキどもメシだよー!」


重くなった空気を打ち砕く様に水無月の声が響いた。そして一部暗い空気を出していたカウンター前までやって来る。


音羽先生パパどうしたの?お腹すいて暗くなってた?ここのご飯めっちゃ美味しいって話だから楽しみなんだけど」

みーぇ今、そんな空気じゃ無いんだけど…」

っちゃん。学校にいる間はお姉ちゃんって呼ぶの禁止って言ったわよね。学校行事中もちゃんと先生って呼びなさい」


水無月の頭グリグリ攻撃に、睦月の悲鳴が酒場に響き渡る。


「水無月先生…相変わらず私服ダサいですね」

「え?何?雪ちゃん。この土木どぼくえもん第37話の生と死は紙一重の名場面パーカーがダサいって?」


その服は、崖から落ちそうなノビキチが腕1本で身体を支えており、その上に土木えもんがいくらで助けてやるかの話をしている絵が描かれている。

雪音の援護射撃も効かず、水無月は振り返りながらもその手を離すことは無かった。


「ほら、音羽先生。生徒達を食堂に案内してあげてください」


音羽先生はコクッと頷くと頭をブルブルと振り、1回気持ちをリセットさせる。いつものしかめっ面に戻ると、石を取り酒場に居た学生達をまとめ食堂へと案内をする。その際に、ランドと雪音も連れていった。


「水無月"先生"そろそろ離してよ…頭砕けちゃうよ…」

「睦っちゃん。ランドの石の中の金額見せるなんて何してるのよ。あんな大金持ってるって事はそれだけ命をかけるほど危険な任務をしてるって分かっちゃうでしょ」


水無月は1回ため息をついた。


「それに、あの子に呪いがかかったのだって全部、軍に所属してた所為せいもあるのに、音羽先生パパ飾音かざりね母さんがどれだけ軍からあの子を引き離そうとしてるのだって知ってるでしょ。あんまり軽率な行動して、あの子の両親に余計な心配かけないであげて」


水無月は手を止める。睦月は涙目になりながら頭に穴が開いたんじゃないかと心配そうに何度も確認をしていた。


「ねぇ、あなたのクラスにずっと殺気を放ってる子がいるわね。ランドは気づいてるのかしら?」

「多分気づいてると思うよ。結構そうゆうとこ鋭いし…でも、あんまり気にしてないみたいだよ」

「強者故の余裕ってやつかしら…それともただのバカなのか」


水無月はぐっと背伸びをすると食堂に向かうために歩き出した。睦月もそれに続く。


「さてと…どうせ眠れない弟は夜中街を徘徊するけども、その辺は気配を消して監視してる皐月さつき如月きさらぎに任せて私たちはゆっくりしましょうね」

皐月姉さつきねぇと如月兄きさらぎにぃは徹夜かぁ…可哀想に」


多分ランドは2人の存在にも気づいてるんだなと思いながら、徹夜組に申し訳なさを感じつつ2人は酒場を跡にした。


________


昼間の観光地と言うのは、とても騒がしく人通りも絶えない喧騒けんそうとした所だ。それとは逆に夜の街は、静まり返り遠くの酒場から酔っ払いの声が聞こえてくる。

ランドは宿の屋根の上から街を見下ろしていた。夜の方が昼間よりもハッキリと物が見える。見えると言っても、他の人たちよりかは見えるというレベルだが。みんなは寝息を立てて夢の中にいる、ランドは寝付けないと言うよりも眠れないという方が正しかった。

街を端から端まで見下ろしていると、街の一部だろうか、小さな森がある。目を凝らしよく見てみると、その森の中に高い塔みたいな物が建っており、その小さな森を囲むようにフェンスまで敷いてある。

