第10話 巡る思い 感想・スレッタによって変えられた人々
「水星の魔女」ではMS戦闘回はだいたい2回に1回のペースでしたが、今回は2話連続でMSが登場しましたね。しかも、殺人を伴わない決闘ではなく、人が死ぬ可能性のあるテロ行為。次回が非常に気になる引きでしたが、一週間空くとはなかなかじれったいですね。先ずは今回の感想に参りましょう。
◆御三家の子息たちの動き
スレッタの言動によって、御三家の子息たちは皆変化を余儀なくされていました。これまでは各話で一人ずつピックアップされて描かれていましたが、今回は三人の様子がそれぞれしっかり深堀されていましたね。それだけ、スレッタが与えた影響が大きいのだと感じさせられました。
それぞれを一言で表現するならば、「変わらない(変われない)シャディク」「替えられた(交代させられた)エラン」「変わったグエル」となるでしょうか。
――底が見えないシャディク
前回の決闘でシャディクが負けたことにより、サリウスから何かしらのペナルティが与えられるかと危惧していましたがそれは無かったようでちょっと安心しました。むしろサリウスはシャディクが決闘に負けた際のプランBとして、シャディクを責めるのではなくカテドラルにGUND-ARMの存在を看過していることに対し問いただしていました。ヴィム―グエル親子のように決闘に重きをおいていないが故の対応というのと、サリウスがシャディクを信用しているということが感じられました。
サリウスから(ヴィムの手による)デリング暗殺計画の存在を示されたシャディクは、それに乗ると決めました。サリウスは「失敗したらグラスレー内での地位が揺らぐ」と懸念していたことから、ヴィムの提案に乗るかどうかはまだ決めかねていたように思われます。シャディクの反応次第で対応を変えるつもりだった感があるので、やはりシャディクは信頼されていますね。更に、話し合いの場にはシャディクガールズ5人衆も同席していたので、彼女らも同様に信頼されているといえるでしょう。総裁(学園の生徒からすれば理事長)暗殺計画が外に漏れたら、いくらグラスレーのトップとはいえ立場は危うくなるわけですから。彼女らのためにベギルペンデを送っている点も含め、シャディクガールズの存在はサリウスも認知していて、かつそれなりの信を置いている模様です。
デリング暗殺を決めたシャディクは、地球のテロ組織? と思しき「フォルドの夜明け」と連絡を取り、デリングがいるプラント・クエタへの襲撃を依頼します。この際ニカが仲介していたことから、9話でシャディクが言っていた「連絡係」の意味は「フォルドの夜明け」とシャディクとの間の連絡係だということが判明しました。ここで気になるのは、何故地球のテロ組織とシャディクの間に繋がりがあるかということです。
色々な可能性が考えられますが、シャディクが実は地球出身者(アーシアン)で、グラスレーの孤児院に引き取られる前にフォルドの夜明けと接点があった。あるいはGUND-ARMの兵器としての可能性を見出し、他にGUND-ARMを開発している組織がないか調べている段階でこの組織の存在にたどり着いた、辺りが無難な想定でしょうか。少なくとも義父のサリウスはGUND-ARM否定派なので、グラスレーが密かに囲っている組織とは考えにくく、シャディクの個人的な伝手がある組織だと思った方がよさそうです。
いずれにせよ、自らの手を汚さず配下の者に指示を出し、自分は後ろからそれを見届けるというやり口はいかにも彼らしいですね。よくいえば精神年齢が高く、悪くいえば気概がない。それゆえにミオリネを手に入れることができなかったわけですが。彼は今までこうした立ち回りで生き抜いてきたので、今更その在り様を変えることはできないということなのでしょう。
余談ですが、温室前でスレッタと話している際に、「すごいな、キミは」と呟いているシーンでは自分の思うがままに進み、結果としてミオリネもホルダーの地位も手に入れている彼女のことを羨ましく思いつつ、自分にはできないと諦めているように感じられました。
――エラン(強化人士5号)の登場
