第22話 紡がれる道 感想・遂に始まる最終決戦

 いよいよ残りあと2話ですね。これまで登場してきた数々のMSパイロット及びメインキャラクターが終結し、最終決戦の様相を呈してきました。相変わらず作画が凄いですね。キャリバーンが戦場に登場すると同時に流れたサウンドトラックに鳥肌が立ちました。水星の魔女のサントラ、予約しているので届くのが楽しみです。サントラがいいガンダムは良いですよね。

 さて、それでは本編へまいりましょう。


◆結集する地球寮の絆

 チュチュがセセリアにデミバーディングの貸与をお願いしに行ったり、その流れでロウジが帯同することになったり、かつてのいじめっ子二人がアリヤ不在の間ヤギの世話を任されたり、フェルシーが同行をオジェロに頼み込んだり、と、「地球寮に絡む他寮の面々」が目立つ回でした。少し前の話数までは地球寮は、ランブルリングで暴れたGUND-ARMを擁していた(と思いこまれていた)結果、攻撃対象と見なされていたことを考えると大きな違いです。これも、ルブリスソーンが地球寮所属ではなかったと明らかになった&復興作業を率先して行っていた成果なのでしょうか。

 宇宙企業の筆頭であるベネリットグループの癌たるクワイエット・ゼロを打ち砕くために立ち上がるのがアーシアンである地球寮の面々。これはある意味、アーシアンがスペーシアンを打倒する構図であり、シャディクが望んでいた絵かもしれません。ただし地球寮に策略などは何もなく、ただリスクを負って家族との対話を試みたいスレッタを助けるという一心です。ニカの件も含め、地球寮の面々は非常に仲間想いです。そうした純粋な思いが、憎悪の鎖を断ち切ることに繋がるのでしょうか。


 また、オジェロたちがキャリバーンをメンテナンスしていたのも印象的でした。彼らの台詞からキャリバーンは21年前のままの機体スペックであることが察せられます。「これくらいのジャンク品の方が整備しやすい」というオジェロの発言から、骨董品ものであるキャリバーンはむしろ、地球で古い機体のメンテナンスをしていた地球寮メカニック科の面々にとって御しやすい機体であることがわかりました。この辺りも、「古い機体をわざわざ持ってきて、地球寮の面々で整備させる」わけになっているのかもしれません。 


◆再起するミオリネ

 ――グエルvsスレッタでホルダーの座はスレッタに戻る

 地味にグエルに会ったスレッタとフェルシーが、スレッタが直立してその後ろにフェルシーが隠れる構図だったのが1話と対比されていてよいなと思いました(1話でスレッタが隠れていたのはペトラの後ろでしたが)。フェルシーがグエルに黙ってついてきたという後ろめたい事情があったとはいえ、グエル相手に逃げも隠れもしなくなったスレッタに成長を感じます。

 また、その後のフェンシングでの決闘もよかったです。スレッタをミオリネに会わせるだけならこの決闘は不要だと思いますが、スレッタ勝利後にグエルがスレッタにホルダー服を渡していることから、ホルダーの座をスレッタに返すのが目的だったのでしょう(わかりにくいですが、フェンシング衣装も学園のもの→ホルダーのものに変わっていますし、その後ミオリネに話しかけるシーンでは、スレッタはホルダー制服を着ています)。グエルの心情的には花婿の座もスレッタに返すくらいの心づもりだったのかもしれませんが、それはデリングが定めたルール上できません。だからせめてホルダーの座を返すことで、けじめをつけたかったのでしょう。

 グエルの目的を考えると、彼はわざと負けたのかもしれませんが、だとしても肉弾戦にも強いグエルと互角にやり合う辺り、スレッタの身体能力の高さをうかがわせます。リプリチャイルド(純粋な人間ではない)だからなのか、過酷な環境で育ったため体を鍛えているのか。


 ――ミオリネはシャディクに何をさせようとしているのか?

