第19話 一番じゃないやり方 感想・ついに見えてきた復讐の一端

 完全に余談ですが、雑誌Newtypeの2023年3月号の読者アンケートプレゼントに当選しました。内容はNewtypeの表紙絵になっていた和服姿の地球寮ガールズたちのデザインのクオカードです。雑誌には「商品の発送は4月上旬予定」と書かれていたので、てっきり外れたとばかり思っていたのですが、嬉しいです。使わずに保存しておこうと思います。

 また、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』フェス ~アスティカシア全校集会~の先行一次にも当選しました! けっこう狭き門だったのではないかと思うので、こちらもまた嬉しいですね。本編が完結したら本感想置き場も閉じようと考えていたのですが、イベント参加レポなどを後日あげるかもしれません。


 立て続けに水星の魔女関連での当選が続いたので、これはもっと水星の魔女シリーズにコミットせよというお告げなのかもしれません。もとい、私は00からガンダムを見始めた身ですが、こうしてブログのような形で感想を世に発信したのは水星の魔女が初めてです。その時点でだいぶコミット率は高い気がしていますが、引き続きいち視聴者として楽しんでいきたいところですね。

 さて、そんな状況ですので今回の感想も気合を入れてまいりましょう。


◆なんだかんだでマルタンを再起させるセセリア

 ――結局セセリアは何がしたかったのか

 決闘委員会の控室でマルタンをこき使うセセリア。相変わらずいびり倒しているのかと思いきや、「そう言えばいいじゃん」としっかりアドバイスまでしてくれていましたね。その後もチクチクしたコメントをしてはいましたが、結果的にマルタンが地球寮のメンバーに自分がしたことを伝えるためのきっかけになりました。

 マルタンが悩みを聞いてもらっていた部屋が懺悔室なのかカウンセリングルームなのかは判然としませんが、どちらにせよ目的は達成されたわけです。あそこでセセリアが話を聞いていたのは趣味なのか、決闘委員会あるいはブリオン寮としての仕事なのか。改めて18話を思い返してみると、マルタンが話していた相手のハロは黄緑色だったのですよね。水星の魔女の世界のハロは基本的にすべてオレンジ色なので、黄緑ハロ=ロウジのハロ=ロウジないしセセリアが関わっているとあの時点で考えられたのだなと思いました。ただし、ロウジとセセリアは二人とも決闘委員会&ブリオン寮所属なので、この二人のどちらの役回りでこの仕事をしているのかはやはりわかりませんが。

 セセリアだけなら人の弱みを握るために、趣味でカウンセリングを聞いていると言われても納得がいきますが、ロウジが絡んでいるとなるとちゃんとした仕事であるようにも思います。セセリアとロウジの立場は対等で、セセリアが一方的にこき使っているようには見えませんし。結局彼女がマルタンの弱みを握って何がしたかったのかは謎のままです。現状、実は一番謎が多い(何を考えているのかわからない)キャラクターかもしれません。


◆グエルとミオリネ、シャディクの所業を知る

 ――素性の知れたシャディクとシャディクガールズ

 グエルがセドに帽子を届けにいったとき、同行したのがSPではなく責任者であるケナンジなのは少し驚きました(普通ならば、ミオリネの方にケナンジが憑くべきではないかと思った次第です)が、ケナンジがついていたことでシャディクの件が明るみに出た、という流れはうまいですね。

 そもそもケナンジはデリングに仕えているラジャンの直属の部下だから、ミオリネ達を護衛するために派遣されたという体です。しかし、ケナンジが所属するドミニコス隊はグラスレーの息が濃くかかっていたはずです。シャディクがいつかの回で「うちが一番出資していますから」的なことを言っていましたし、配備されているMSもグラスレー産のベギルペンデでしたし。つまり、ケナンジ以下ドミニコス隊のメンバーは、グラスレー社の事情に詳しいと考えられます。だからこそ、「プリンス=シャディク」というのを暴くことができたのでしょう。


