第11話 暗根ヤミ、新武器追加です。
店員を振り切った後、ヤミは防具を購入した。先程の防火防水効果付き【サランディーネ】の値段は約29万円。目安としていた30万円程度で済んだ。
残りの20万円で、ヤミは武器と配信用の小物を買うつもりだ。
「配信機材は、後回しかな?」
前回の迷宮帰還時に、どこかにひっかけたのかコードが切れていたのだ。
配信は問題なくできていた筈なので良かったが、次回の配信までには買っておく必要がある。
だが、次の探索も必ず配信する必要はない。機材代のお金を稼ぐためにも、まずは命に関わる物にお金をかけるべきだ。
◇◆◇◆◇
銃器販売店 HONDO(ホンド)。
元は車を製造しており、その高い技術力から精度の良い銃を作ると人気の武器屋。
機械鎧や迷宮探索車両なども手掛けている。
「リボルバーは……そのままで良いかな」
ホンドを訪れたヤミは、以前使っていた【壱式 リボルバー】を手に取る。
安価で整備がしやすく、かつ精度も良いと大人気の壱式リボルバーは、ヤミとしても不満のない一品だった。
ただ、リボルバーのみだと課題があることも理解していた。
それは手数の多さ。
リボルバーの弾数は多くても8程度。1発で仕留められても、同時に相手取れるのは8体が限度。
迷宮探索では不安が残る数だった。
ヤミは店内手前に並べられたリボルバーのウィンドウを抜け、奥に立てかけられた商品を手に取る。
「──アサルトライフルにするか」
連射可能な自動小銃。中近距離を得意とするが、遠距離に関してもバースト撃ちにすれば対応できる万能銃だ。
ネックとなるのは素人だとメンテナンスが難しい事。そして弾代がかかる事だ。
ARはリボルバーよりも残弾管理が難しい。楽しくなって乱射してると、すぐさま金欠になってしまう。
しかしヤミには、魔法のポーチがある。少しは節約になる筈だ。
1番の問題点は、ヤミの奥の手が使えなくなる事だ。
リボルバーと異なり弾と魔石を砕いて入れておける場所など無いアサルトライフルでは、一撃必殺は放てない。
「でも、基本はボスモンスターじゃなくて普通のモンスター相手」
今回の装備新調では、一撃の火力よりも、継戦能力の向上に進路を向けた。
手に取ったのは、
高い精度が自慢のこの銃は、後継機が出た為に値下げされており、スペックに比べてかなり手頃な値段になっていた。
値段は30万円。予算をオーバーしてしまったが、分割払いの契約を結ぶ事で購入を決意した。
先に15万円払う事で、来月に残りの15万円を支払えば良い契約を結ぶ。
ついでにサービスで貰った30発の弾にプラスして、60発の弾薬を購入し、ヤミの装備更新は完了した。
──【更新結果】──
武器 AR【流星】 1マガジン30発。
フルオート可能。高い精度を誇る。HONDO製。
防具 【サランディーネ】
防火・防水性能を持つ。紫がかった黒の布地と、急所部に金属プレートが付いている。
abidas製。
◇◆◇◆◇
本体代金が合計で45万円(+来月15万)。弾を60発購入した事で、残金は2万円となった。
そこから長距離のケーブルを購入することも出来た。それにより、今回のヤミの目的は全て達成となった。
「【魔石砲】を撃たないなら、防火付きじゃなくても良かったな……まぁ、今後のことを考えたら悪い事じゃない、はず!」
ヤミはケーブルを購入した家電量販店をブラブラと歩く。
特に欲しいものがある訳ではないが、配信に便利な物があったら、残りのお金で買っても良いな〜、なんて考えながら見物していると、一つの製品に目が止まった。
「コメント読み上げ機能付き?」
それは文字として流れてくるコメントを、音声に変換して伝えてくれる機能の付いた、ヘッドセットのような物だった。
周囲の音は聞こえるように骨伝導タイプとなっているソレは、自分の声と視界を伝えるマイク・カメラも兼ね備えた一品だ。お値段なんと手頃な1万3千円。
「お買い物上手だ」
残金7,000円。迷宮に向かう移動費などの諸経費を考えたら、完璧なお金の消費である。
ウキウキ気分で購入したヤミは、それら新しいオモチャを携えて、家に帰った。
◇◆◇◆◇
50万円ほぼ使い切ったと親に報告したら、普通に怒られた。確かに急にポンと出てきたから、泡銭だと思ってた節がある。
「反省しています……」
「いや、探索者の装備にお金をかける事は何も悪くない。むしろ出来るだけ良い装備をして、無事に帰ってきて欲しい。だけど……」
「良い装備で無茶してしまわないか、父さんたちは不安だよ」
「「貴方、まだ探索者になって2日なんだからね?」」
昨日まで使ってた装備の3倍くらい高価な装備になってるけど、私たちお金ケチったのかしら?
流石に、初心者に適正の品より2ランクくらい良いやつにしたけどなぁ……
ヤミの両親は、自身の送った品に疑問を持ち、親としてヤバいのでは無いかと心配し始めた。
それを冷や汗をダラダラと流しながらフォローする。
いやいや、ボスモンスターの攻撃も防いでくれた。なんてフォローをしたら、
「ボスモンスターと初日で戦うのは、馬鹿のやる事よ」
なんて昨日の説教が蘇り始めた。
そうして心配から来て、かつ正論で叱られた事で、ヤミは反論することも出来ずに頭を下げるしかなかった。
「き、気づいたらボスモンスターが飛び出してきて……」
最初に決めた撤退の指標も破っていないのに。そんな言い訳を並べたところで、特に状況が良くなることはなかった。
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