【アスカ】

物凄い暴風が、今では何もなかったかのように、周りは静かです。


「京太郎。私、あなたに会えて、本当に良かった」


「あなたと会えるまでの、無数の生まれ変わりの間、色んなことがあった。男に生まれたことも、女に生まれたこともあった」


「誰かと結婚して、子供ができたこともあった。悲しいことも、寂しいことも、嬉しいことも、たくさんあった」


「それなりに、幸せな一生も、いくつもあった。でも、ダメだった。ダメ。あなたじゃなかったから。京太郎」


「だから、私の全てを、魂の全てを、あなたにあげます」


アスカの身体が、ボォっと金色に光っています。


「なに?アスカは俺と、地上に帰るんだろ?」


アスカの身体が、両脚の方から消えつつあります。

光の粒子になって・・。


「そう思ってたけど、ダメね。そうなるかも、とは思ってたけど・・」


アスカの顔と頭と、胸と背中以外の全てが、光の粒子になって、消えてしまいました。


「嫌だ!アスカ」


「ごめんね、京太郎」


「嫌だ嫌だ嫌だ!アスカーーー!」



アスカが、完全に消滅しました。



「ハッウアーーーー!」


############################


一番低い雲の、切れ目を通過しました。


京太郎は、また、たった1人です。


そして無音で、無言で、たった1人で悲しく、京太郎が落ちていきます。


ズッドドーン!


龍門渕の本邸から5kmほど離れたところに、京太郎が落下しました。


たった1人だけの、帰還です。



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