第五話

 サーガラ諸侯連盟の盟主、ヴァースキが物珍しさに電車に乗りながら席に座る。黄色と蒼の陣羽織を着ている。周りの乗客も盟主ということで遠ざかっている。なのに本人は気が付かない。本人は上部には網棚があることに感心していた。


 もちろん盟主というのは国王に等しい地位なので付添人たちも一緒だ。


 (これを連盟中に作れば俺たちは東の大国にも西の大国にも翻弄されなくて済みそうだ。なにより物流革命を起こしたことが大きい)


 サーガラ諸侯連盟というのは貴族共和国で諸侯同士の立場が対等、いわば連邦制に近い。ゆえに弱小国なのだ。だからいつも周りの強国に蹂躙されやすい。その歴史に終止符が打たれる時が来たのだ。もういっそのこと盟主が直接この魔導を身に着けることにしたのだ。じゃないと政策決定も出来ない。


 (場合によっては彼女が盟主になるべきかもな。ただ本当に盟主にふさわしいか見させてもらうぜ。あと、その技術もな)


 学園前のホームに降り立った。


 「ところで残り五名ちゃんと居るか?」


 「はい」


 「入学試験落ちるなよ?」


 「「はい!」」


 「いい心がけだ」


◆◇◆◇


 「これが、電車……これが魔導の力」


 北方から来た王子は驚愕した。


 「おぼっちゃま、左様で」


 これに対し従者は落ち着いている。


 「僕も魔導学院に行こうかな?」


 「アドルフ様、本国の教育機関じゃなくてあえて異国の教育機関に進学するので?」


 「そうだ。僕と一緒に入りたい子を集めるんだ。あ、おまえもだ。僕はもうあの親に近づきたくない」


 「従者の私めですか?」


 「そうだ。嫌か?」


 「いいえ、殿下。仰せのままに。お気持ち、よくわかります」


 アドルフは北方王国で神童と呼ばれた少年である。才色兼備で青の陣羽織を着る。数か国語をマスターし、文武両道である。別名「若き青獅子」と呼ばれた子である。紋章が獅子の紋章だからそう付いたのだ。


 (入学試験、がんばるぞ)


 「四人もちゃんと降りたな」


 「はい」


 「入学試験落ちるなよ?」


 「大丈夫ですよ~王子様」


 「心強い」


 王子を先頭に六人はさっそうと歩く。


◆◇◆◇


 「ゾフィー様いかがでしょう?」


 「最高ですわ。ぜひと我が国に欲しい技術」


 電車に揺られる少女も居た。


 「私もそう思います」


 「ラスプーチン、私も魔導学院に入ろうかなあ?」


 「いい案です。技術を根こそぎ奪いましょう。国ごとね」


 駅に降りるとなにやら貴族らしきものが近づいてくる。ザクル=ピピンであった。


 「もしかしてロロ大公国のゾフィー令嬢様ですか?」


 「そうですけど?」


 「私の名はザクル=ピピン。ぜひロロ大公国の一員でもある貴方様のクラスに私を入れてはいただけないでしょうか?」


 「なぜそんなこと言うの?」


 「それは……」


 理由を聞くと二人は三日月の笑みを浮かべた。


 「面白いわ。校長である聖女様に交渉しましょう」


 「ありがとうございます!」


 「では一人外れなければいけませんな」


 「それには妙案があるわ」


 「それと残りの四人は分かってるわよね。入学試験に落ちたらどうなるかを」


 「……」

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