第26話 血戦2(九竜サイド)
翌日。
オレに対する冷たい態度も全く変わらない。変化があったのは3日が経過してからで、オレにとっても大きな変化が訪れた。
いつもと変わらない調子で部屋に入ると物々しい空気が充満していた。自由行動、応援に出ているメンバーが誰もおらずデスクで待機している。全く違う人間に見えて入った部屋を間違えたかと錯覚した。
「全員揃ったね」という葵の一声と共に
「まず、第三支部のAチームとBチームが全滅した」
その言葉で空気が張り詰めた。
「犯人は?」紙を繰りながら
「生存者は残念ながら口を開いていない。口を利けないというところが正確。現在進行形で第三支部には中央からの穴埋めが派遣されている。尤も連中はとっとと戦力を引き上げたいらしい」
「何故ですか?」
言葉の意味が理解できずオレは反射的に手を挙げた。
「それだけの被害を受けているのなら早急に防衛体制を立て直すべきでしょう。引き上げるべきではない」
「中央は自分たちの身を守れればそれでいい。そう考えている奴が半分以上を占めているというだけの話」
普段とは打って変わって怜悧な目に変わった葵が答える。
「つまり、私たちに第三支部まで行けと?」
表情を押し殺した
「そういうことだ。ただ、その前に1つ仕事が入っている」
「内容はこちらです」
対して
「今日はエイプリルフールですか?」
資料に記されていた数字が余りにも規格外だったため聞かずにはいられなかった。
「残念ながら7月だよ。冗談だと思いたい気分は分かるけどね」
数値はたったの3日しか経過していないにもかかわらず吸血鬼による事件の被害が約2倍になっている。因みに吸血鬼による事件はオレのときのように単純に殺されるパターンと血を吸われる2つのパターンがあるらしい。
グラフで表したら目を疑う曲線を描いていたことが想像できた。
「理由は何でしょうか?」
「不明。アタシは奴らの内部事情まではタッチしてないからね」
「大本が分からなければ永遠と吸血鬼狩りをする羽目になりますよ?」
「アタシは一向に構わないよ」
「私たちは困りますよ。隊長みたいに永遠と戦えるわけではありませんから」
ページを捲っていくと指示が記述されているのが目に入った。
被害の大きい地区を重点的に警邏して吸血鬼と思わしきものを発見すれば殺害して構わないというありきたりなものだった。敵吸血鬼の根城が分からず指針すら分からない中ではこれが限界ということなのだろう。
「これも仕事だよ。納得は出来んだろうがね」
溜息をつきながら葵は資料をデスクに放り投げた。彼女自身も内心は納得がいかないのだと物語っている。
「割り振りは?」
これまで資料と睨めっこをしていた昼間が問いかけた。葵は立ち上がると扉の前に移動してネームプレートにマジックで番号を記入していく。
「この割り振りでやる予定」
番号は
「人員を増やした方が良いのではないでしょうか?」
葵が単独で行動することは危険と考えたオレは反対した。他班に応援を出すならば手を借りれなければフェアではない。同じ作戦に参加するならば尚の事だろう。
「妥当だけど、それは出来ない」
「何故ですか?」提案をあっさり一蹴されたオレは納得が出来ず食って掛かった。
「吸血鬼と組もうなんて酔狂な奴はいないから」
「…は?」
オレは葵が何を言っているのか理解できず間の抜けた言葉を漏らした。状況がまるで理解できず周囲を見渡したが、全員が特に驚いた様子は見せていない。
「…隊長が吸血鬼?どういうことですか?」
オレは茫然と口にしていた。
「何の説明もしていなかったんですか?」
「する暇がなくてね。今回の仕事が終わったらちゃんとするよ」
衝撃の事実を聞かされてそのまま黙って下がる気にはなれず言及しようとしたところで
「第三支部の方ですが出立はいつ頃に?」
「今回の仕事が終わり次第。一時的に抑えれば別にいいというのが上の意向だよ」
「了解しました」
納得したらしい
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