第三話

「なにこれ……」


「郵便貨車よ」


「これが……?」


その郵便貨車は外から見て郵便貨車なのであって中身は魔導砲が隠れていた。


「しかも『スコープ』があるから私でもピンポイント爆撃が可能」


皆、エスリーンにドン引きしていた。


「ご存じの通り郵便は郵便物を運ぶだけじゃない。荷物もよ。なので、5両目以降は……」


「俺たちの軍勢がそこに入るのか」


「そう」


貨物駅で全員が驚く。トイレまでついていた。長時間の移動まで考慮されていた。うれしいことに循環式水洗トイレだ。


「ピンポイントでザクル家の宮殿を破壊する。それで北方王国に領土を献上します」


驚嘆の声が響く。


「し・か・も」


エスリーンは1両目の扉を開ける。箱を開けると……。


「ドライヤー……」


「そう、輸出品に見せかけるの。『貴方の髪を乾かしてきれいに』って。魔導砲の炎でね……」


エスリーンを怖がるものが居る。


「2両目には……」


箱を開けると……。


「温熱調理器……」


今まで竈での調理だったものが一気にクリーンで手軽なものになったものだ。


「貴方の国の調理も楽にしませんかって言うの。実際に調理するのはザクルの王都だけど」


エスリーンは自分が持ってる定規を思わず折ってしまった。怒りと歓喜に同時に震えていた。


「3両目には……」


箱を開けるとトースターだった。


「5両目以降は開けられないようにして。で、時期を見て軍隊が車両から飛び出して国境を攻撃するのよ」


「動けなくなった車両に備えてるのか」


「抜かりはないわ」


エスリーンは笛を鳴らした。


するとやってきたのは大きな車両だった。


「発電所搭載の機関車よ」


(私の知識じゃ内燃機関であるディーゼルエンジンなんて作れるわけが無い。でも発電所付の車両ならば?これは一種のハイブリッド車両なのだ。非電化区間でも、電線を破壊されても動けるようになってる。どうだ!?我ながらすごいだろ?)


「これならば……」


「そう、連結器につなげば最悪車両を逃すことも推進することもできる」


「石炭で発電するのか」


そう、だから煙が出てる。感心するようにアドルフが見る。


「普段は動かさないわ。万が一の時に稼働させる。だから最後尾に連結するの」


「完璧だな」


アイザックが感心する。


「連合軍は駐兵所に待機してるのはそのためなんだな」


トマシュが言う。


「その通りよ。明日、この国の反転攻勢を始めるわ!」

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