第21話 今、できることを 感想・立ち上がるスレッタ、そしてミオリネは再起を図れるのか
学園が復興しつつある傍らで、プロスペラがついに「クワイエット・ゼロ」を立ち上げましたね。クワイエット・ゼロはてっきり計画名だと思っていたので、いかにも最後に爆散しそうな見た目の宇宙要塞の名前だとは予想外でした。しかしガンドノード強すぎますね。あれをエリクトがどんな思いで操作していたのか気になります。
また、今回は新ガンダムがシルエットと名前だけ登場しました。こちらは4話放送時点でまとめた『テンペスト』相関図にも出てくる名前ですので、本作は最後までシェイクスピアに則った作品作りをしているのだなと感じさせられましたね。その辺りも後で触れていきたいと思います。
いよいよクライマックスに近づいてきた感がある中で、感想に参りましょう。
◆ベネリットグループを裏切ったペイル社
――シャディクの狙ったベネリットグループの解体が果たされるのか
ペイルの4人のおばさんたちが、エラン(オリジナル)に「総裁選はミオリネが勝ちそうだけど、どうするの?」と言われていましたが、その答えがベネリットグループからの離反でした。確かに彼らは口約束でシャディクに協力していただけなので、彼らのテロ行為に直接手を貸していたわけではありません。ゆえに宇宙連合議会に突かれても痛くもかゆくもないわけです。であれば、もはや泥舟と化したベネリットグループの次期総裁の座に拘泥するよりも、別組織にすり寄って生き残りを図った方が賢いと判断したのでしょう。
――なぜモビルスーツ開発評議会とカテドラルも離反したのか?
ペイルの離反は日和見主義な彼らを見てきた以上、想像の範疇ですがデリングの傘下にあったモビルスーツ開発評議会とカテドラルも、「議会連合の判断を支持する」という立場に回ったのは意外でした。彼らはラジャン同様、「デリングに仕えている」組織なので、そのまま流れでミオリネに仕えるものだと思っていました。ミオリネに求心力が無いと見切りをつけてしまったのでしょうか。
サリウスが提案していた「グラスレーを切り捨てる」判断をミオリネができなかったことから、彼女の経営能力がデリングより低いと見做されている可能性は大いにあると思います。そもそも総裁選ダービーもシャディクが圧倒的にリードしていて、ミオリネはシャディクが犯罪者だと露呈したことで繰り上げ合格したに過ぎませんからね。あまりベネリットグループ内で支持が得られていないのかもしれません。
しかし、今回発動したクワイエット・ゼロで宇宙議会連合の部隊は壊滅してしまいました。次に考えられるのはクワイエット・ゼロvsカテドラルの同士討ち(ベネリットグループ内での闘争という意味で)です。そこにスレッタも参戦し、母と姉との対話を試みる流れになるのでしょうか。ただ戦隊を突っ込ませたら宇宙議会連合の二の舞になりますから、そうではない動きが求められますね。ケナンジ艦長、腕の見せ所ですよ。
話を戻しますが、ミオリネ――グエルサイドと行動を共にしていたケナンジを擁するカテドラルが離反したのはやはりちょっと違和感がありますね。ペイル社が告発したクワイエット・ゼロをそれだけ危険視しているということなのでしょうか。魔女狩り部隊のコントロールが失われているのは不気味であり、同時にミオリネのメンタルが心配になります。彼女はこのままベネリットグループの総裁であり続けることはできるのか。そしてデリングはいつ目を覚ますのか(OPにはいるのに、未だに起き上がる気配がありませんね)。今のスレッタはミオリネに関しては吹っ切れて、母と姉との対話に意識を向けている様子なので、ミオリネのフォローをできる雰囲気ではありません。グエルも「お前のせいじゃない」とフォローを入れていましたが、ミオリネには響いていなさそうでした。可能性があるとすればデリングが目を覚ましてミオリネを叱咤激励するくらいです。それで再起したミオリネが、スレッタと共にプロスペラに立ち向かう構図が見られるとよいのですが。
――ペイル寮の生徒はどうなってしまうのか
さて、ペイル社がベネリットグループから離反したことで、地味に気になるのはアスティカシアのペイル寮の生徒たちの立ち位置です。彼らはペイル社からの推薦を受けて入学してきているはずですが、ベネリットグループが運営している学園に残ることはできるのでしょうか。普通に考えたら、他の寮の生徒から追い出されそうですが。幸か不幸か、今までペイル寮の名前付きキャラはエランしか出てきていないので、この辺りの描写がアニメでなされることはないでしょうが、「もはやペイル社はベネリットグループではない」として寮ごととり潰しになるリスクはあると思います。学園の分断がより一層進みそうで心配ではあります。
◆クワイエット・ゼロは概念なのか、場所なのか?
――プロスペラの復讐は今回で果たされたのか
今まで「クワイエット・ゼロ」は計画の名前だとばかり思っていたのですが、今回出てきた宇宙要塞のような空間自体も「クワイエット・ゼロ」と呼ばれていたことから、計画名と場所名両方を指す言葉であることがわかりました。むしろ、デリングサイドは計画名としてのみ認識しており、プロスペラは計画名+実働装置の名前にしたというスタイルでしょう。
気になるのは、今回宇宙議会連合を一掃したことでプロスペラの復讐はすべて果たされたのかというところです。今回で復讐完了であれば、次話からは「エリィが生きる世界に書き換える」過程に行くと思われますが、そうでないならば次なる復讐相手を滅ぼしにかかるはずです。
おそらく、プロスペラの復讐相手は「オックス・アース(GUNDの理念を踏みにじり、ルブリスウル・ソーンを開発する)」「宇宙議会連合(オックス・アースを陰で支援しており、魔女狩りにも関与していた?)」「カテドラル(魔女狩りの実働部隊、ただしケナンジ個人が為したことは知らないはずなので、個人ではなく組織を恨んでいると推察される)」「デリング(魔女狩りを指示した張本人)」の四者だと思われます。このうちカテドラル以外の三者には復讐が完了しています。
・オックス・アース……プロスペラが自ら手を下し壊滅させる
・宇宙議会連合……クワイエット・ゼロに接続されたエアリアルが壊滅させる
・カテドラル……現状ほぼ無傷
・デリング……瀕死の重傷を負う、娘のミオリネに業を負わせる
よって、復讐の最終段階としてプロスペラは、カテドラルの部隊も壊滅させようと画策するのではないでしょうか。21年前に起きたケナンジvsプロスペラ&エリクトのリベンジマッチが次話で描かれると予想します。宇宙議会連合のようにあっさりやられないといいのですが、アンチドートも効かなさそうですし心配です。
◆ここにきて初出、ガンダムキャリバーン
――『テンペスト』にも登場するキャリバンの立場とは
さて、宇宙議会連合のエージェントであるグストンから、ガンダムに乗ってプロスペラの蛮行を止めるため協力を要請されたスレッタ。搭乗機として示されたのは「バケモノの名を持つ」ガンダムで、ベルメリア曰くその名はキャリバーン。この話の流れからして、名前の由来は明らかに『テンペスト』に登場する魔女の息子、先住民を指しているでしょう。
ベルメリアの話によるとキャリバーンはデータストームのフィルターが一切ついておらず、パイロットへの負荷が尋常ではない機体とのこと。ルブリスという新時代を担うことを期待されたGUND-ARMがありながら、なぜ、そんな機体が存在していたのか。
考えられるのは、キャリバーンがヴァナディース機関ではなく、地球のオックス・アース社で開発されていたという可能性です。ヴァナディース機関はカルド博士の式の下、人類が宇宙に進出するための新たな肉体となるMSとしてルブリスを開発。他方でオックス・アース社は、単純に殺戮マシンとしてのMSとしてキャリバーンを開発、という経緯ではないでしょうか。宇宙議会連合はヴァナディース機関ではなく、オックス・アース社とのつながりを裏で持っていたわけですから、MSの押収もオックス・アース社からだと考えた方が自然ですし。
となるとプロスペラからしてみれば、キャリバーンも「GUNDの理念を汚した機体」として殲滅対象になるわけで、それが戦場に現れた瞬間に倒しにかかるのではないかと心配です。
また、「21年前に押収した機体」ということは文字通り21年前の旧型機ということになります。そんな高リスクで旧スペックな機体に乗るくらいなら、それこそディランザとかに乗った方が機体性能的には高そうですが、なぜグストンはGUND-ARMに乗せることにこだわるのですかね。やはり、プロスペラの復讐対象にキャリバーンが含まれていて、いやがおうなしに意識を向けさせられるから、等特別な理由があるように思えてなりません。
さて、キャリバンは『テンペスト』の中で、魔女の息子でありプロスペローとミランダの父娘が流れ着いた島の先住民ということになっています。醜い容姿とミランダを犯そうとしたことから父娘に忌み嫌われ、父に脅されてこき使われています。
ナポリ王アロンゾ―(プロスペローの復讐相手)らが乗った船が難破し、島に漂着した際にはその乗組員だったステファノーとトリンキュローと手を組み、プロスペローに復讐を試みますがそれはすべてプロスペローの認識の範囲内。プロスペローは妖精エアリエルを仕向けることで彼らをこてんぱんにやっつけます。
徒党を組むトリンキュローの役目が「道化」とされていることからも、『テンペスト』の物語では笑われ役、一方的なやられ役として描かれるキャリバンですが、ヨーロッパによる一方的な植民地支配の縮図として解釈される向きもあるようです。
――スレッタはどう立ち回るのか
問題は、キャリバーンに乗ると思われるスレッタがどう立ち回るかです。『テンペスト』の物語に準じて展開を予想してみましょう。