その中に何かを飼っているのか、小さく赤い光が数十個と動いていたのが分かった。なんとなく気になりその森へと近づく為に、屋根から屋根へと飛び乗って近づいていく。

この街のこの高さくらいであったら、落ちた所で特に問題は無いだろうと感じた。だからと言って落ちる訳にはいかず、屋根から屋根への移動は少し慎重に移っていく。

次第に森みたいな場所に近づいてきた。屋根の上から見るとなかなかの広さがある。その森の中で動く人の声が聞こえてきた。苦しそうな声だ。

ランドはその森の中の木に飛び移る。もちろん相手を警戒させない為に自身の気配を消す。気配を消すと簡単に言っているが、常人に消すという行為は難しいものであった。だが、隠密おんみつ侵入しんにゅうなどの任務が多い彼にとって気配を消すのは容易たやすいものであったのだが、この森に入った時から相手が自分の存在に気づいていた。


「誰だ!」


その声の主は、低く少し唸り声の様な声質をしていた。倒れてる訳では無いのだが、この唸り声の正体というものがなんなのかすぐに判明した。

ランドはすぐに木からその者の前に降り立った。この森には街灯が無かったが、月明かりで少し明るく感じる。まぁ、ランドの視界では明るさというものは関係ないのだが。


「人……?じゃ無さそうだな?」


声の主は人の言葉を話して居るが、人間と言うよりも狼に似た形をしている。しかし狼と言っても四つん這いで立っている訳でも無く二本足で立っていた。


「なんだ人間が!我らにわざわざ食い殺されに来たのか!」


人狼じんろうという人外じんがいの存在である。人の言葉を話し、人の様に過ごすが、姿は狼の亜人。首には首輪をめており、その首輪から放たれている小さな光が、この森に建っている塔とリンクしていた。

その男以外にも何人か人狼は居たが、皆警戒して近寄ってくる気配は無い。


「あぁ悪い。ちょっと気になったから近づいただけなんだ」


狼が近づいてきた。近づいてくるとその身体の大きさというのが分かる。身長はランドよりも高くこちらが見上げる様な形になる。筋肉質で手には鋭い爪、足も鋭い爪が出ており、コンプライアンス的にズボン1枚羽織っていた。


「気になる?我々は人間共の見世物じゃないぞ…と言ってもこんな所にいるんだ無理もないか」


喋る度に、大きく裂けた口の中の牙の間から、息と共に唸り声が聞こえてくる。この狼が人狼達のおさなのだろう。ランドの事を警戒しつつも背中を向けた。


「人間。早くここから去れ。早く出ていかないとお前を食い殺すぞ」


片手を振りどこかへ行けという仕草をする。しかしランドは2 3歩後ろへ下がり振り返った。


「良いよ。俺を食い殺しても」

「あ?」


予想外の言葉に狼が振り返った。


「俺を食い殺したいんだろ?やってみろよ」


ニヤリと笑う。月明かりがランドを照らす。人狼達がザワザワと騒ぎジリジリと近づいてきた。


「人間よ。本当にわざわざ食い殺されに来たのか」

「いや…食い殺されに来た訳じゃないんだけど、お前たちにちょっと興味が湧いたからさ。ただ、そこから俺に近づけたら食い殺そうが何をしようが構わないぞ」


フンっと狼が鼻息を吹いた。何を言うかと思ったら、近づけたら食い殺していい?そんな簡単な事すぐにでも終わらせてやるよ。と1歩踏み出そうとするが足が動かない。足だけでは無い身体も硬直しているのが分かった。


「なんだこれは…?」


無防備に立っているだけの人間。だが、隙だらけなのに近づこうとすると身体が拒否反応を起こす。周りを見るとそれは自分だけでは無かった。他の人狼達も身体が動かず近づく事も出来てない。


「早く来いよ」


ランドはニヤリと笑う。人狼達はその一言に冷や汗がドバッと出る感覚に襲われた。今まであまり感じたことの無い感情…恐怖というものだ。あそこに立っている人間が恐くて仕方がない。手の汗が止まらない。


