第二話

 ロロ帝国の玉座に座る女帝は報告を受けていた。


  「貴族は大喜びのようね」


 「はい、連盟のように農奴解放に反対されておりましたから」


 ラスプーチンが嬉しそうに言う。


 ロロ帝国は農奴を存続させる代わりに農奴の待遇を良くしたのだ。それだけではない。国営農場を導入し同一待遇とした。国営とはエリザベート1世直営の農場という意味である。


 「東方への植民は進んでいるのね」


 「ええ、もう世界の終りまで到達しました」


 世界の終わり。それは凍土に囲まれた世界の端である。ここを超えると日付変更線を超える。


 「生贄は連れて来たの?」


 「来ました」


 ラスプーチンが従者に合図を送ると連れてこられたのはまだ少年だった。


 「この子が後宮入りとなる子ね」


 「ええ、十分にお楽しみください」


 後宮制度。王や皇帝が多数の女を囲うことは珍しくない。しかしエリザベート1世が要求したのは逆である。文字通り「逆ハー」なのだ。


 「名はなんという」


 「はい、グックと言います」


 「そなたの家は我が帝国にやや反抗的だった。ここに来た意味は分かるな?」


 「はい」


 「では行こうかしら?」


 皇帝は後ろの玉座の扉を開ける。侍女に己の服を預ける。


 もちろん「生贄」もそうだ。


 「この部屋の向こうにある風呂を使って体をきれいにして頂戴。貴方が入ったら次は私が入るわ」


 生贄が洗い終わると侍女がタオルで体を吹き、生贄に油を塗る。侍女もどこかうれしそうだ。陰部も塗る。もちろんチェリーの部分もだ。生贄のチェリーが滓だらけだった場合は侍女が綺麗にする義務を負う。侍女に男根を数回もまれる生贄。侍女に許されたご褒美であると同時に生贄が不能でないかどうかを確かめる仕事の一環でもある。


 「うっ! やだ!」


 侍女はその声を聴くと剥いたチェリーを元に戻す。


 「あら、あなたに拒否権はないのよ? 逆らったらどうなるか分かってるわよね。族滅よ?」


 族滅。そう一族ごと皆殺しにされるのだ。生贄が納得する隙を見て侍女は生贄の男根にゴムを装着する。


 「次は私が入るわ」


 皇帝が風呂に入ってる間に生贄が逃げないか侍女が見守る。やがてタオルで体を吹き終えると風呂から裸のまま出てくる。


 「グック、ここでは『エリザベート1世』などという堅苦しい名前で呼ばないで。私の事を『ゾフィー』と呼んで頂戴。私のお目にかなうのなら貴方の一族に対し特別待遇にいたします」


 「皇帝陛下、今日はこの油がよろしいかと」


 それは茶色の油だった。


 「催淫作用もさることながら陛下の陰部をより刺激します」


 「もちろんゴムは持って来たわよね」


 「はい、生贄用と陛下のもの両方。予備もございます」


 侍女は箪笥たんすの引き出しからゴムを持ってきた。


 エリザベート1世、いやゾフィーは自分の体の陰部にゴムを付けた。


 「侍女らよ。外で見張ってて」


 「「はっ」」


 二人の侍女は部屋を後にした。


 「では始めましょう。ベッドで横になって」


 それは豪華絢爛なベッドであった。カーテンも降りていた。


 彼女は後にこういわれる。


 王冠を頂いた娼婦……と。

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