第六話

 地下の秘密学級の実験は今日もにぎやかだ。


 「この電解液に電気を流します」


 エスリーンはゴーグルをつける。水酸化ナトリウム溶液なので危険だからだ。


 「ゴーグル付けた?」


 エスリーンは皆に確認する。


 「「つけたぞ」」


 「見てて」


 するとなんと鉄に別の金属が付着する!!


 「これが亜鉛メッキよ」


 エスリーンはゴーグルをつけながら棒を指して言う。


 「どういうこと?」


 ザックは全く理解できない。


 「鉄の剣が簡単に折れなくなるって事」


 エリックは補足するように説明した。


 「すげえ」


 ザックはようやく発明品の凄さを理解した。


 「これで電極を作ったから電池も作れたの。めっき処理品をマイナス極、めっきしたい金属をプラス極として電解するの」


 「ということはもう錆びる心配が減るって事ね!!」


 マリアンヌも驚いた。


 「そういうこと!」


 「ということはこの剣は強くなったって事か!!」


 ザックがうれしがる。


 「そうよ、しかも耐久性も抜群だからしょっちゅう剣を買わなくてもいいの」


 「これ……錬金術の奥義の一つだよね?」


 エリックが指摘する。


 「そう……」


 「ということは錬金術師は本来『電池』を作れたということになりますね」


 さすがマリアンヌだ。鋭い指摘。


 「そう。剣の強度よりも電池の電極を作ったという方があるかに意義のある行為になるわね」


 「え? じゃ、これきんを増やす事出来ねえの?」


 ザックががっかりする。


 「そういう意味での錬金術なら不可能ってことになるわね」


 エスリーンはきっぱり言う。


 「錬金術って、本当は無理なのか!」


 魔術師たちはがっかりする。なんかロマンを砕いてしまったようだ。

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