第三話
秘密学級なので秘密を知られてはいけない。だが一つだけ変わったことがある。エスリーンの行動に少しだけではあるが自信がついてきたのだ。もっとも相変わらず弓矢も魔法もてんでダメだったことに変わらないのだが。
深夜にこっそり寮で転移魔法を唱えて地下聖墓に行く。もちろん黒衣も面頬も付けた状態でだ。身バレ・顔バレ厳禁である。
「さあ、私達にも教えるのよ」
面頬を取ると、聖女エリー様とクラウド。なんと黒板に机に椅子まで用意されていた。
そして教授する側が、エスリーン。完全に逆である。
「君は、今日から秘密教授だ。もちろん給与も出る」
そして、この日エスリーンが作ったのは黒鉛で作った「乾電池」である。
「ふむ、電気って多少は貯められるんだな?」
副校長はうなった。
「魔術が普通に使えるものにとって盲点となる発明品ですわ」
マリアンヌがまたしても驚く。
そして次の日エスリーンは架線、モーター、ブレーキ、レールという電車の基礎を教えた。
表向きは「落ちこぼれ」でありながら夜間に特別講義を教える。地下墳墓は死者がそのまま眠ってる場所でもある。幽霊が大嫌いなエスリーンにとって最初は恐るべき場所であったが幽霊よりも怖い破滅フラグを阻止するべくなんとしても現代文明を教えた。
レールの建設はそこは魔導学院。城下町の鍛冶屋の指導の下あっと言う間に出来た。
そして一週間後に学園内に実験線が出来たのだ。
架線柱も架線もある。架線は水力発電から電力を得てる。水車を改造したものだ。そして騎士団が教えられたとおりにマスコンを押す。すると電車が動くではないか!! マスコンを引くと止まる。
学園内はどよめきと歓声にあふれた。
これが「魔法が主導となる時代」の終焉とも知らずに。
(魔法の時代は、終わりだ!)
「この発明はエスリーンによるものである!」
聖女の宣言に学園中がどよめいた。この光景に銀狼級所属の学生は静かにほほ笑んだ。
◆◇◆◇
「秘密を公開したということは、新しい秘密を作らなければ行けないということ!」
「何その機械?」
エリックは興味がそそる。
「ミキサーというのよ」
スイッチを入れるとモーターがうなる。エスリーンはスイッチを切った。
「ここに卵と、醸造酢、調味料、香辛料を加えたものをミキサーでかき混ぜます」
出来上がったもの。それはマヨネーズだ。
(この異世界、マヨネーズすらないんだもんね。だから作っちゃった!)
「野菜に付けてみると……さあ、めしあがれ」
「なんだ、このおいしさは?」
ザックは仰天する。
「すごい、すごいよこれ! 君は機械だけを発明するんじゃないんだね! いや、これもう即公開しようぜ!」
「「すごい!」」
「エスリーン。これは軍事機密ではございません。モーターというのはこういう使い方もするのですね。早速明日から学食に導入してみましょう」
(聖女の太鼓判!)
エスリーンが作ったマヨネーズなるものは異世界人の食卓に欠かせないものとなった。鶏小屋も普及し鶏肉も流通量が増えたのだ。そう、マヨネーズに欠かせないのは卵だからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます