第23話 譲れない優しさ 感想・スレッタの優しさはプロスペラに届くのか

 先週は、22話の感想アップが遅くなり申し訳ありませんでした。今春より仕事が多忙になり、なかなか更新する時間がもてませんでした。その結果、シーズン1では時折差し挟んでいた考察パートも設けておりませんが、そうこうしているうちに次回が最終話ですね。

 最終話の感想アップ後に、この感想置き場は一旦完結にしようと思っておりますが、小説版の感想(こちらが意外と好評で、PVが伸びているんですよね……)やイベント参加の感想などを掲載していきたいと思います。今後とも宜しくお願いします。


◆シュバルゼッテvsディランザの兄弟対決

 ――フェルシーの人命救助がGJすぎた

 ラウダが駆るシュバルゼッテとグエルが乗るディランザ。旧型機&ラウダを殺したくない&ラウダの言い分に反論できないグエルはだいぶ分が悪い戦いです。しかも対ガンダム4戦の経歴があるとはいえ、シュバルゼッテは初めて戦う相手。かなりグエルの負け筋が濃い戦いでした。

 特に、ラウダはかなりエキサイトしていましたからね。普段落ち着いて見せて、実際には兄に信用されず、結果的にシャディクの陰謀を止められず、ペトラが瀕死の重傷を負い、忸怩たる思いがあったのでしょう。ラウダの弁にシャディクを責める声が一切なかったのは謎ですが、むしろ彼やミオリネに対するグエルの対応が、ラウダをイラつかせていたのでしょうね。2話前ではミオリネに対し呪詛の言葉を吐いていましたが、恐らく相手は誰でもよかったのでしょう。グエルの高潔さから、現状の会社崩壊の危機にいたるまでの過程で「誰が兄をたぶらかしてこうなったのか?」というのをラウダなりに考えた結果がああなったというだけで。

 ラウダ的にはランブルリングの時点では、水星女ことスレッタに対するヘイトが大きかったと思うのですが、決闘でグエルがスレッタを破ってから一気にそれは鎮まった印象でした。故にことの元凶(=花嫁争奪戦という名のホルダー争奪戦が勃発した原因)であるミオリネにヘイトが向かうのはわからないでもないです。


 しかし、シュバルゼッテがディランザを突き刺した瞬間は、いやがおうなしにも父を殺めてしまったグエルのデスルターが、ディランザソルを突き刺した瞬間を彷彿とさせましたね。しかも幼少期の回想まで入るので、このままグエルは父と同じ道を歩むことになる(=死ぬ)んじゃないのかと冷や冷やしました。ちゃんと冷却パーツを携えて出撃していたフェルシー、Good Job(GJ)。地球寮の面子と同行していた甲斐がありましたね。

 もっとも、ジェターク寮一行はこれで出番が終わりの可能性があるので、それはそれでさみしさがあります。最終話までスレッタに助力して欲しいところですが。


◆デリング、かなり無理しての再起

 ――“総裁”の座はミオリネからデリングに戻ったのか?

 先週は声も出ない状態だったのに、今週突然起き上がり、あまつさえ宇宙船の司令官の席から敵対勢力と対話を試みるという、かなり無茶をしていました。デリングは結局起きないのではないかと思っていたので、これはかなり意外でしたね。しかも彼は周囲から「総裁」と呼ばれていたことも気になります。一応シャディクの一件後、ミオリネが総裁の座についていたはずですが、デリング復活により総裁の座はデリングに戻ったということでしょうか。

 となると今のミオリネの立場はどうなるのでしょう。あくまで「スレッタの花嫁」「デリングの娘」という関係で主従関係が逆転(元に戻った)と見るべきなのでしょうかね。あのシーンは前線で頑張る娘のために、父親が一肌脱いだともとれますし、逆にクワイエット・ゼロ内部に侵入している娘を実働部隊として、父親は管理職としての役目をはたしているとも取れますから。デリングが「総裁」と呼ばれていた以上私は後者だと思いますが、多少は前者の考えもあるのかもしれませんね。


