【アスカ!野菊の墓】

「サングラス5人、今すぐダムの向こう側に回りなさい」


「ランクルの運転なんてまっぴら」


走りながらキーを投います。


男どもを華麗にインターセプト。キーをゲットしたアスカが、運転席に乗り込みます。


透華が助手席。後部座席はオッサンと京太郎。何か機材を持ったサングラス2人で埼京線状態。


「一両目で痴漢はイヤん」

京太郎妄想モード。


轟音を上げて漆黒の闇の中、ランクルが走ります。

アスカ、凄いテクニックです。


停車すると10メートルでダム。

駆け上がると、向こうに回ったサングラスたちとサーニャを挟みます。


############################


雪が降っています。


サーニャまで10メートル。ダムの両端10メートル、左側は200メートル以上の漆黒の奈落!


雪が3センチほど積もっていますが、動きに支障はありません。


再び対峙。

月が綺麗です。


何かが、凄い速さで月光に光りました。


大羆の眉間に、深々と針が突き刺さっています。


「哀れと思ったか、アスカ」


針を中心に、急速に獣毛が縮み消えて行きます。

身体も、ずいずい縮んで。

154センチの、全裸のサーニャが、そこにいました。伸びきったパンツは、地面に落ちています。


「気温低下が、止まりました!」

機材は、温度計だったんですね。


雪が、降っています。月が、綺麗です。


サーニャの右手には、あれは伝説の剣、ロンギヌスの槍。


「剣じゃないのに、嘘ついた。パンツも盗んだ。お前を真っ先に殺す。次にアスカ、次に透華をなぶり殺す。男たちの泣き叫ぶ様が見たい」


言葉が話せるのか?

だが内容は獣、いや悪魔です。


「身が軽くなった分疾いぞ。空中戦も避けろ。距離をとって蹴りだ」


いきなり突進してきました。残像が見えます。


「剣は、いや槍は俺が教えた!俺の方が疾い!」


死角の左側から蹴り!


左足の裏側をこそばゆくかすめる一閃、ロンギヌスの槍!

靴の踵を焦がして、京太郎右に1転2転。おしりを上げて四つん這い。


京太郎戦慄。完璧に槍を使いこなしています。マスターオブソード。


「宝蔵院流槍術免許皆伝のわたくし以上ね。リーチが3倍伸びてる。わたくしたちも、うかうかしてると、持ってかれちゃうわよ」


透華、解説役っすか。


ならば、昨日読んだ蹴りワザ。


ダッシュ!


スピードを乗せて左立ち蹴り!


かわされます。


僅差の右蹴り!でアゴ!


かわされます。


なんの!左かかとで死角の頭上から!

わずかにヒット。


がら空きになった胴体。背中の毛が総立った刹那、ものすごい蹴りが入りました。


2転3転、ふっ飛ばされる京太郎。


「昇竜脚と降龍脚の合わせ技か。弱点を狙うのは良いが、相手が強すぎる」


サーニャ、右頭からだらだら血を流して、ニヤリとしています。


「終わったわね」


焦げた踵の降龍脚で、右側の前髪がごっそり抜けています。

頭から流れる血が、眼球のない漆黒の右目に流れ込んでいます。

獲物ゲットを確信したのか、ニヤリと笑います。


萎えそうな足を、両手で叩いて再び対峙。


############################


雪が降っています。


ロンギヌスの槍を、振り上げました。

冴え冴えと、月光に光っています。


およそ3.5メートル。槍の圏外ですが、圏内です。

振り下ろす刹那、前から左から、あるいは右から斜めから、透明な剣が伸びて来ます。


ロンギヌスの槍とは、そういう武器なのです。


京太郎、学生服を脱いで左手に持ちました。


「服の揺れで風を読んで、槍が来る方向を察知する気か。万一避けれても、奴にはもうワザがない」


京太郎、右に回り込みます。


お尻にチクリとするものが。いやそれどこじゃない。


来た!


一閃、学生服が巻き上がり、前後左右から剣が来ます。


上!もう飛び上がるしかありません。


目の前にサーニャの顔。

勝利を確信して唇がつり上がっています。


短剣仕様にしたロンギヌスの槍が、京太郎の側頭部を正確に狙って動いています。

刹那、さっきちくりとしたものを思い出しました。


残り1本の針。


ズボンの尻ポケットから取り出し、最短コースでサーニャの左目を狙いました。


「ドサッ」


格好悪く尻から着地した京太郎。生きています!

左腕には、ゾッとする角度で、短剣が突き刺さっています。


サーニャは?


立ち上がったサーニャの顔から、針が2本生えています。

眉間と、左目。もう何も見えていません。


血だらけの顔の鬼。


「もう生かしてても、獣としての幸せもない。あの技を使え!」


短剣をポケットにしまうと。京太郎が気を溜めます。


気が雪を舞い上げています。サーニャの周りをズワーッとまわって、花見の桜のようです。


月が出ています。


「かーーーめーーーーはーーーめーーーーっ波ーーーーーー!」


ヤバイ!左腕の痛みで、わずかに左にズレた。


「えっ?」


サーニャの身体が、その分動きました。

宙に浮き上がるサーニャ。


その時、サーニャが一瞬、京太郎に微笑みかけたように見えました。


スローモーションのように、サーニャが落ちて行きます。


サーニャが小さくなって、漆黒の闇に消えました。


「放っときなさい」


さっそく確認に動こうとするサングラスを、透華が制しました。


「この高さじゃ粉微塵だ。土に還れば、やがて野菊でも咲くだろうさ」


そういや、ロシアの大地の糸杉が好きだったな・・


京太郎思い出しいます。疲れました。

サーニャ死亡。アスカ!野菊の墓。

放送予定!おたのしみにーーー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る