知りたがりで、抜けている。

「待ってくださいよ〜〜!」


 後ろの方から、ものすごい速さで何が近づいてくる。歩く速度を早めて距離を空けてからゆっくりと振り返った。


「なに....」


「どうして話の途中で逃げたんですか?」


「別に」


「えー、冷たい!」


 なぜかは分からないけれど、魔女は自分にくっついてくる。人間界のことを知りたいのなら、学校か何かでとっくに習っているはずなのに。


「どうして逃げるんですか〜〜!!」


「面倒事嫌いだから。」


「まだ何も言ってないです!あっ、確かに案内して欲しいとは言いましたけど!!」


 そう言いながら、魔女は自分の目の前にすぃーっとやってきた。箒の持ち手が自分の鼻とぶつかりそうになる。


「危な.....とりあえず箒しまって。ぶつかると危いから。」


「はーい!」


 魔女は杖をひと振りして、箒を後ろに背負ったリュックの中へと片付けた。自分はそれをぼーっとしながら眺める。


「魔女って、とんがり帽子とかかぶらないの?」


「学校にいる時はかぶってましたねー。でも、修行中は付けないことになってるんです」


 リュックの中を探りながら魔女は答える。自分はもしかすると、このふわふわしたような空気感が少し苦手なのかもしれない。

 そんなことを気にする様子もなく魔女は自分についてくる。

 苦手だ、この空気感が。


「お兄さんは普段どんなことしてるんですか??」


「なんで俺?」


「えー?お兄さんのこともっと知りたいんです!」


 どうやらこの魔女は、かなりの知りたがり屋らしい。でも自分のことを知ったところで、修行に関して何か有利に進んでいくとは思えない。


「そこの角曲がった先の公園によく行く。大抵本読んでる」


「へぇ〜〜!他には???」


「他にって、魔女さんねぇ.....」


「魔女さんって.....私の名前はアカネです!覚えてください!」



「ふーん。俺は教えないけど。あ、前電柱。」


「はっ!!」


 知りたがりなのに加えて、この魔女は相当抜けているらしい。

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