◆クワイエット・ゼロの機能が弱体化したのは誰の意志なのか

 クワイエット・ゼロはミオリネ達が停止コードを打ち込む前に、機能が弱体化する瞬間がありました。その隙に地球寮の面々はクワイエット・ゼロの内部に侵入できたわけですが、あれは誰の(何の)意志で行われたのでしょう。エアリアルの肩にいたエリクトが振り返り、反論していたことからエリクトとコミュニケーションがとれる存在と思われます。単純に考えればクワイエット・ゼロ(ノートレットの意志)か、エアリアル自身の意志のどちらかということになるでしょうか。

 後述するクワイエット・ゼロの解除コードにノートレットのメッセージが込められていたことから、クワイエット・ゼロの停止にはノートレットが関わっていると考えることができます。しかし、彼女がいつ亡くなったのかわからないので、エアリアルやエリクトのことを知っていたのかは謎です。また、どんな性格だったのかも描写がないので不明です。仮に機能弱体化がノートレットの意志だったとして、考えられるとしたら愛娘が停止しようとしているのを感じ取り誘導したくらいでしょうか。


 もう一つは、エリクトとは別にエアリアル本体に意志があり、それがクワイエット・ゼロの機能を弱めたという考え方です。このパターンですと、エリクトがエアリアルの方に振り向いているように見えることの説明がつきます。ただし、そうなると「ゆりかごの星」で「僕」と自称しているのがエアリアル本体なのか、エリクトなのか判然としなくなりますが。

 とはいえ、次世代のGUND-ARM(ルブリス、エアリアル)にはそれ自体に意志があると感じられるシーンも今までありました。特にprologueでエリクトがルブリスに話しかけているシーン。話しかけ続けた結果エリクトはレイヤー33を突破することができたわけですが、これはエリクトの思いにルブリスが応えたとみることができます。この時点でエリクトはルブリスに取り込まれていませんから、ルブリス自身の意志(パイロットを選ぶ意志)がはたらいているように感じられます。


 そんなわけで、恐らく元のOSはルブリスと同じであろうエアリアルも、それ自身にパイロット選別の意志が宿っていてもおかしくはありません。エリクトもスレッタもエアリアルに「選ばれた」ことのあるパイロットですから、この二人が対立した際、スレッタに有利になるように動く可能性はゼロではありません。なぜ今機体の主導権を握っているエリクトではなく、スレッタの方に肩入れしたのかはわかりませんが。結局この問いは、ノートレットの意志説をとってもエアリアルの意志説をとっても証明ができないので、未解決の問題となってしまうのですが。

 あと1話でここの謎が解決されるのか、気になります。


◆クワイエット・ゼロの解除コード

 ――How are our tomatoes? → I love you. From Mom.

 プロスペラは解除コード入力エラーに打ちひしがれるベルメリアに対して、「コードは変更した」と言い放ちますが、ミオリネはそもそも大元の開発者コードを洗いざらい調べることでノートレットの開発痕跡を発見し、トマトの遺伝子コードに刻まれていたメッセージ“I will always be attached you, Miorine”に着想を得た回答“I love you. From Mom.”を打ち込みます。このシーン、一瞬なので放送時は何と書いてあるのか読めなかったのですが、有識者がスクショしてくださっていたのを見て何とか読み取ることができました。

 まず、入力画面には“How are our tomatoes?”という質問が上部に表示されています。直訳すると「私たちのトマトはどう?」といったところでしょうか。ここからミオリネは、母から譲り受けた(と思われる)トマトの遺伝子コードに記載されていた“I will always be attached you, Miorine”(わたしはいつもあなたを愛しているわ、ミオリネ)を思い出したのでしょう。これをもっと簡単にするならば、“I love you. From Mom.”(愛してるわ。お母さんより)となり、解除コードとなったわけです。


 ここで気になることも二点あります。一点目は、なぜミオリネはトマトの遺伝子コードをそのまま記載せず、略した書き方でコードを打ち込み、それが正解だとわかったのか。直接トマトの遺伝子コードの文章を打ち込むのならまだわかるのですが、なぜミオリネはそうしなかったのか。考えられることとしては、このコードをプログラム言語に変換した際に、解除を意味する何らかの別の意味が持たせられるという説です。ミオリネは頭がいいので解除コードになりそうな文字列の組み合わせの中で、“How are our tomatoes?”の問いに答えられそうな文章を見つけ出したと考えることはできそうです。