 さて、スレッタの「間違っても進み続ける」「ミオリネと出会ったことは間違いじゃなかった」といった声かけにより、ミオリネは閉じこもっていた部屋から出てきました。そして地球寮の皆に謝り、普段の調子を取り戻します。そんな彼女がデリングの後に向かったのはシャディクの所。「犯した罪は償う」として彼にも何か協力をさせようとしていましたが、何をさせるつもりなのでしょうか。戦場に彼を出すにしても、ミカエリスは大破していますしハインドリーを使うしかありません(グエルが久々にディランザに乗っていたところからして、ミカエリス再登場は無いと思っています)。そもそも窮地に立たされているグラスレーで、主犯格だったシャディクにハインドリーは貸与してもらえるのか微妙なところです。

 残っているMSといえば接収されて、傷らしい傷がついていないルブリス・ウルくらいなものですが生死のリスクがあるとわかっているGUND-ARMに、ミオリネはシャディクを乗せようとするでしょうか。どうもピンときません。

 放送後のグラスレー寮ラジオによると、かなり予想外な提案をされているようなので、次にシャディクがどんな形で出てくるかは楽しみに待つことにします。


 ――“I will always be attached you, Miorine”が示唆すること

 再起したミオリネに対し、スレッタがトマトの解析結果を告げます。ミオリネが大切に育てていたトマトの遺伝子コードには“I will always be attached you, Miorine”と記載されていました。意訳すると「私はいつもあなたのことを愛しているわ、ミオリネ」といったところでしょうか。スレッタの母であるノートレットの遺言のようにも感じられますが、ミオリネがどういった経緯でトマトの苗を手に入れたのか、ノートレットがどういう経緯でこのトマトを開発したのかが謎なので、文脈はわかりませんね。後述する目覚めたデリング(父)と、ノートレットの遺言(母)の存在を感じ、両親に愛されて育ったことを実感したミオリネが再起するきっかけになる、という文脈でしょうか。父の存在が明らかにされておらず、いわゆるデザインベイビー的な存在だと言われているスレッタとは対比的ですね。

 最終決戦を前にして、「何もかも恵まれたお姫様」であるミオリネと「目的のために創られた存在で、死のリスクを背負い創造者たる母に歯向かう」スレッタの様子が対照的に描かれた意味はどこにあるのでしょうか。それだけ立場が異なる二者でもわかりあえるし、お互いのことを助け合うことができるということを示したかったのでしょうか。

 ミオリネ個人に戦闘能力はないので、最終決戦でどう立ち回るのかは見どころです。個人的にはプロスペラを叱責する一言くらいは放って欲しいものです。


◆ようやく起きたデリング

 ――声を出せないという描写が活きる

 地球寮の皆に謝罪したミオリネが向かった先は、目を開けたデリングのところでした。目は開いているが声を発することができないデリングは、目元は隠されていて言葉だけで意味をくみ取るしかないプロスペラとは対照的な様子ですね。もう逃げないと宣言するミオリネをじっと見つめていましたが、彼は今何を思うのでしょうか。ラジャンからベネリットグループの現状は知らされているでしょうし、プロスペラの暴走も把握しているはずです。それでも、7話でミオリネに告げた「逃げるなよ」の言葉を娘がしっかり受け止めていることは認めているのでしょう。


 プロスペラはデリングがいる(と思われる)プラントクエタに向かっているようなので、そこで一言も発しないまま退場、というのは避けてほしいところですが。しかしプロスペラにとって、デリングは最も復讐したい相手の一人でしょうから間違いなく攻撃はするでしょうね。とはいえここまでぐちゃぐちゃにされたベネリットグループに対し、デリングがどんな一手を打つのか興味があります。やはりミオリネはグラスレーを切り捨てられない、ペイルをコントロールできないなど甘いところがあり、総裁としてはやや力不足な感があるのでデリングには戻って来てほしいところです。

 もっとも、シャディクから取り付けた協力の内容によってはミオリネを見直すことになるかもしれませんが。水星の魔女は進むことを決意したキャラクターたちを肯定的に描くことが多いので、ミオリネの今後の言動も恐らく肯定的に描かれるでしょう。それが受け入れられる内容だとよいのですが。


◆キャリバーンvsエアリアル

――常時スコア5を出すキャリバーンに乗ってスレッタは大丈夫なのか

 プロローグを彷彿とさせる起動テストにおいて、スレッタはキャリバーンのスコア5に耐え、テストをクリアしました。その際エラン(5号)が何かを感じ取っていた様子がありましたが、あれはどういう意味なんでしょうかね。普通の人間だったらスコア5は耐えられない=スレッタが普通の人間ではないことを悟ったという意味なのか、それ以外の意味があるのか。

