第18話 空っぽな私たち 感想・代用品たちの行く末は

 17話ののミオリネさんに突き放されたENDからの、プロスペラさんナレーションによる総集編。人の心はないのかと問いたくなりますが、プロスペラ……もとい能登さんいい声ですね。もし自分が能登さんくらいの年頃の女性であれば、ああいう声になりたいです。個人的には容姿が優れている(いわゆる美男美女)より、声がいいほうが得することが多い気がしています。前者で苦労している知り合いが何人かいるので。その点アニメを見ていると、いい声の役者さんをたくさん知ることができてよいですね。もっとも私はガンダム+αしか見ていないので、声優さんにもあまり詳しくないのですが。


 今回も色々と話が動きましたが、全体的に大人の世界に足を踏み入れていく子どもたちと、その流れから置き去りにされているスレッタ、という構図が鮮明になっているような気がします。それでも支えてくれる地球寮の仲間たち(特にチュチュ)を見ているとほっとします。というわけでチュチュの話から順に参りましょう。



◆やっぱりチュチュ先輩はイケメン

 ――ラウダには言い返し、スレッタにはミオリネに会いに行く提案をする

 いやーやっぱりチュチュはかっこいいですね。4話の鉄拳制裁といい、9話のラストシューティングといい、痺れるシーンが多いチュチュですが、今回は空元気なスレッタの調子を見抜き、ミオリネのもとにカチコm……いや対話に行こうと提案してくれました。通りすがりのラウダの放った「空っぽの水星女」発言には何も言い返さないスレッタの代わりに食って掛かってくれたり、ちゃんと地球寮の仲間と共に(スレッタをひとりぼっちにしないで)ミオリネがいるところまで連れていってくれたりと、色々頼もしい存在です。

 アリヤにからかわれたチュチュは「ニカねえならどうするかなって」と言っていましたが、フォルドの夜明けとのつながりがあるニカがそこまで精力的に動いてくれたかは怪しいところです。ニカを引き合いに出しつつも、この行動力はチュチュならではのものだと感じました。

 また、ラウダとフェルシーがランブルリングの件でちゃんとチュチュにお礼を言ってくれたのはよかったですね。チュチュは「今関係ないだろ」と地団太を踏んでいましたが、やはりラウダが個人的に思うところがあるのはスレッタだけで、地球寮に対しては敵愾心を持っていないことがわかりました。この調子であれば、そのうち地球寮への嫌がらせも彼らが手を回して止めてくれるかもしれません。


◆ラウダが立ち聞きしていた寮生たちの会話はフラグになりえるのか

 ――「お前 なんも持ってないもんな」の意味

 タイトルになっている「空っぽの私たち」ですが、主な意味合いはスレッタと後述する“カブンの子”を指すのでしょう。しかし、空っぽに該当しそうな登場人物は他にも何人かいます。ここで揶揄されていたラウダもそのひとりです。彼は身も蓋もない言い方をするとグエルのスペアで、兄に何かない限りはサポートに徹するだけの立場になります。本人はそれを是とする言動を取ってきていますが、立場としてはエリクトのスペアに過ぎないスレッタと近い立場と言えるかもしれません。彼が寮生の言葉を立ち聞きしていたのには何らかの意味があるのか。例えば「不吉な代用品」を意味するシュバルゼッテに乗るフラグ、など。シュバルゼッテは外見からしてジェターク社製(=形部メカ)でしたが、今回正式にそれが明かされたので、ジェターク寮所属の彼が乗る可能性は十分に考えられます。ただし、今のところ動機が薄いのでミスリードの線も否めません。

 得物が大型武器である、ビット兵器がなさそうな辺りラウダに向いてそうではありますし、ヴィムがグエルに遺したMSがダリルバルデで、ラウダに遺したMSがシュバルゼッテという形だときれいにおさまりますが。しかしヴィムはGUND-ARMの呪いを知っているはずで、データストームの人体流入問題を解決できていないであろうシュバルゼッテに愛息を乗せる気だったのかは定かではありません。結局、シュバルゼッテのパイロットはグエルとミオリネがどう判断するか、にかかってきそうです。まだ左腕が完成していない状態のようでしたので、出てくるのはもう少し先ですかね。誰が乗り、どんな文脈で登場するのか楽しみです。


◆ようやく明かされつつあるエラン(オリジナル)の正体

 ――ペイルAIが選んだ最適解とは

 今まで顔も名前も登場しつつ、正体がよくわかっていなかったエラン(オリジナル)。今回エラン(5号)がペラペラしゃべったことにより経緯が見えてきましたね。曰く、ペイル社は代表をペイルAIで選出し、それで選ばれたのがエラン(オリジナル)。ただし彼はMS操縦能力が低く、かつGUND-ARMの呪いで失うわけにはいかないため花嫁争奪戦には替え玉である強化人士を送り込んでいた、という流れ。これでCEOたちが「エラン様」と敬称で呼んでいたことも納得がいきます。要するに次期CEO様というわけですね。それが今は替え玉が動いている状況だから、表舞台に立つわけにはいかないという感じでしょうか。

 どうでもいい話ですが、ペイル社CEOが代々ペイルAIで選出されているということは、あの4人のおばさま方もそういった経緯で選ばれたのでしょうかね。となると彼女らも優秀なMSパイロットということになります。昔はシャディクガールズのように、団体戦で完璧な連携を見せるパイロットとしてブイブイ言わせていたとか……ちょっとだけ見てみたい気もしますが、需要がなさそうなのでこの話はこのくらいにしておきます。

 とはいえ、選んだのはペイルAIだとしても、その中からエラン(オリジナル)を擁立すると決めたのは今のCEOたちなのでしょう。MS操縦技術は強化人士で補えるから、それ以外のスペックが高い人を選ぶという企業的判断を下したものと思われます。あるいはそもそもペイルAIに、MS操縦技術を度外視して選んでくれとプログラミングしておいたのか。

 ともあれ彼は今回総裁選にも出ないようですし、強化人士5号が幽閉されていつ出てくるかわからない以上、表舞台に立つのも難しいでしょうから今回はあまり話の筋には絡んでこなさそうですね。彼がもうちょっと舞台をひっかきまわす役回りを演じてくれたら面白いのですが、その仕事は現時点で5号が担っていると考えたほうがよさそうです。


 ――GUND-ARMの呪いを知ったニカはどう動くのか

 さて、エラン(5号)のぶっちゃけパートで気になるのは、ペイル社の実情を知ったニカの今後の動きです。グラスレーに拘束されている以上、今は自由に動けないでしょうがミオリネはフェンの力を使ってニカを探している状態です。フェンも動き始めていますし、そのうち見つけられて交渉により解放される可能性はありそうです。何より彼女はPVなどで名前が出ているメインキャラなので、このまま拘束されて終わり……という結末ではないはず。もし解放されたら、ミオリネに匿われてミオリネ――グエルのラインに協力する形となりそうです。

そうなってくると、ニカの次の仕事はエアリアルとシュバルゼッテという二機のGUND-ARMの修理でしょうか。まだファラクトが㈱ガンダムの傘下という扱いなのだとしたら三機になりますね。「ファラクトに乗ると死ぬ」という情報を得たニカが、どういう態度でメンテナンスに臨むのか。

 ニカは優れたメカニック技術を持つとはいえ、一介の学生に過ぎません。イアン(00)やハッパ(Gレコ)のようなチート級の能力をもつメカニックマンではないので、エアリアルと他二機を見比べて人体に負荷がかからないGUND-ARMを完成させるというのはやや理想論にすぎない気もします。他方、ガンダムシリーズに出てくるメカニックマンは上述した二人のようにチート級の腕前を持ち、ガンダムの超越的な能力を保証する役割を担わされているケースが多いので案外、彼女の力でGUND-ARMの呪いを克服する展開はありえるかもしれません。

 少なくとも、ミオリネはシーズン1の終盤で重要な仕事をニカに任せようとしていましたし、彼女に期待している部分は大きいと思われます。エラン(5号)から真実を知ったニカがこれからどう動くのか楽しみです。


◆フェンに拘束されそうなベルメリア

 ――78番ハンガーの意味、そこにあるのは……

 移動中のベルメリアに近づくフェンたち。彼女らはエアリアルの開発経路に興味を抱いているのでしたね。ミオリネでさえもその辺りは詳しくないでしょうから、技術開発担当者を攻めることにしたのでしょう。エラン(5号)には拒絶され、プロスペラにはゆすられている彼女は不遇としか言いようがありませんが、逆に「自分の考えを貫かず流されるとこうなる」という見せ方をしているような気もします。水星の魔女は「自分の意志を貫き、自分の意志で歩くことの大切さ」を示している作品だと感じるので。

 さて、プラント・クエタの78番ハンガーといえば12話でエアリアルが格納されていた場所ですが、そこはエアリアル専用なんでしょうかね。ハンガーが何番まであるのかわかりませんが、数字の大きさからして端っこにありそうな気がします。そんな辺鄙な場所で、なぜエアリアルは(おそらく)ベネリットグループの資金力を受けて修理ができるのか。これまでの流れからして、デリングのポケットマネーが流れているのではないかという感じがしていますが、もしかしたらもっと闇の深い事情が隠されているのかもしれません。実は地球にいるオックスアースの残党から資金と人員をつぎ込んでいるとか。そうなるとエアリアルとルブリスウル・ソーンのつながりも気になるところですが。ウルとソーンは私の予想では量産型ルブリスをベースに作られているため、ガンダムルブリス――エアリアルの系統とは別だと考えていますが、どちらもオックスアース関係者が開発に関わっているのであれば、姉妹機だとも考えられます。残って幽閉されているノレアですが、今後エアリアルとどう対峙していくのか、気になります。

 そしてベルメリアはフェンにどこまで情報を掴まれてしまうのか。今のところ宇宙議会連合は話の表舞台に出てきていませんが、彼女らの動きは総裁選に影響を及ぼす可能性がありますし、注目ですね。


◆唐突に出てきたセセリア

 今回のエピソードで最も唐突感があったのが、一人留守番を任されたマルタンのもとへ突然現れたセセリアです。ハロに自分の行動は悪くなかったはずだと弁明しているマルタン。あの部屋はそもそも何なのでしょうね。ネットではネタで懺悔室と書かれていましたが、カウンセリングルーム的なものなんですかね。だとするとセセリアが話を聞いていたのが謎ですが。彼女に相談事を持ち込んだら解決どころか炎上しそうです。実際、マルタンに対して「あんた、とんだ裏切り者だよ」という傷口に塩を塗るような発言をしていますし。

 けっこう登場頻度の高いセセリアですが、実はブリオン寮所属、決闘委員会メンバー、経営戦略科の2年生であること以外は何もわかっていません。煽りキャラゆえインパクトに残るものの、なぜ経営戦略科でありながらカースト上位層が属する決闘委員会に入れているのか、ブリオン寮の中でどういう立ち位置なのかなどは不明です。

 そもそもブリオン寮というのはデミトレーナーを開発しているブリオン社の名を冠した寮で、7話のインキュベーションパーティーの立ち位置からしてもベネリットグループの中では、御三家に次ぐ四番目の地位を持つ会社なのだと思われます。セセリアはもしかしたらそこのご令嬢で、御三家には及ばないものの普通の生徒とは比べ物にならないコネクションや、学園への影響力を持っているのかもしれません。だとしたら決闘委員会に入っていることも、今回のマルタンの懺悔? システムに介入できたこともある程度説明がつきます。マルタンをいじりに来た理由は不明ですが。

 スレッタとの絡みは少ないですし、セセリア自身はMSには乗れないので、今後物語の本筋に絡んでくるとは考えにくいですが、学園側のゲームチェンジャーとして活躍してくれるのかもしれません。