 二点目は、なぜノートレットが遺したプログラムがクワイエット・ゼロの中に残っていたのかです。これまで出てきた情報では、ノートレットは植物学者的な存在で、かつミオリネが幼いころに亡くなっています。植物学者というのはトマト栽培をしていた、クワイエット・ゼロを植物の性質から連想したという話から誘導されたミスリードで、実は研究開発の才能に優れた技術者だったというのはありえる話です。故にクワイエット・ゼロのシステムも基本的にはノートレットが組み上げ、彼女の死後はプロスペラが引き継いだのかもしれません。


 ノートレットは、プロスペラの目論見にどこまで気づいていたのでしょうね。解除コードをミオリネにしかわからなさそうな文章にしていたあたり、プロスペラのことはそこまで信用していなかったのではないかという気もします。今後番外編があるのだとしたら、ノートレット・デリング・プロスペラが協力してクワイエット・ゼロを立ち上げた経緯を詳しく知りたいですね。小説版のおまけとかで付いていたら嬉しいのですが。


◆突然登場した大量破壊兵器

 ――唐突感がすごい

 さて、クワイエット・ゼロ周辺でドンパチやっていた一行ですが、宇宙議会連合はクワイエット・ゼロの存在を抹消すべく、惑星間送電システムを改造した超大型レーザー砲を起動させます。ここまで、そんなものの存在は示唆されていなかったので唐突感がすごいというのが正直なところです。

 しかし、思い返してみれば機動戦士ガンダム(=ファースト)のソーラレイも終盤に唐突に登場しましたし、大型殺りく兵器が前振りもなく登場するのはある意味ガンダム界の「お約束」なのかもしれません。ともあれ、コレの登場で物語は一気に不穏な雰囲気を帯びてきます。スレッタvsエリクトの解決、スレッタとプロスペラの対話だけではどうも収まらなさそうな雰囲気が出てきました。あと1話でこの辺りの対決も含め、きちんと物語を畳むことができるのでしょうか。


 ――ペイル社は勝算があるのか?

 さて、超大型レーザー砲の発射指示をしている宇宙議会連合の背後には、ペイル社の4人のCEOたちとエラン(オリジナル)がいました。曰く、壊滅状態に陥ったベネリットグループを建て直す旗頭になる魂胆の模様です。ペイル社の意思決定はペイルAIに基づいている模様ですが、果たしてこの判断は正しかったのでしょうか。

 確かに、ミオリネが支持率の低い中総裁になり、シャディクの反乱や地球での紛争悪化などの「泥舟」状態であったベネリットグループを離脱したのは当初のペイル社にとってみれば「賢い選択」だったのでしょう。

 しかし、デリングが復活し、ミオリネがクワイエット・ゼロの停止に成功した今となっては、レーザー砲の発射は無意味であったと言わざるを得ません。むしろベネリットグループ側が宇宙議会連合の過剰な介入を糾弾する隙をつくってしまいました。明らかに悪手でしょう。だからこそ、背後に立っていたエラン(オリジナル)は笑みを消して4人のCEOを眺めていたものと思われます。


 一度離反した以上、デリング体制下のベネリットグループに何のペナルティもなしに戻ることは難しいと思われます。それに、宇宙議会連合についたとしてもやはりデリングの批判を受けることは間違いありません。さらに悪いことに、エリクトを攻撃されたことに激高したプロスペラたちが直接手を下しに来る可能性もあります。ここまでのらりくらりと美味しいところだけ持っていこうと画策していたペイル社ですが、ここから生き残るための勝算はあるのでしょうか。仮にそれが存在していて、最終話後ものうのうと生き延びていたら大したものですが、そうはならない気がしてなりません。