 というわけで、シャディク及びシャディクガールズたちは、グラスレーのアーシアン育成プログラムに乗っかって「再教育」された人々だということになります。つまり彼らはアーシアンだということになりますが、それはザビーナが以前言及していましたね。となると、逆に地球寮で暮らすアーシアンたちはどういうルートで学園にはいれたのか謎です。皆スペックが高そうですし、全員が特待生のような扱いなのかなと思っていたのですが、どうでしょう。少なくとも育ちの良いアーシアン、というわけでもないでしょう(オジェロはお坊ちゃまと言われていますが、ヌーノは戦災孤児ですし)。また、シャディクの息がかかっているニカがなぜグラスレーではなく地球寮へ入学したのかも気になるところです。


 ところでなぜ、「イエル・オグル」=「プリンス」という名前になるのでしょうか。オグルはオーガ(人肉を食らう人形の怪物)を連想させますが、イエルはyellで何かと繋がる要素が思いつきません。今まで「プリンス」とは「グラスレー社の後継者」という意味だと思っていたので、ここは謎ですね。未登場のグラスレー社の創設者の名前がイエルとか、そういう可能性はありますが。イエル自体に何かの意味があるのかどうか、有識者の方のコメントをお待ちしております。


 ――グエルに、サリウス確保はできるのか

 さて、次の展開として気になってくるのはこれでしょう。グエルの性格的にシャディクに真っ向勝負を挑みそうですが、シャディクが応じる保障はありません。むしろ普段の彼ならひょうひょうと切り抜けて終わりでしょう。しかし今シャディクは「ミオリネを汚した」グエルに対して怒り心頭です。他方でグエルもシャディクには腹を立てています(父殺しの元凶なので当然ですね)。となると、この二人の間で決闘が発生する可能性がある気がしています。私が単純に見たいだけですが、ダリルバルデでミカエリスをフルボッコにするグエルが見たいです。

 あるいは、前回同様団体戦になれば、スレッタにも登場の目があるかもしれません。ジェターク寮の戦力はグエル・ラウダ・フェルシーの3人、地球寮(㈱ガンダム)の戦力はチュチュ、スレッタの2人です。このままだとグラスレー6vsジェターク・地球寮5になりますが後者はホルダー経験者が二人います。そのアドバンテージを加味すれば6vs5の団体戦でも成り立つ気がします。現在エアリアルを奪われているスレッタがシュバルゼッテに乗る文脈もつくれそうですし。ともかくグエルにはシャディクを一泡吹かせる活躍を期待しております。


◆ルブリスウル/ソーンの出自はオックス・アース

 ――オックス・アースを復活させた議会連合の理事会とは何者か

 ルブリスという名前からして、ルブリスウル/ソーンは量産型ルブリスをベースに作られていることは明らかでしたが、今回その生産ルートがはっきりしました。ドミニコス隊を筆頭としたベネリットグループに潰されたはずのオックス・アース社が、議会連合の理事会の手によって密かに復活させられていた。そして、その資金援助をもとにこの二機を作ったという流れです。これで、ソフィとノレアがオックス・アース社出身で、“フォルドの夜明けに「派遣された」”という公式HPの書き方にも納得がいきます。

 むろん、この二人はフォルドの夜明けと行動を共にしてはいましたが、シャディクの手引きでアスティカシアに編入したりとシャディクの指示で動いている節があります。ということは、議会連合――オックス・アース社――シャディク陣営は繋がっているとみるのが自然でしょう。議会連合の理事会とシャディクは、ベネリットグループを解体したいという思惑で一致しています。故に両者は協力し合い、ウルとソーンを作りテロ工作に用いたのでしょう。

 

 ――プロスペラの復讐対象はオックス・アースなのか?

