第二話

 死神が玉座に座る。鎌の柄を地面に叩きつける。


 「お前たち、分かってるんだろうな!! 逃げるのは許さん!!」


 残った兵士に激励を飛ばす。死の声で。


 「「はっ!」」


 エスリーンとアドルフは謁見室に来た。


 「もうその仮面は取って!!」


 エスリーンが懇願する


 「もう辞めるんだ。意味はない。それに我々はロロ帝国の領土を一ミリも欲しいとは思わん。願うのは農奴解放と民主主義だ。和平条約を結ぼう。悪いようにはしない」


 アドルフの言葉を聞くと死神が笑った。


 「まさか妾が負けたと思ってるのかね、この少年は?」


 地下から軍勢が登場した。


 面頬だけ……仮面だけ死神の文様!? 服装は黒のフード!?


 「たとえ私が死んでもこの者どもが次の皇帝よ」


 「なんでござるか、この者どもは?」


 万次郎がきっと見つめる。


「私の手となり耳となり眼となる部隊『黒曜』よ。そしてこの子らは国の直系貴族」


 (「この子」だと!? どこまで邪悪なの!! スパイ行為を子供にさせるなんて!!)


 「そうかい。てめえはそうやって恐怖でしか支配できない小物なんだな」


 死神がもう一人やってきた。


◆◇◆◇


 「ほら、もう大丈夫」


 マリアンヌが市民のけがを治してる。治癒魔法ももう限界だ。なにせ多数のけが人が居るのだ。


 「おいら、もうガンマンできねえだ」


 (?)


 「おいらもうこの圧政に耐えられねえだ」


 「農奴制度なんてもうこりごりだ」


 「連盟や北方王国のように自由と平等が欲しい」


 ロロ帝国の人々が口々に言う。


 「じゃ、言いますけど!!」


 マリアンヌが言った。


 「この御旗のもとに立ち上がる勇気あるの!?」


 その旗は黄色と青の半色旗だった。


 「いいぜ!?」


 「やろうぜ?」


 「もうこの帝国は終わりだ」


 その声にマリアンヌは問いただす。


 「じゃ、あの死神と戦えるのね!?」


 「「おお~っ!!」」


 「トマシュ! 彼らに武器を!!」


 「いいんですか、マリアンヌさん!?」


 「いいんです。民主主義というものは自分で勝ち取るものですから」


 「さあ、付いてきなさい。この悪夢を終わらせたい人だけ、私に付いて来るのです!」


 「「おお~っ!!」」


◆◇◆◇


 「弱い……弱すぎる」


 周りには黒曜隊の死体が転がっていた。


 死神がエリザベート1世に向ける。


 「辞めるんだ」


 何と止めたのはアドルフだった。


 「もうこれ以上、戦闘に意味はない。後ろを見ろ!」


 なんと宮廷に民衆が詰めかけていた。


 「お前は、終わりだ」


 「終わってない!」


 「終わったんだよ!! 民の事を思わない王や皇帝になんざその資格は無いんだよ!」


 その言葉を止めようと死神は風の刃をアドルフに向って投げる!


 「危ない!!」


 エスリーンが悲鳴を上げる。


 間一髪で死神の鎌が風の刃を跳ね返す。


 「我、アズラエル! 汝を死地へ帰す。地獄でまた共に戦おう」


 そう言って瞬時にカマエルの……エリザベート1世の懐に向かう。死神の鎌同士が火花を散らす。しかしとうとうカマエルの鎌が折れた。


 そしてアズラエルの鎌が一刀両断する。


 カマエルの面頬が割れた。


 間違いなくエリザベート1世の……ゾフィーの顔だった。


 そしてもう一回死神は鎌を振るう。まるで踊っているかのようだ。


 ゾフィーの顔が飛んだ。


 「終わった」


 死神が宣告する。民衆が沸き返る。


 死神が死馬を呼ぶと死馬に乗って去ろうとする。


 「あの!」


 死神が振り返った。


 「ありがとうございました」


 エスリーンは深く頭を下げた。


 「勘違いするなよ!!」


 「今度前らが民衆を害するようになったらお前らにこの鎌が向かう。それを忘れるな!」


 そういうと死馬を乗せた死神は去っていった。


 「エスリーン、この国の復興も考えないと」


 アドルフの言葉にはっとする。


 そう、連盟の盟主としての仕事は終わってないのだ。

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