「くっ…ナメるなよ人間が!」


1歩、また1歩と無理矢理に身体を動かし近づく。1歩近づく度に死神が笑いながら近づいてくる感覚に襲われながらも、手の届く位置にまで人狼の長が近づいてきた。


「おっ!さすが、近づいてくるなんて思ってなかったよ。ほら、後は好きに食ってくれ」


両手を広げ降伏のポーズをとる。人狼の長は両手を上げ掴みかかろうとしたが、すぐに手を下ろした。


「いや…きょうが冷めた。人間、お前の名前はなんて言う?」

「ん?俺?ランドだよ。お前の名前は?」

「俺…俺の名前は"ロウ"だ。この街では"犬っころ"としか呼ばれてないがな」


さっきまでの勢いはもう既に無くなっていた。まるで仲間達と話すかの様に、落ち着き、紳士のような態度になる。


「こっちに居るのが"ハル"。俺の嫁さんだ」


紹介されハルが頭を下げた。ハルはかなり人間に近い姿をしていた。青く綺麗な髪を肩まで伸ばした女性。顔は狼だが、身体つきが人間っぽい。


「お前ら、こんな所に住んでるのか?近くに森とかあったからそっちの方が良くないか?」


こんな街の一角にある様な小さな森で、この大所帯が住むには小さい気がした。


「いや…行きたくても行けないんだよ」


ロウが答えた。それに続いてハルが答える。


「この首輪の所為で私達はここに留まらないといけないんです。私達、獣人は人間達の奴隷どれいとしてこの場所に住んでいるんですよ」


その首輪は、獣人達が暴れたりする度に締まり窒息させて殺す道具だという。この首輪の所為で仲間が何人も殺され、人間達の奴隷として何年もこの場所で留められていた。


「まぁ、素直に人間の世話をしてやれば、わずかな食糧を恵んでくれるからな。森で過酷な生活をするよりかは楽だな」


ランドはチラッと建っている塔を見る。


「あの塔が無くなれば、お前達は自由になれるって事か?」


その言葉に人狼達が驚いた。


「あぁ。まさかとは思うが、あの塔を破壊してくれると捉えても良いのか?」


ランドはまたニヤリと笑い塔を見た。頑丈な造りをしているが、何度か魔撃まげきを撃てば壊れそうだ。腕をグルグルと回し塔に向かって歩き始めた。


「待ちな!!」


塔の前に誰かが立ちはだかる。それは見たことある人物だった。


「皐月…?」


いつもは笑って毎朝、同じ釜の飯を食べて一緒に学校に行くランドの姉の皐月だが、今は険しい顔をしてランドの前に立ちはだかる。


「ランドよ。辞めるのじゃ…」


陰から如月も姿を現した。2人とも険しい顔でコチラを見ている。


「なんで?」


ランドは聞き返した。今までランドのしてきた事を止めるような事はしなかった兄と姉だが、今回は違う様だ。


「なんでじゃねぇよお前。ついさっき会ったばっかりの"犬っころ"に対して熱くなってんじゃねぇよ。ここの奴隷達を管理してんのは、ドルク帝国だぜ?この塔を破壊したら、それだけでお前は国家反逆罪に問われる可能性があるんだからよ。止めるに決まってんだろ?」

「まぁ、今回は皐月に賛成じゃな。ランドよ。馬鹿な事はせず宿に帰って旅行を楽しむのじゃ」


ランドはため息をついた。兄と姉にそう言われたら仕方がない。塔を破壊するのはやめよう……なんてそんな事を言う訳がない。ハルは言っていた。この首輪のせいで何人も仲間が殺されたと…。それなのに、塔を破壊したら国家反逆罪?上等じゃねえか!犯罪者だろうがなんだろうが、俺は目の前で助けを求めてる人を放っておく事なんて出来ない。馬鹿だろうが何だろうが構わないさ。


「俺さ…この呪いの力をどうして手にしたか分かるか?」

「強くなるためじゃろ?」

「ああそうだよ。俺はどうしても強くならなきゃいけなかったんだよ。家族を兄妹をみんなを守る為にも」

「なんだよ。アタシらに守られるの嫌だったのか?」


ランドは首を横に振った。呪いを受ける前は何度も何度も兄や姉に守られていた。しかし、守られる度に自分もいつかは守る側の人間になりたいと強く思った事もあった。


「俺はみんなを守りたいんだ。それが誰であろうと、ついさっき会ったばかりの人狼であろうとな!」


ランドは戦闘態勢に入る。相手が兄であろうが姉であろうが関係ない。反逆者になろうが関係ない。今、目の前の2人は、敵にしか見えない。守りたいものを邪魔する相手に、ランドは殺気を放った。



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