第48話 離別5(九竜サイド)
昨日と同じで今日も病院だ。明確なタイムリミットが存在しているわけではないが早くに片を付けることが出来ないと葵の進退に影響を及ぼすことになることは確実だろう。
今日も
車を降りると真っ直ぐに病室まで向かう。今日はスーツではなく私服で行くという話になっているため揃って私服姿だ。意外と目にする機会がこれまでなかったため新鮮な経験である。
「こうしていると少し緊張しますね」
スーツではよく分からなかったが、
対するオレは白黒のボーダーシャツにジーンズとスニーカーというあまり特徴のない恰好をしている。
「そうですね」
同じ
しかし、そんな甘い時間はエレベーターが止まると同時に消える。病室まで距離があるとはいえ昨日のことを思い出すと悠長なことも言っていられない。
部屋に向かうと昨日とは違って扉前に2人の男が立っていた。扉前まで進むと男たちは予想通りというべきか行く手を遮ってくる。
「ここから先に通すことは出来ません」
スーツで身を固めており職員なのか組織からの回し者なのか区別がつかない。もう1人は動く気配を見せない。ただ、動かないのはこちらの出方を伺っているだけのようで手の位置からハンドガンを抜こうとしていることが分かる。
「誰の指示ですか?病院?委員会?」
葵に負けず劣らずの勢いで
「お答えできません」
男は彼女の圧に負けず反抗してくる。
「力づくで聞くと言ったらどうしますか?」
「喜んでお答えすると答えたらいかがしますか?」
男は屈する気配を見せない。ここまで頑なであることに加えて武装していることを加味すると、組織からの回し者である確率が高い。
「なら、1つだけそちらのボスに伝えていただけませんか?」
男は答えない。下らないことに取り合うつもりはないと表情は物語っている。尤もそんなことを歯牙にもかけず
「私情を優先した挙句に義務を放棄した咎は必ず支払われると」
「戯言だ。そんな世迷言に振り向くほど世間は暇ではない」
「そんなものは表面上の話ですよ。ですが、事件が起きて大多数の死者が出たら…いや、既に多くの人間が今回は被害に遭っていますね。この話が実は防げたかもしれないのに防ぐことを妨げた者たちが存在したと知られたら不都合でしょう?それにネットなら1秒でもあれば流れた情報は例え取るに足らない話であっても興味を持つ人間は少なからず現れ、好き勝手に真実を知ろうとする。貴方たちのお仲間なら捻じ伏せることが出来るでしょうが、市勢の人間1人1人を消して回れますか?」
饒舌に
「それにこのやり取りは筒抜けですよ。私の端末を通して弦巻葵が聞いています。怒らせた場合のリスクは、お分かりですよね?」
わざとらしく手をバックに手を伸ばす。
実際に繋いでいるかは確かめられない。確認しようと動けば騒動の切片になる。それは男たちにとっては望む展開にはならないだろう。最終的に男は負けを認めるように扉前から退いた。
「ありがとうございます。それと、ガールズトークを盗み聞きするデリカシーのない方は嫌いなので消えていただけませんか?勿論盗聴や盗撮などした場合には、容赦はしませんよ」
慇懃に一礼すると
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