第一話

 遊園地に人がたくさん来てる。


 なにせあの魔導士エスリーンのベルトコンベアーが実物で見れるのだ。それだけではない。ミキサーと冷蔵庫を作ったおかげでエスリーンが「ついでに発明」したプリンまで食えるのだ。そう、プリンの発祥の地になった遊園地になってしまったのだ。


(卵二個と砂糖をよく混ぜ、牛乳を二五〇ミリリットル入れてミキサーでかき混ぜて沸騰させたら火を止めて型に入れてオーブンで二五分ほど焼き……冷蔵庫に入れると完成だ!! 乙女ゲームの必須アイテムでお茶会のお供がまたしても完成した)


 ぜひ、うちにもという業者も多い。特にベルトコンベアーは軍事的にも意味のある発明品である。そしてもう一つの見せ場はエスカレーター。


 遊園地の遊具よりも人気が高い。


 でも、これだと貴族というよりもはや「職人」だ。


 そんな時にある人物が来た。


 「エスリーン。そしてマリアンヌ。困ってると聞いてきたよ」


 エリックとザックだった。


 「話聞いたぜ。絶縁状食らったんだってな」


 「えっ、でももう私たち学生じゃないのよ? どうすれば……」


 エスリーンが戸惑う。


 「君は引きこもりたくて羊皮紙の原本を集めた図書館を作りたい。でもその原資が足りなくてこんなことしてるんだろ?でも消耗するだけだぜ。一生職人人生で終わるのか?」


 「嫌に決まってるでしょ……」


 「ではモルドレット家に来ないか」


 (それは、結婚しろって事!?)


 「いきなり言うねえ、エリック」


 「俺も言うぜ。このスグレル=ザック。マリアンヌ様とお付き合いしたいのだが」


 しかし二人には言えない秘密があった。しかしこの二人になら打ち明けてもいいだろう。


 二人は正直に打ち明けることとした。


 「ここじゃなんですからお茶会が出来る場所で……。あ、プリンもいかが?」


◆◇◆◇


 遊園地の端に喫茶ができるスペースがあった。とりあえずエスリーンは作業室からアップルティーとポットとプリンを持ってきた。


 思い出話もそこそこに本題に入る。


 「実は私たち、背徳の関係にあるんです」


 そのカミングアウトに両者は驚かない。


 「背徳なんかじゃない。それは自然なことだ」


 エリックはきっぱりと言った。


 「実はな、俺たちもなんだよ」


 「えっ!?」


 エスリーンは驚く。


 「よく考えてみろ。あの学校、落ちこぼれを放り込むとこだぞ。みんな心に傷持ってるんだ」


 ザックは堂々と言った。


 「マリアンヌから言われたよね。契約結婚の事」


 「はい」


 「我々と契約結婚すれば怪しまれない」


 「まあ両家が『はい』というか分からんがな」


 「それに、僕も昼寝に最適な場所が増えるのは賛成だし……魔導書を手元に置くのは魔導士としてとってもいいことだしね」


 「君たち、こんなとこに居たのか!」


 支配人のラカンスキーだ!


 「ごめんなさい勤務中にさぼって」


 「そんなこと言ってる場合じゃない!!」


 「北方王国の王が、戦死した!!」


 新聞の号外を持ってきたのだ。神聖王国で戦死とある。


 「馬鹿な!!」

 

 「黒幕はゾフィーことエリザベート1世だ。そして連盟領から流れてきた難民を保護し、農奴制復活を掲げたエリザベート1世に対し、北方王国は宣戦布告する構えだ」


 「そんな……」


 「特に裏切り者のザクル領には攻め込んでくる!」

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