 ルブリスウル/ソーンの名前が出たとき、一瞬プロスペラ陣営が開発に一枚噛んでいるのではないかと疑いたくなりましたが、今回その疑念は氷解しました。むしろプロスペラはウル/ソーンの存在を嫌悪しており、それらを生み出したオックス・アース社を憎んでいることが明らかになりました。オックス・アースといえばプロスペラ(エルノラ)の夫のナディムが所属していた会社ですし、そこに対して憎しみの情を持っていたとは予想外でした。

 そしてエアリアルのジャミング機能でアーシアンの移動砲台に攻撃させて、非武装(大嘘)という建前でその場を離れ、オックス・アース社のGUND-ARM開発現場を襲撃。その音に対して攻撃を受けたと勘違いしたスペーシアン・アーシアン双方が攻撃を開始することで現場が火の海に。結果ミオリネは武力でアーシアン勢力を制圧したこととなり、ベネリットグループ内での支持を高める(エラン(オリジナル)談)。オックス・アースの壊滅とミオリネを総裁選へと押し上げ、「血濡れた娘」に仕立てる。両方の目的をいっぺんに成し遂げる辺り、やはりプロスペラは策士ですね。

 しかしプロスペラの復讐がこれで終わるとは思えません。ミオリネに対する復讐は、彼女をスレッタと婚約→婚約破棄状態にする&父親と同じ人殺しに仕立てることで自責の念に駆らせるが主眼だと思われます。そしてオックス・アース社はGUNDの理念と異なる方向性にGUND-ARMを使った咎で壊滅させる。更に復讐対象になりそうなのは自らを今の立場に追いやったデリングと、オックス・アース社を陰で支配していた議会連合の理事会。更にはそのオックス・アース社で作られたルブリスソーン及びそのパイロットのノレア、それを匿っているシャディクも含まれるのでしょうか。

 となると、シャディクと対立している立場のミオリネ――グエルラインには引き続き協力姿勢を見せるのですかね。しかし、戦いの端緒を開いたのがプロスペラであることがばれたら、どう申し開きをするつもりなのか。ケナンジがその場を離れているので事実の究明はできないのかもしれませんが、ミオリネのミスとしてはプロスペラをエアリアルのパイロットとして連れてきてしまったことでしょうね。まだ兄に忠実なラウダ辺りを乗せていればこんな事態は起こらなかったはずですが(そもそもエアリアルがラウダを受け入れるのか、オックス・アース社が存続した場合ミオリネが総裁になったとしても、議会連合から突き上げを食らってベネリットグループは危機に瀕するなど別の問題はあります)。

 とにかくプロスペラとしてはミオリネを隠れ蓑にしながら己の復讐を達成していくスタンスでしょうから、今後もミオリネは利用される立場にあるのでしょう。利用対象がスレッタからミオリネに変わったという印象ですね。そしてミオリネはスレッタを守るため、プロスペラの復讐対象が自分の父であると知ってしまったため拒絶できない。この状況を変えることはできるのでしょうか。


 ――ゴドイ(プロスペラの護衛)は何者か

 今回、プロスペラとは別口で動いていたゴドイですが、先ず冒頭部ではプロスペラと通信して、何やら計画を進めている様子でした。そして終盤ではベルメリアを懐柔したフェンを射殺。プロスペラの復讐内容をどこまで知っているのか、どういう意図で動いているのかが見えにくい不気味な存在です。

 そもそも、宇宙議会連合でもフェンたち「理事会とベネリットグループの衝突を避けたい」派閥とプロスペラたちは歩調を合わせることもできたのではないでしょうか。プロスペラが憎んでいるのは理事会と、それらが支援していたオックス・アース社であり議会連合そのものではないはずですから。なぜ、ゴドイはフェンを射殺したのでしょうか。

 考えられることとしては、00風にいうと「あなたは知りすぎた」という点でしょうか。プロスペラが考えるクワイエット・ゼロを連合側に知られるわけにはいかない。それで口封じをした。それにしてはベルメリアとお付きの男性を取り逃がしていますし、対応が甘い気がしますが。連合側にクワイエット・ゼロの存在が知られたことでプロスペラの計画がどうなっていくのかは気になるところです。


