第5話
私は胸騒ぎがして車を走らせ教会に向かった。教会に着くと道路を挟んだ向かいの土地でブラックと数人の男達が話しているのが見えた。私は予感が的中した感もあり、心臓がどきどきしていた。それから私は彼らの様子を車の中から観察した。私はポッケトからカメラを取り出し彼らの顔を撮影した。彼らが土地の売買について話しているであろうことは直感的にわかった。彼らの一人が土地を写真にとっていた。その時は売却先が何処かまでは想像はつかなかった。会話の内容が聞こえる場所に移動しようかとも考えたが、これ以上近づくのは不自然であった。ときより聞こえる彼らの笑い声が耳障りであった。妻が言った夜間でも明るい人工的な光という言葉から、おそらく大きな建物を建てようとしているのではないかと思った。
10分くらいすると、ブラックと男達は別れて、別々の方向に車で走り去った。私は男達の車を追跡することにした。その車は途中でコンビニに立ち寄っただけで、3時間程走り続けた。そしてビルの駐車場にはいっていった。そこは24時間営業のスーパーの本社だった。私は彼らの近隣住民の迷惑を無視した営業方法について聞いていたから、もし彼らが教会の前に出店するなら大変なことになると思った。私は祖父から殺されるという恐怖で頭が一杯になった。また教会の前に迷惑を省みないスーパーを造ろうとしている彼らに憤りを感じた。私は朝に夢を見たことで、信仰心が涌き彼らへの怒りは私の中で何の躊躇いもなかった。私はあれこれ頭をめぐらせた。どうすれば出店を阻止することができるのか車の中で考え始めたのだった。
裁判しか方法が無いのか考えた。教会の近隣住民は借家の若者が多いから反対運動はあまり期待できなかったからである。恐らく周り地主は自分たちの土地を高く売ることしか頭に無いであろう。教会のことなど、どうでもよいと考えるだろう。
もし裁判になるならどの弁護士に頼めばよいのか心当たりはなかった。また私の地区にはどのような弁護士がいるのかわからなかった。近所に一人弁護士がいるがあまり期待できる人物ではなかった。またたとえ裁判をしたとしても勝つかどうかは全く裁判官次第であり情緒に乏しく、宗教的視点を持たない彼らに決定権を委ねるという、その理不尽さに頭を悩まされた。しかし最終的には裁判しか方法はないであろうとは思った。ブラックに売るなと言っても、相手にされないであろう事は目に見えていたからだ。
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