◆エアリアル、パーメットスコア8に到達

 ――スレッタ+ガンビットたちはエリクトの「リプリチャイルド」であり「カヴンの子」

 今回、エアリアルがパーメットスコア8に到達したことが判明しました。前回のグエル戦がきっかけになったことは間違いありませんが、決闘中に8になったのか、決闘後なのかは定かではありません。ともあれ映像描写を見る限り、エアリアルの力(データストームの力?)によって周囲の風景を書き換えて、エリクトを存在させることのできる時空を生み出すことができる模様です。そして、エリクトとうり二つの子どもたちがわらわらと現れ(後で魔女ラジで、スレッタ役の市ノ瀬さんが「ひとり13役」と述べていたことからスレッタ+エリクト+11人いたことになります)、スレッタに自分たちのことをエリクトの「リプリチャイルド」であり「カヴンの子」であると説明しました。


 リプリチャイルドは、「represent + child」の造語かと思われます。意訳するのであれば「エリクト役を担う子ども」といったところでしょうか。representには複数の意味があり、「似せる」や「(役割を)務める」「同等である」などが主だったものとなります。本来のエリクトにはできたGUND-ARMとの同調とガンビットの操縦。それを代わりに務めることからこの名がついたものと思われます。

 しかし、スレッタと他の「リプリチャイルド」は、実体の有無という点で異なります。スレッタだけが実態のある人間で、それ以外のリプリチャイルドはエリクトと同様、データストームの中にのみ存在します。これが何を意味するのか。プロスペラはエリクトと同じ生体データを複製してガンビットに宿らせて、スレッタだけはパイロット要員として人間に植え付けたのか。スレッタは容姿がエリクトとうり二つですからこうなってくるとクローンの可能性が高いですが、生まれた経緯としては00のマリーのように、別人の身体にエリクトの人格(というよりデータストームに存在する生体データの複製)を植え付けられた存在という可能性もあり得るかと。そうなると今のスレッタとは別の人格が顔を出す可能性もあり得ますね。ただし、スレッタとエリクトの性格はかなり違うので、やはりクローンなのでしょうか。生身の身体をもつからこそ、他のリプリチャイルドから拒まれる(=復讐に加担しなくてよい存在と見なされる)のは、スレッタにとっては辛いことですね。


 救助用信号を持ってスレッタのもとを訪れ、学校に戻るよう指示してエアリアルに乗り去っていくプロスペラを見て、スレッタに対する愛情を感じる向きもあるようですが、私は完全に毒親のムーブにしか見えませんでした。結局のところ、自分の目的(エリクトの復活および自分の仲間を殺めた者たちへの復讐)を達成するための駒として育て、不要になったら一人で生きる術を教えもせずに学園へ放置したわけですから。本当に愛情ある親であれば、エアリアルなしで生きる術を身につけさせるべきでしょう。それをせず放り出されてしまったスレッタは、なすすべもなく、今度こそ「空っぽ」の存在になってしまいました。


 カヴンの子は、恐らく英訳すると「coven's child」、直訳すると魔女団の子どもたちという意味になります。GUND-ARMの製作者を魔女と定義するならば、彼女らの子どもたちということでしょう。エリクトのコピーを誰が、どうやって作ったのか(主導したのはプロスペラにしても、確実に彼女以外の手と資金が入っているはずです。フェンもその辺りを探っているのでしょう)は不明です。オックスアースの生き残りか、あるいはベルメリアのようにヴァナディース機関から逃げ延びた人たちがいるのか、はたまたデリングの手の者か。

 資金力的に言えば最後の選択肢が最も現実味がありますが、デリングの考える「クワイエット・ゼロ」にパーメットスコア8は不要とベルメリアは言っていました。8になる必要性があるのはエリクトを復活させるためで、そこにデリングは関与していないことになります。つまりデリングはエリクト周りの事情は知らないままプロスペラに協力している可能性が高いです。

 となるとまだ出てきていない第三の協力者がいるのかもしれませんね。この辺りをフェンが追求して明らかにしてくれることを期待しています。


 「空っぽ」になったスレッタは今後どうなってしまうのか、立場は違えどある意味で「空っぽ」といえるラウダやエラン(5号)の行く末は。色々な人たちの今後が気になる回でした。

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