4話放送時点で私が『水星の魔女』と『テンペスト』比較相関図を作成しました(https://kakuyomu.jp/users/yuno_05/news/16817330648892098361)が、この表に当てはめて考えるならば、スレッタは今まで従順に従っていたプロスペラに対し、キャリバーンで反旗を翻す。プロスペラはエアリアルを駆使してそれを鎮圧しようとする。これで終わってしまったらスレッタの主人公らしさがあまり出ないですよね。本作はここからひとひねり、いやふたひねりくらいねじ込んでくるのではないかと期待しています。キャリバーンは拡張パーメット空間でエアリアルと繋がり、エアリアル(エリクト)と遠隔で対話でき、それによって説得されたエリクトが計画を止めるとか。データストーム問題はニカたちの超絶メカニック技能である程度クリアして、低スコアであればスレッタでもリスクなく乗れるようになるとか。あるいはキャリバーンとスレッタが対話に成功し、エリクトと同様にデータストームとの完全な同調を可能にするか。
とにかく、ただエアリアルと戦う展開にはならないと思います。キャリバーンとスレッタがどんな動きを見せてくれるのか楽しみです。
◆エラン5号はどのように協力するのか
地球寮でのグストン、ベルメリア、スレッタらの話を聞いていたエラン(5号)は、ガンダムに乗らないことを条件に協力を持ちかけます。しかし、彼の存在意義はモビルスーツパイロットであり、今回必要とされるのもクワイエット・ゼロに立ち向かうパイロットでしょう。それが「ファラクトに乗らない」となると、どういった形でスレッタに協力できるのか想像もつきません。ニカのようにメカニック技能があるのならばデータストーム除去を手伝えるかもしれませんが、そんな地味な役回りではないでしょう。何しろこの作品は「ガンダム」ですから。ガンダムのパイロットの一人が、物語終盤にガンダムに乗らずにクライマックスに貢献する展開はちょっと考えにくいです。
よって、次話で何らかのやりとりがあって、結局エラン(5号)はファラクトに乗り戦場に出ることになるのではないでしょうか。パーメットスコアを上げさえしなければ死なないはずなので、それを条件に搭乗を飲むとか。とにかく、パイロット以外の彼の活躍は想像できないので、結局ファラクトには乗ると信じています。
◆憎しみに燃えるラウダの向かう先は
――グエルに死亡フラグが立っていて怖い
今回、ラストがシュバルゼッテと向き合い、呪詛を吐くラウダだったのが不気味ですね。兄とも連絡を取らず、ペトラの様子を見に行くこともせず、ただMSハンガーでミオリネへの恨みを募らせる。今までラウダのヘイトはスレッタに向かっていたはずなので、ここにきてミオリネに方向転換したのは少し意外でしたが、「空っぽな私たち」でスレッタに言葉を投げ掛けて以降、スレッタへのヘイトは落ち着いたのではないかと思われます。
元々ラウダがスレッタを恨んでいたのは兄を不当な技術(GUND-ARM)で打ち負かしたことにあるので、兄がスレッタに勝ったことでその恨みは消えているはずです。更にスレッタが自分と同様、何も持っていない「空っぽ」な存在であるとわかり、シンパシーすら感じている節があります。おまけにランブルリングの件でペトラが「ラウダを助けてくれた」という理由でスレッタに感謝していたので、ラウダも同じことを考えている可能性はあります。
それに対してミオリネは、「ホルダーが婚約者になる」というシステムの中枢に位置する張本人です。彼女がいたから決闘システムにグエルが君臨し、スレッタに一時その座を奪われ、最終的にミオリネの策略でグエルが婚約者となりました。しかしその結果ミオリネは地球での争いを止められず、グエルはシャディクと直接争うことになりました。そしてシャディクの策略を止めることができずに、学園での虐殺を招きペトラが瀕死の重傷を負いました。結局グエルはミオリネの言動や決闘システムに巻き込まれてばかり(そしてそこにメリットはない)という風にラウダには見えているのかもしれません。もっとも、グエル本人は合意の上での動きですし、ペトラの件に関しては完全に冤罪なのですが。
今後考えられることとしては、ラウダがシュバルゼッテを駆りミオリネを殺害しに向かう、そして止めに入ったグエルが代わりに討たれてしまうというシナリオでしょうか。大抵、正しくない方向にヘイトを向けたキャラは思いがけず大切な人を倒してしまうパターンが多いイメージなので、今回もそうなりそうで怖いです。グエルには生き残ってもらいたいのですが……
ともあれプロスペラ&エリクト(エアリアル)vsカテドラル&スレッタ&チュチュ&エラン(5号)の構図に、ジョーカーとしてラウダが紛れ込むという最終決戦の構図は見えてきました。このわかりやすい対決をどのように描き、どう決着をつけるのか。そして宙に浮いている㈱ガンダムはどうなるのか。残り少なくなってきましたが、だんだん物語がクライマックスに近づいてきている感があり楽しみです。
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