◆シャディクとペイル社はどこまで互いの腹の内を知っているのか

 今回地味に気になったのは、シャディクとペイルCEOがそろっている場にエラン(オリジナル)がいたことです。エラン(5号)はシャディクが匿っているわけですから、シャディクはエランに替え玉がいることを知っているわけです。これはペイル社としては隠しておきたい事実なはず。しかしエラン(オリジナル)が平然としていたのはシャディクが5号を隠しているのをペイル社側が知らないか、内情はばれていると開き直っているのかのどちらかですね。

 仮に後者だとすれば、5号はシャディクの交渉材料になる(エランが2人いると公表すれば大混乱になる)ためキープしているという見方もとれます。5号はペイル社に対して、ノレアはオックス・アース社および議会連合理事会に対して、ニカはフォルドの夜明けに対しての交渉材料となりうる駒なのでしょうね。そうなるとニカの立場が弱い気がしますが、彼女が外に出ればテロほう助罪で捕まってしまうので、ザビーナの温情で匿ってもらっているのかもしれませんね。


◆「一番じゃないやり方」に気づくスレッタ

 ――スレッタはエリクトの話の何に気づいたのか

 今回の話でとりわけ気になるのは、プロスペラの復讐にスレッタが今後どういうスタンスで臨むのかというところです。今回ミオリネが交渉に赴いた会場近くで戦争行為が発生したニュースを目にしたスレッタが、エリクトが言っていた「君はすがっちゃいけない」という発言を理解したかのようなそぶりをみせました。しかし、今までスレッタはあまり頭がよくない描写をされていました(4話)し、自分の頭でものを考えない性格でした。ここで突然エリクトの意図を理解するというのは「スレッタはそこまで頭の回転が速かっただろうか?」という意味で個人的には少々違和感がありました。

 しかし、そのためのマルタン――セセリアのエピソードなのですよね。エリクト(エアリアル)と母親にとって一番のやり方はスレッタをエアリアルに乗せて、暴動を起こさないようにすることだった。しかしそうならないことを二人は見越していたから、スレッタをあえて現場から遠ざけた。スレッタはこんなふうに理解したのではないのでしょうか。本当ならばスレッタにその辺りの経緯を詳しく説明しておくべきだったものの、当のスレッタが話しても理解できないだろうと判断して詳細は伏せていた。

 スレッタが持っている情報から推測できる内容はせいぜいこの程度だったのではないかと思います。そこにプロスペラの母としての思いやりを感じていて、彼女の復讐心までには気づいていないのではないかと思うのですが、どうでしょう。


 今後肝心になるのは、正誤はともかくプロスペラとエリクトが自分を突き放したことには理由があると気づいたスレッタが何を考え、どう動くかになるでしょう。直近で予測されるのはシャディクとグエルの衝突に駆り出されることですが、そのほかにも母の復讐に対して何らかのアプローチをとっていくものと思われます。ようやく、彼女の主人公らしいムーブが見られると思うと楽しみです。



◆あと何話?

 放送年、話数が近い作品でいうとGのレコンギスタは全26話でした。水星の魔女はDVDが全8巻、かつ第1クールが4巻とされています。第1クールは12話だったので、単純に倍すると24話、つまり残りは5話ということになります。現在残っている謎(解決すべき問題)としては

・プロスペラの復讐の全貌

・ミオリネはプロスペラの呪縛から解放されるのか、総裁になれるのか

・シャディクの陰謀は達成されるのか、グエルが解決できるのか

・ノレア、エラン(5号)、ニカの処遇は如何に

・スレッタは物語の本筋にどう切り込むのか

・議会連合の全貌は如何に、こちらも本筋にどうかかわってくるのか

・クワイエット・ゼロが実現した時、世界はどうなるのか


 などなど、たくさんあります。果たして5話で畳めるボリュームなのかといわれると首を傾げてしまいますが、水星の魔女が2クール放送であることはかなり前から知らされていましたし、製作陣はきちんと畳む方向性で考えているのでしょうね。もっとも、00のようにファーストシーズンの全25話を放送後に、セカンドシーズンの製作が発表されるパターンもあったので油断はできませんが。しかしその場合でも、上述した問題はシーズン2で解決するつもりでしょう。今後も怒涛の展開が続くと思われますので、目が離せません。

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