第九話
「うわー……すごいねー」
エスリーンが驚く。
「そうよ。全部手作りよ。連盟名物、サンドイッチよ」
「うわー、おいし~い!」
エスリーンのほっぺたが落ちそうだ。
「はい、アップルティー」
なんと水筒からアップルティーがそそがれる。
「マリアンヌすごいね」
「すごいのはあなたの方よ。だって私、人にここまで感心抱いたの久しぶりだし」
なんか照れてる。
「でも、ここって本当にベンチしかないね」
草はぼうぼうだ。あたりまでここは演習場だ。パークというのは今でこそ公園という平和な訳語がついているが本当は駐兵場、つまり援軍を留置させる場所なのだ。だから「パーキング」だと駐車場になるのだ。普段は演習場として使い、特に魔法集団戦の模擬戦に使われる。
「そうねー。ねえ、エスリーン。ここに電気を使った遊具置けないかしら?」
「え? 遊具?」
「そうよ。あなた温室出来たのはドライヤーの原理を応用した温風機器のおかげじゃない」
(そうだよ、『マジックラブ』って街の発展度によって「遊園地」が出来るじゃん!! ゲームの通りだわ!)
「そうねー。観覧車とか出来るんじゃないかしら」
「観覧車? どんなの?」
「スケッチブックあれば説明できるんだけど要は電気の力で動くゴンドラよ」
「へえ」
「ほかには木製の馬が回って動くメリーゴーランドなどがあるわ」
マリアンヌが感心してる。と、その時……。
「あら、私たち二人だけじゃなさそうよ」
マリアンヌの肩に乗った燕が教えてくれる。お礼にパンくずをあげたら飛び立っていった。
「向こうにエリックとザックが居るって」
「ふーん。今日は放っておきましょ」
「それがいいわね」
「あら、どうしたの。足に何かついてる?」
マリアンヌの視線が気になった。
「いえ、別に……」
「それより、もっと遊園地の話しようよ!」
「ええ!」
「遊園地にも電車があるの。おとぎ電車と言って」
「へえ……」
◆◇◆◇
「出来たじゃないか!」
エリックは大喜びだ。
「すげえ、俺にも出来るんだな」
それは油絵だった。
「俺、筋肉馬鹿じゃねえんだな」
「そりゃそうでしょ、魔法剣使うんだし」
「さ、お昼にしないか。ほら、君のも」
(え、こいつ、すげえ)
「寮の食堂の一角を借りて作ったんだ。ほら、パンも」
「お前、すげえな……」
「そんなことないよ。俺エスリーンにかなわない」
「そう?」
「だって僕の今日の本当の目的は魔法で写実絵にできないかって事だったんだ。でも出来なかった」
「なんでも魔法でやっちゃうのって味気ないなー」
「そう?」
「君に手を一緒に握って指導してもらったせいでほら、新しい技術身に着けたんだし」
「そうだよ。これ魔法円を描く練習にもなるしね」
「おめえ、すげえよ」
ザックがエリックの手をぐっと握る。
「なんか、恥ずかしいな」
「今度料理も教えてくれ」
「もちろんだよ」
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