空から落ちてきた魔女の話

七瀬モカᕱ⑅ᕱ

君は空から落ちてきた

 外を歩いていて、ふと上を見た。本当に何気なく。


「は......?」


「きゃあああっ!」


 空から、藍色をした小さい光がこちらに向かって落ちてくる。その光は、人の言葉を話していたような...気がする。


「え、ちょっ?!」


『待って』と声に出す前に、藍色の光はどしーんと音を立てた。驚いて光が落ちた方に走っていくと、そこには女の子が倒れていた。光の色と同じ、藍色の髪の毛をした女の子だった。女の子のからだの下にも、なにかふわふわしたものがいる。

 どうしようか、と悩んでいると女の子がゆっくりと目を開いた。


「うーん.....??.....はっ!だだっ、大丈夫ですか?!」


 瞳の色は薄い桃色をしていた。秋に咲くコスモスみたいな、そんな色をしていた。


「あのー.....大丈夫でした?」


「あぁ、俺は大丈夫だけど、下....」


「下....?あぁぁぁ!?コハクっ!大丈夫?!しっかりして?!」


 目覚めて早々、女の子はドタバタと動き回る。高い場所から落ちたとは思えないほど、しっかりとした口調で会話もできている。こんな状況で冷静でいられる自分の方が、周りから見ればおかしいのかもしれない。


「あの、大丈夫?その子.....手当した方が....」


「大丈夫です!こういう処置だけは他の子より得意なので!!」


 そう言うと、女の子は前に立ってそっと毛玉に手を乗せる。しばらくすると、全く動かなかった毛玉がもぞもぞ動き出した。自分が毛玉だと思っていたのものは猫だった。


「よかった、傷は酷くなさそう.....。気絶してるだけみたいだし、そろそろ起き......」


 自分の方に振り返った女の子は、驚いた顔をしている。まずいことでもあったんだろうか。


「あ、あのっ.....」


「ん?」


「み、見ました.......?」


「あ、割とガッツリ.....?」


「忘れてください」


「無理」


「ええ?!」


「こんなとこに何しに来たの」


「しゅ、修行....興味あります?」


「ない」


「もしあるなら、色々街を案内して欲しかったんですけど.....。あ!ちょっと!!」


 面倒事には巻き込まれたくないから、聞こえない振りをして歩いていく。これが、自分とうるさい魔女との出会いだった。

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