誰かのために

「少しだけ手伝ってもらえませんか......?」


「何を....?」


「最終試験の練習です。そんなに酷いことには、ならないと思い....ますけど」


 魔女は少しだけ緊張しているようだった。一体何をしようとしているのだろう。


「何するかによる」


「お世話になった人に、何か贈り物をしないといけないんです。私はお菓子がいいんじゃないかなって.....。でも、魔法を使うと絶対に失敗しちゃうから.....」


 魔法を使わずにお菓子作りをする。ということだろうか。でも、そうすると....ルール的にはどうなのだろう。


「魔法使いの試験なのに使わないの?魔法」


「はい。学校の先生に.....なんですけど......先生、甘いものが大好きらしくて。」


「なるほど。」


「魔法を使わない作り方、よく知らないから....」


 お世話になった相手のことを話す様子は、とても楽しそうで時々顔が少し赤くなったりしていた。出会ってすぐの頃は、ただうるさいだけだと思っていた。もちろん、完全にそれが消えたわけではないけれど。

 でも、誰かのために頑張っているのを見るのは嫌ではないから。


「わかった、手伝うよ。何作るの?」


 手伝うことにした。この魔女に会うのも、あと少しの間だけだろうから。


「それが、まだ決めてなくて......」


「マジか」


「まじで す」


 そう言って、魔女は苦笑いをした。


 本当にこの魔女はどこまで......。

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