第271話 破戒15(葵サイド)
顔全体を覆う髪を一息に後ろへと払う。金色に埋まっていた視界が急速に開ける。数刻前まで傲然とした態度を浮かべていたフォスコの顔がシリアスなものになった。
「それが貴様の…」
「そ。これがアタシの本気だ。いつ以来かは覚えてないけどな」
葵は言葉を被せ、眼前に突き刺さっている長剣を手に取る。見た目に違わずズシリとした感覚は好みの得物だ。左手に乗せ、右手で刀身を握る。まだ鈍で使い物にならない。
「でも、お前より強いことだけは確かだ」
きっぱり言い切ると葵は刀身を一気に真下へ下ろす。こびりついていた穢れはあっという間に消える。日を浴びると葵の姿を綺麗に映す。赤い瞳になった怪物としての自分だ。
「言うではないか」
歯を軋ませてフォスコはわなわなと震えている。活火山の如く今にも爆発しそうな怪物を目の当たりにしても葵の態度は何処までも冷静だ。
「難癖付けるだけか?」
右手で長剣を振るうと残っていた穢れが日光を受けてキラキラと輝く。季節外れの新雪のようで意外に悪くないなとどうでもいいことを思った。
「笑わせるなよ。貴様に劣るなど誰が決めた?」
「アタシと言ったら?」
ドガンと地を砕く音が反響する。次の瞬間には、あの光輪が展開されている。グルグルと回りながらガリガリと地面を削るさまは
「逝けっ‼」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます