第53話 離別10(九竜サイド)
作戦当日は結局のところ
到着は3番目だった。先に着いていたのは葵と
第二支部と大差のない造りになっているビルの地下に警察の特殊部隊を思わせる服装で詰めている。無機質で寒々とした空間で光に照らされた特殊部隊の服装は映画の一幕を思わせる。
「おはようございます」
「ご機嫌麗しくはないようですね」
堂々と
「遠慮が無いというよりも恐れ知らずだね」
踏みぬかれても葵は怒る様子はない。寧ろさっきまで纏っていた空気が少し和らいだように感じる。
「変に緊張していても良いことはありませんから」
「他の連中にも忠告してあげるといいよ。肩に力が入りっぱなしだ」
葵の言葉につられて他のチームに目を向けると確かに強い緊張に襲われていることが分かる。葵が繰り広げた議論を目にした後では無理もない話であるようには思えるが。
「言ったところで聞く耳を持つとは思えないですよ」
「物は試し、少しは結束力が高まるかもしれないよ?」
まともなことを言っているように聞こえるが実際には本気では言っていない。そんなことをすれば、悪い空気が余計に悪くなることはオレでも分かる。
「死体の山作りに手を貸すつもりはありませんよ」
まともに請け合うことはなく
「そろそろこっちの仕事をしてもいいかしら?」
話が途切れかけたところで
「いいよ」と葵が許可を出すと琵琶坂は早速台車に積んであるアタッシュケースをオレを除く全員に取りに来るように指示する。
重さは
葵の物は長剣、
「確かに」と言うと葵はケースを閉じた。
「じゃ、私は中で待ってるから」
外に出ると昼間、橙木に出くわした。10分後には着替えた2人と合流した。
「おはようございます」
周りが距離を取って挨拶をする中で葵は特に避けることもなく正面から挨拶をし、
「全員揃ったようだな」
その言葉を皮切りに何か言い出すのかと思ったが、
「ありがたい言葉などいらんだろ?何を言ったところで説得力はない」
困惑が静寂に変わる。どれだけありがたみのない空虚な言葉でも何かしらは言うだろうと考えていただけに、これは予想外だった。
「支配しろ。お前たちこそが真の強者であると証明するために」
その短い言葉だけを残して
「ぼさっとしてると置いてかれるぞ」
昼間に呼びかけられてオレは我に返り、葵たちの後を追った。
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