 いずれにせよ、スレッタはデータストームと完全に同調できるエリクトと同じ遺伝子を持っていますから、ある程度高スコアに耐えられるという理屈はエランたち強化人士と近いものがあります。とはいえ、常時スコア5で戦い続けてスレッタは大丈夫なのでしょうか。

 物語終盤で戦場に現れたスレッタは既に息があがっている状態でしたが、身体の負荷なしに常時スコア8を発揮しているエアリアル(エリクト)相手に勝ち目はあるのでしょうか。そう考えたとき気づいたのですが、スレッタはエアリアルに対して「勝ちたい」とは一言も言っていないんですよね。ただ、「話がしたい」というだけで。エリクトに対しては「止めに来たんだよ、二人を!」と言っていることからやはりスレッタの目的は対話であり、戦闘ではないと思われます。

 戦闘慣れしていないであろうエリクト相手とはいえ、スコア8のエアリアルvsスコア5のキャリバーン(しかも21年前のロートル機)では勝ち目がありません。だからこそ話し合いでわかってもらおうとするのでしょう。

 しかし、エリクトとプロスペラはスレッタの話を聞いてくれるのでしょうか。スレッタ本人が言っていたように、プロスペラにとって本当に大切な娘はエリクトだけなので、スレッタの言うことを聞くとは思えません。それにプロスペラが地球の武装組織とミオリネが対話を試みようとした際に、「武力を見せないと対等な対話はできない」と言っていたのも伏線になっているような気がします。キャリバーン程度の武力であればエアリアルから見て対等ではないので、対話は成立しないのではないでしょうか。


 この状況から対話を成立させられる可能性は2つ考えられます。1つ目が、キャリバーンが私が考えているよりも性能が高く、その力に危惧を覚えたプロスペラが対話に応じるパターン。2つ目は、プロスペラは話を聞いてくれないがエリクト、ないしエアリアルの中にいるリプリチャイルドたちが対話に応じて動きを止めてくれるパターンですかね。スレッタ以外にも、エアリアルの中には11人のリプリチャイルドがいたはずです。それらが一人一体のガンビットを操っている。今は完全にエリクトの制御下に置かれている彼女たちですが、スレッタの呼びかけに応えてエリクトの命令に反逆する可能性はあり得るかと思いました。

 あるいは、エリクト一人のために世界を壊そうとしているプロスペラの思想をエリクトが受け入れなかった場合、エリクトがスレッタ側についてプロスペラを説得してくれるかもしれません。その場合、対話中にエリクト(エアリアル)が第三勢力に撃破されてプロスペラが自棄になるパターンもあり得そうで怖いですが。


 それにしても、主人公機のパイロットが交替してラスボス機になるという展開は斬新ですね。シーズン2のOPでエアリアルがスレッタが見ている前で動いているシーンがありますが、あれはエリクトが操縦している暗示だったのでしょうね。また、OPの後半でエアリアルが出てきた直後のカットでスレッタがコックピットにいるシーンが映されますが、これも恐らくスレッタはエアリアルの中にいるのではなく、キャリバーンの中にいてエアリアルと対峙している描写なのでしょう。

 ただし、物語の前半で考えるとスレッタがエアリアルのコックピットにいて、決闘しているシーンのようにも取れるので上手いですね。ポイントはこのときのスレッタがホルダー制服であることかと。もっとも、グエルとの決闘に負けてから今回キャリバーンに登場するまでの間(ホルダー剥奪期間)、スレッタが乗っていたのはデミトレーナーだけですからホルダー制服で搭乗している機体は必然的にエアリアルかキャリバーンということになりますが。最終話のOPでキャリバーン出てきたりしないですかね。出てきたらテンションが上がると思います(私が)。


◆最後の最後にシュバルゼッテ登場

 前話に続き、終盤にラウダ(シュバルゼッテ搭乗)が現れるという不穏なシーンで終わりましたが、ミオリネへの憎しみを、戦えない彼女を護衛しているグエルにぶつけるであろうという嫌な予感が当たってしまいましたね。この流れでどっちかが死んだりしないといいのですが。本作で最もガンダムとの対戦経験が豊富なグエルですから、今や格落ち機となってしまったディランザでも善戦しそうなので、むしろラウダが死にそうなのが嫌ですね。グエルがあれだけ守りたいと言っていたものを失うことになってしまいますから……彼を一人にしないでほしいです。

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