第三話

 「マリアンヌ、どうしたの?」


 「これ……」


 信じられなかった。背中にはアザだらけ。


 「どうしたの……?」


 「親に虐待されたの」


 「……」


 「だから私、人間を信用できなくて……でも同じような目に合ってるあなたにどこか親近感あって」


 「そうだったの」


 「そんな時、エリックとザックが救ってくれた。そしてこの闇組織がスタートしたの」


 「わたし……出来ることない?」


 「リモートで詰まないよう、助けて」


 「いいよ。そのための銀狼級だもんね」


◆◇◆◇


 次の日、双鷲級は校長も副校長も着ての異例のスタートとなった。


 そして面頬をかぶったマリアンヌが小部屋に入って水晶玉を起動させる。地下の秘密教室の存在を知られたら終わる。だから別室での授業なのだ。


 (いいか、私は氷魔なんだ、魔になるんだ)


 そしてようやく生徒紹介が始まり、モーターの授業を再開できた。


 (どうにかなりそうだ……)


 と、その時信じられない光景を見た。


 クレアがカタコトなのだ。


 「大丈夫? クレア?」


 「大丈夫です。言葉分かります」


 「先生、彼女はウラドの壁の向こう側から来た植民地出身なの。続けて頂戴」


 (植民地――!)


 何気ないその言葉にぞっとする。要は人質なのだ。ウラドの壁の向こう側は数々の遊牧民族や寒冷地に住む少数民族。そういった民族を支配下に置いてきたということだ。


◆◇◆◇


 次の日から授業はマリアンヌが一人で担当となる。その時とんでもない質問を聴いた。


 「ねえ、質問よろしいかしら?」


 「いいぞ」


 「私たちこんな発明したの」


 それはハンコであった。


 「この文字が浮かんでるハンコ同士を付けると……」


 なんとピースのようにくっついた。


 「これをモーターで紙を回せばもう羊皮紙による本は要らなくなるんじゃないかしら」


 「そう……その通りよ」


 「へえ。それはいいこと聞いたわ」

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