第二話

  ザックが教壇に立つ。


 「初めまして。教師のザックだ。魔導担当にして君らの担任だ」


 だがクラスは誰一人として反応しない……。


 「出欠取るぞ、ゾフィー!」


 「気安く呼ばないでくださる?」


 「なんだと……?」


 頭にきたザックはゾフィーの頭上めがけて小さい風の刃を出した。もちろん本当はかすめるように出した。だがなんとバリアを張りはじかれるではないか!


 「強くない者には教わりたくないの」


 「望むところだ。鍛錬場に来い!!」


◆◇◆◇


 木造の模擬刀を取るザック。


 「お前は、女なのに斧なのか……」


 なんとゾフィーは見かけによらずなんと斧使いであった。模擬斧を持つ。


 「ええ、こんな風に」


 すると斧から強力な旋風を巻き起こす!!


 ザックはバリアを張るのに精いっぱいだ。


 そこになんと一刀両断!!


 なんとバリアごとザックをたたき割った!


 「勝負あり!」


 審判員の非情な声が鍛錬場に響く。


 どよめく観衆。


 ――あの何度も模擬戦で優勝したザックが!!


 「みなさい! 弱者は教える権利なんてないのよ!」


 双鷲級の生徒が沸き上がる。


 模擬斧を首に突き付けるゾフィー。木製の模擬斧でおもちゃと同等のもののはずなのに重く見える。


 「あなたは教える資格が無い」


 「辞めないか!!」


 教授陣がゾフィーを取り押さえる。しかしそれをも魔法ではじき返す。


 「いい、私たちは真剣なの。ちゃんとした教授を呼んで」


 副校長のクラウドが駆け付けた。


 「なんてことを!」


 倒れ込むザックを見て悲鳴に近い声を上げた。


◆◇◆◇


 「すまん。この通りだ」


 ここは地下の秘密学級。銀狼級。一匹狼の集う学級だ。


 なんとザックは教授職を解かれるという屈辱を味わった。


 「何なんだよ、あいつら……」


 ザックは机を思わず叩いた。


 「名簿を見るとゾフィー、ラスプーチン、ピピン、クレア、イザベラ、ギルバートの六名か」


 「いいでしょう。マリアンヌ」


 「エリー様!? マリアンヌでは同じことが起きますぞ!?」


 副校長のクラウドが制止する。


 「いいのです。水晶玉を通して授業しましょう。もちろん面頬はかぶったままでお願いね。そうね、名前も変えようかしら? 学生教授と見破られないように」


 「えっ?」


 マリアンヌは驚いた。


 「これなら直接攻撃も出来ない。それで反抗するなら放校です。彼らだって落ちこぼれだからこの学校に来た。これ以上好き勝手には出来ないはず」


 「へえ、通信教育ね」


 エリックは興味がわいた。


 「ザック、あなたはこのままここで魔導を勉強して。逆に彼らが知らないことをエスリーン直伝で教わることが出来る。もちろん鍛錬もし放題で」


 「お、おう」


 「悔しいだろう、リベンジだ」


 (いいな、通信教育。私もそれにしたーい)


 「何、エスリーン?」


 マリアンヌが視線に気が付く。


 「いや……別に」


 「相手は先生に暴力振るったんだ。冷酷な態度でいかないとな。お前のかぶってるその面頬の色のように」


 そう、エリックの言う通りマリアンヌの面頬は氷の色に近い色を彩られていたのだった。


 「氷魔」


 「え?」


 「あなた、明日から生徒に遠隔で接するときは『氷魔』と名乗りなさい」


 「恥ずかしいです……」


 「素性と名前知られたら、大変だぞ……」


 副校長がなだめる。


 「分かりました」


 うつむくマリアンヌ。


 「エスリーン、ちょっといい?」


 「えっ?」


 「ちょっと話が……」

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