第118話 結解6(姫川サイド)
「では、始めよう」
部屋に全員が揃うや早速会議が始まる。
デスクの正面には
「で?わざわざ仕事を引き上げさせてまでこんなところに押し込んだからには、詰まらない話じゃないんだよな?」
さっさと話しを始めるようにパルマが口を開く。
「退屈させないことだけは約束しよう」
答えると、
「言うまでも無いと思うが、連中の襲撃を受けた。被害は甚大だ。死傷者の数はまだ確認が出来ていない」
「眩暈がしそうだぜ」
最初の議題が出るやパルマがわざとらしいオーバーリアクションを取る。いつものことであるため突っ込む者は誰もいない。
「
「中央地下最下層にて監視下に置いている」
「吸血鬼を守らなきゃいけないなんてすんごい矛盾してるよね~」
面白い話を聞いたと言わんばかりに銀麗は茶々を入れ、貴船に小突かれる。
「でも、ゲームで大事なのはキングを取られないことだから仕方ない話だよね」
「キング?王様のこと?」
緋咲音が口を開いたところで、疑問符のついた銀麗の言葉が飛んでくる。
「チェスの話ですよ。尤も、彼女の場合はクイーンでしょうけどね」
黙していた
確かに、意味合いとしても、果たすべき役割としても適切だろう。
「しかし、我々の置かれている状況は芳しくない」
話が脱線しそうになっていると判断したらしい
「エウリッピ・デスモニアに唆された委員会が何を仕掛けてくるか分からない。加えて弦巻葵の部下を手懐ける必要もある」
「前者はともかくとして、後者は一筋縄じゃあいかないだろうねぇ」
「その通りだ。よって、割り振りは次のように決定した」
パルマの質問に芥子川が答え、メモ用紙を取り出して全員に渡す。
文面には、以下の通りに記されている。
第一部隊
第二部隊
第三部隊
第四部隊 アレッサンドロ・デ・パルマ 現状維持
第五部隊 サミュエル・ハーツピース 現状維持
思っていたよりも配置換えは無いという印象だ。
外回りに入っていた緋咲音、銀麗が監視任務に移ったぐらい。負担がパルマに集約することになりそうだが、特に気にすることはないだろう。寧ろ喜ぶとすら思える。
「質問はあるか?」
メモに集中していた全員へ質問を促す。
「監視の範囲は何処まで?
「お前と数名は
「何か言いたいことがあるか?」
押し黙る
「別にないよ。でも、敵だって同じこと考えるんじゃない?」
「それに備えて第三部隊を外側に配置、すぐに第四部隊が増援に迎えるように手配する」
壁を外側に設け、最終的に圧殺する手法。尤も、学生や教員の安否については一切安全配慮はしていない。巻き込まれる側はたまったものではない。
「それなら、ボクは外側で備えておいた方が良いと思うけど?
「奴が何者なのかを忘れたわけではあるまいな?」
緋咲音がまだ話をしているところに、芥子川が言葉を被せる。
「吸血鬼だよね。あれも」
そこまで言葉にして、結論に至る。
「つまり、奴が裏切るかもしれないって話?」
「可能性の段階だ。だが、ゼロではない」
言ってのける
「分かったよ」
「珍しいねぇ。緋咲音ちゃんがあっさり下がるなんて」
話の趨勢を見守っていたパルマが口を開く。
「噛みつくだけが犬の仕事じゃないからね」
強張った肩に手を回し、言葉を返して息を吐く。
「話はもうお終い?」
遂に話の空気に耐えられなくなったらしい銀麗が今にも走り出したいと言わんばかりの態勢になっている。
「まだ委員会への対処が残ってるでしょ?」
「委員会はハーツピースの担当だ。問題はない」
問題が無いというよりも担当者が居なければ話にならないというほうが正確だろう。
「まだ何かあるか?」
質問を促す芥子川の声が飛ぶ。
「もうないよ」という
「では、以上だ。最後にメモはこちらに」
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