 ――エリクトは無事なのか

 さて、唐突に表れたレーザー砲を食い止めたのは、エリクトが操るエアリアルでした。あんな高火力のビーム兵器をMS一機で食い止めるなど正気の沙汰ではないですが、エリクト含め12人で操縦している力は伊達ではない、ということでしょうか。本来であれば、MSが12機いても止められる出力ではないと思いますが。ビームを止めてエアリアルが爆散する直前、エリクトはスレッタの方を見て微笑みました。それは「ぼくの代わりにお母さんを守ってね」という意味に感じられました。更にエアリアルが爆散した瞬間、プロスペラが「エリィ―!」と叫んでいることからエリクトは無事ではないような気がします。


 しかし、エリクトは元々物理的な存在ではありません。データストームの中に生きる電子的な存在です。故にエアリアルのOSが生きてさえいれば復活は可能な気がしています。終盤でスレッタが爆散したエアリアルの機体を見た際、胸から上は残っているようだったのでOSが生きている可能性はあると思います。エリクトの生死は最終話に大きく影響を与えると思うので、その辺りは序盤で明らかになるのでしょうね。

 それにしても、もともとGUND-ARMの開発を止めた宇宙議会連合が開発した大量破壊兵器を、ひそかに開発されていたGUND-ARMが止めるというのは皮肉な事態ですね。地球の調停に失敗したエアリアルを糾弾する声が㈱ガンダムに届いていましたが、今回の映像が全世界に配信されたら、逆にGUND-ARMが多くの人命を救ったとして、㈱ガンダムの逆転の一手になりえるかもしれません。


 ここまで、人命救助を掲げて活動してきた㈱ガンダムの事業展開状況は物語で描かれてこなかったので、最終話でどうなったのか知りたいですね。例えば瀕死の重傷を負ったペトラが㈱ガンダムが作った医療機器を身につけることで再起するとか。とにかく、地球寮のメンバーはミオリネの小間使い的なポジションではなく、きちんと思いを形にしているのだというのを示してもらいたいところです。


◆それでも母を愛するスレッタ、義母を赦すミオリネ

 地球でのオックス・アース社襲撃、クワイエット・ゼロによる宇宙議会連合の戦艦の破壊など目的(エリクトの生きる世界をつくる)のために様々な罪を犯してきたプロスペラ。しかし、そんな母でもまだスレッタは好きだと言い続けます。ここまでくると毒親の洗脳が残っているせいじゃないかと思い痛々しさを感じてしまいますが、一度再起したスレッタからすれば、プロスペラは唯一の肉親で生みの親(どのような形で「生んだ」のかはわかりませんが……)です。やはり分かちがたいものはあるのでしょう。

 スレッタはエリクトに対して、「お母さんを悪い魔法使いにしたくない!」と叫びます。これまでの行動の時点でプロスペラは十分「悪い魔法使い=魔女」だと思うのですが、これ以上は許しがたいということでしょう。それにしても、スレッタの母に対する愛情の深さは尋常ならざるものがあります。


 ミオリネはそんなスレッタの思いをくみ取り、リスクを負いながらもキャリバーンに乗っていることをプロスペラに告げます。そして、手を差し出し「家族になるんだから」と語りかけました。この時点で、前話の決闘でスレッタがグエルから取り戻したのがホルダーの地位だけではないことがわかりますね。公ではグエルのままなのでしょうが(だからラウダはミオリネにキレている)、ミオリネの花婿の座もスレッタは取り戻していることになります。そして、あれだけ人を殺してミオリネに自責の念を負わせていた張本人であるプロスペラでさえも赦してしまう、ミオリネの器の大きさに驚かされます。これもスレッタを思っての行動だと思いますが、本来であればシャディクに対するグエル同様、許せないはずです。彼女の罪も全てひっくるめて、「家族になるんでしょ」と告げる。その思いはプロスペラに届くのか。全てはエリィの生死が鍵を握っているものと思われます。


 諸々未解決の謎がありますが、最終話にすっきりすべて解消されるのでしょうか。仮に拾いきれなかった部分があれば、劇場版ないし番外編ないし小説版などで補足してもらいたいところです。とにかくきれいに話がまとまってくれることを願っております。


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