第2話 異世界転移

「良かった、では俺と一緒に行こう」

魔法陣のようなものが立っている真下に浮かぶ。


「え?何これっ……てきゃあっ!!」


ふわりとあたしの体が浮かぶ。


魔王の顔が近くにあった。


お姫様抱っこされてる!!


全身の血液が顔に集まった。


「な、何するんですかっ」


わたしは足をバタバタさせる。


「暴れるな、これから俺の住んでいる世界に向かう」


「えっ」


まさか、この人本物の魔王なの?

今から異世界転移しようとしてる?


「ちょっと待って!心の準備が!」


「転移」

魔王がそう言った次の瞬間、あたしと魔王は

空に浮かんでいた。


「ぎゃあぁぁーーっ!落ちる!」


あたしと魔王は真っ逆さまに落ちていく。


そして地面にドスンと落ちた、かと思ったら

魔王が受け止めてくれた。


「あ、ありがとう」


血生臭い匂いが充満している。

足元には、ブタの顔をしたものが

血を流して倒れている。


「ヒッ」


あたしは思わず後ずさる。

何かにぶつかって振り返ると

オオカミの顔をしたものの体に

槍が突き刺さっている。

そこから血が染み出していた。


「この人たちは……?」


「この者たちは魔族だ。人間との戦の末死んだ。」

悲しそうに瞳を伏せる魔王。


そんな魔王を見て、死体を怖いと

思った自分が嫌になった。


「いたぞ!魔王だ!逃すな!」


槍や剣を持った兵たちが追いかけてくる。


「アデル様に早く報告を!」


アデル?


「ここは危険だ、転移するぞ」

魔王が言い、あたしは頷いた。


「転移」


気づくと広い部屋の中にいた。


「ここは……?」


「我が城だ」

魔王が言った。


広くて、ステンドグラスも綺麗。

上を見上げるとシャンデリアが輝いている。


「すごい綺麗」


感動しているとツノが生えたメイドさんみたいな人が現れた。

ショートカットの黒髪に紫の瞳をしていた。

年は18くらいかな?


「ツノが生えてる!」

驚いて声を上げる。


「この者は魔族だ。人間と悪魔との混血でツノが生えているのだ。」

つまりハーフってことね。

なるほど、と納得する。


「聖女様、婚礼の準備をいたしましょう」

唐突に無表情で言葉を発する彼女。


「えぇっ」


そんな急に?


「ちょっと待ってよ!心の準備ができてない!こーゆーのはちゃんと好きになった人とするものでしょ?

あたしが聖女だから結婚するなんて、ロイスはそれでいいの?」


「あぁ構わないが」


無表情のロイス。


「でも、せめて一週間!いや明日まで!」


ロイスは渋るような顔になった。


「いや、しかし世界平和のためには」


「だから!それは迷信だから!」


「迷信などではない。女神様が現れ俺に神託を授けたのだ」

ムッとした表情のロイス。


あたしは深くため息をついた。


ダメだ……話が通じないよ、この人!


「……分かった、でも一日だけ待って。

じっくり考えたいの。」


あたしはロイスの瞳を見つめた。


「いいだろう。では明日返事を聞かせてもらうぞ。」

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