【帰還】

クレーターの中央付近で、京太郎が上半身を起こして、夕日を見ています。


「何も見えない。辛いだけの出会いなら、もう無ければいいのに」


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黒塗りの丈夫そうなベンツが1台、クレーターの近くに急停車しました。


透華が1人、出てきました。


クレーターのすぐ側、少しだけ高くなったところに、右足を乗せます。


膝を心持ち、直角に近い程度に曲げ、じっと京太郎を見ています。


「あの11号、ぽの256号、・・アスカ。死亡確認。オペレーション・コンプリート!」


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小さな墓地です。誰も入っていない、那岐野雲斎の墓。


黒塗りの丈夫そうなベンツが1台、墓地の近くに急停車しました。


「線香が、上げてあるわ。花も。山百合が2輪。もう来てたのね」


そのまま、龍門渕透華は、何もせずに、帰っていきました。


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「あの辺、だったな」


京太郎です。


糸杉の、小さな苗木を、両手に持っています。


龍門渕ダムの激しい流水で。あたりは冷たい、霧のようになっています。


ところどころに、少し深い、水溜まりもあります。


京太郎は、器用に、少しだけ乾いた足場を選びながら、そこに到着しました。


「サーニャ。次の生まれ変わりでは、きっといいことが、あるよ」


そして、振り返って、帰ろうとしました。


「京太郎!お前、京太郎だろ!」


エイラでした。たった1人の、エイラでした。


「エイラ?」


「サーニャが糸杉が好きだって、知ってたのか?だから持ってきて、くれたのか?」


「うん」


「俺は、来年からのサーニャの命日。必ず、ここに来る」


「そうか。私もそうする」


そう言うと、エイラはさっさと山を降りていきました。


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京太郎は、たった1人で、諏訪や松本の街を。歩いています。


マクドで、ビッグマックを食べても、回転寿司屋で、たった1人で食べても、美味しいです。


もう10月になりました。


風が、寒いです。


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京太郎は、自宅でゆっくり、お風呂に入っています。


浴槽は割りと広くて、両脚をスッキリと、全部伸ばすことができます。


「風呂は、いいなあ。心が、暖まる」


京太郎の目は、暗い虚空を見ていました。


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清澄高校に、行く準備をしています。


いつも通りの、朝です。


でも、京太郎はまた、たった1人です。


「はぁ」


(京太郎)


「!」


何かが、聞こえた気が、しました。


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京太郎は、そのまま登校しています。


でも、その背後には、透明な誰かが、いました。


(京太郎。私とあなたは、運命で結ばれているから、大丈夫。きっとまた、会える)


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以上です。この物語は、自分で言うのもアレですが、大傑作です。ぜひ、ほかの人たちにも、この物語のことを、教えて下さい。


では。

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