第十話

 ――盟主様はすごいのお。本当に成文憲法を作りおったわい


 「本当にこれでよかったのですか?」


  聖女が問いた先にあったのは竜の像。


 ――よいのではないか? みてみよ、国民も喜んでるじゃろ


 「そうですか」


 竜の像に光が下りる。玉座に座ってるのはなんと緑の髪を持つ少女であった。


 「いろんな価値観があってよい。お前さんも生徒だったときはいろんな価値観を持っていたんじゃぞ」


 「はい」


 「あの子たちを守ってやりなさい」


 「もちろんです」


 「きっと時代についていけない人間が動乱を起こす」


 「そう……でしょうね」


 「場合によってはエスリーンを妾が守ろうぞ。万が一のときはな」


 「はい。そのためにももっと供物と信仰心をささげいざという時に備えます」


 「よい心がけじゃ。わしは甘いものに弱いのじゃ」


 「……」


 「ところでおまえさんは新しい愛の形も許容するのかの?」


 「それはどういう……」


 「彼らの心をちょっと覗いてみたら面白かったぞ」


 (?)


 「まあ別に新しくもないのじゃがな。古代からあった愛の形じゃ」


 「そう……ですか。いまいちよくわかりません」


 「いずれ分かるときが来る」


 「後期の授業は戦の事も教えないといかんかもの、まただ彼女らは遊園地にも興味持ってるからストレス発散の場所も与えるべきじゃの」


 「そう致します」


 「いい心がけじゃの」


 そう言うと玉座からふっと少女の姿が消える。


 (エスリーン。この子がこの世にあらわれたのは偶然なんでしょうか。必然なんでしょうか?)


 夏休みは終わりを迎え、後期の授業が始まろうとしていた。


<第二章 終>

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