第八話
「発電所の増設は各諸侯に頼んだ」
面頬を外すとヴァースキだった。
「じゃ、今度は社会設計といくかね」
「ええ……」
「いいか、エスリーン。人間ってのは魔導や技術の下に立ってるんじゃない。人間あっての魔導だ」
「もちろんです」
「では、公的保険、職業訓練、学校建設及び職業訓練校の増設となるわけだが俺からも提案がある」
皆ヴァースキを見つめた。
「成文憲法を作り、そこに『信教の自由』を記述する」
(――!!)
「ええっ!?」
エリックが驚愕する。
「そもそも俺はな、『ウラドの壁』の向こう側から来た。壁の向こう側には様々な宗教があって神もいる。神様っていろんな神が居たっていいじゃねえか」
「聖女様が聞いたら、粛清されますよ!?」
マリアンヌが悲鳴に近い声を上げる。
「宗派同士の争いで国土を荒廃させて国を滅亡させる気か?」
ヴァースキがたしなめる。
「おもしれえ、それこそ連盟諸国ってもんよ」
「ザック!!」
マリアンヌが怒る。
「マリアンヌ。時代は変わったんだ。理解してほしい。文明が変わるって事は常識も変わるって事だ」
ヴァースキが手を広げる。
「ウラドの壁の向こう側には東洋文明の大国もある。極東には黄金の国があるという。鉄道で交易出来ねえかな」
(それは、日本と中国の事だ!!)
「俺は狂信ってのが大嫌いだ。だからと言って神様とか聖的なものまで否定しねえぜ」
エリックはうなずく。
「確かにそうです。西方教会の教えだと魔導や真理の教えを教皇命令でねじ伏せられる可能性大です」
「最高神である竜神ザルティス様も喜ぶと思うぜ」
エスリーンは何も驚かない。彼の言ってることはむしろ近代社会において当たり前のことだ。
「次に民法の制定、そして農奴解放と人権の制定だな」
「賛成です」
エスリーンは即答する。
「だろ?」
「我々こそが文明のみならず文化においても最先端であると」
「そうだ。それを全世界に宣言する」
ザックもうなずく。
「それに、あの聖女様。何か隠してると思うんでね」
五人は教室の後ろに闇が潜んでいることに気が付かなかった。その闇がふっと消えた。
「ところでエスリーン、この授業終わったら明日どっかいかない?」
マリアンヌが思わず提案する。
「そうね、公園に行くって約束よね」
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