いつ出るのだろうかと思っていましたが、エラン(強化人士4号)の処分から4話もかかりましたね。服装やピアスなども若干変わり、あれだけ性格が変われば替え玉を疑われるような気もしますが、常識的には使い捨ての駒として身代わり人形をさせられているとは中々考えません。ゆえにスレッタも「どうしたんだろう」と訝しんではいましたが、全くの別人という考えには思い至らない様子でしたね。
ミオリネはGUND-ARMのパイロットとして㈱ガンダムにエランを雇ったと言っていましたが、彼のMS操縦技術はどうなんでしょうね。今回のエラン(強化人士5号)を選んだ理由として、ニューゲンCEOは性格の悪さを挙げていましたが、恐らく4号の選定理由はMS操縦能力の高さだったのでしょう。4号は適当なタイミングを見計らってGUND-ARMを投入し、ホルダーの座を奪うための存在だったわけですから。しかし5号はもう決闘要員ではなく、㈱ガンダム内でスレッタとの距離を詰め、隙を見てエアリアルを奪う役割を担うはずです。身も蓋もない言い方をすればハニートラップ要因ですね。強化人士ゆえにGUND-ARMを操縦することはできるのでしょうが、その能力は4号より低いと予想されるのですが実際はどうなのでしょう。
スレッタと話すシーンで、「君が変えたんだ」というシーンはぞっとしましたね。恐らくスレッタは「君(スレッタ)と関わったことで性格が変わったんだ」という意味に取ったのでしょうが、4号の末路を知っている我々視聴者からすれば、スレッタが決闘で勝ったことにより、4号が処分された結果「エラン」という存在自体が交代させられたという意味だと解釈できるわけです。
それにしても、コストも人員もかかるであろう強化人士をわざわざ用意させているオリジナルエランは何者なのでしょうね。CEOたちが敬語で話すくらいなので、ペイル社内での地位は高そうですが7話のインキュベーションパーティーでも、「ファラクトのパイロット」としての紹介に留まっていました。単にそれだけの存在ではなさそうなので、彼がどういう立ち位置の人間なのかは気になるところです。
――グエル、どうしたんだ?
さて、色々な意味でおどろおどろしい前二人に比べ、会社のしがらみから逃れのびのびとしているのがボブ……いやグエルです。偽名を使っている点、ベネリットグループの名前が出た際に「俺には関係のないところです」と答えている点、ラウダが行き先を知らない点などから、ヴィムが電話で命令していた子会社への出向ではなく、自らの意志で学園を出てバイトをしているものと思われます。
親の後ろ盾も、学園という安定した環境も失った場合、自ら食べていける環境が必要と判断した上での住み込みバイトをするという判断なのでしょうが、かなり体力を使うであろう肉体労働系の職場を選んだのは謎ですね。単純に履歴書の偽装がばれにくいからでしょうか。それにしても寮を追い出された際のテント生活といい、何不自由なく育てられたと思しき御曹司にしては肝が据わっているというか、適応能力が高いですね。仕事もいやいややっている風ではなかったので、案外大企業の御曹司をやっているときよりもやりがいを感じているのかもしれません。
しかし、彼が乗る輸送船は、シャディクの思惑によりフォルドの夜明けが有するガンダム二機にジャックされてしまいました。気になるのは「輸送船で何を運んでいるのか」ですね。行き先のプラント・クエタはベネリットグループの整備工場らしいので、MSが搭載されている可能性は十分にあり得ます。次話以降、船の仲間を守るためにグエルがMSに乗って戦う展開があるのか、期待ですね。状況を打開するために格納庫を見て回っていたら、たまたまそこにダリルバルデが……! という流れがあったら完全にガンダムユニコーンの1話なので、主人公感増し増しですが。
ともあれ、グエルが親の指示に背いて出奔したのは、スレッタの諸々の発言が影響しているような気がします。スレッタからの決闘の協力依頼を断った際に言われた「お父さん、大事ですよね」の言葉、そして「逃げたらひとつ、進めばふたつ」というメッセージ。父の言いつけに背いているという意味でグエルは逃げているようにも見えますが、自分の意志で進む道を選んでいるので、本人からすれば「進めばふたつ」の考えで動いているように思えます。
結果として、彼が現状で最も、プロスペラの思惑の外で動いている存在なので今後スレッタにどう影響を与えていくのか、プロスペラの復讐を止めるキーパーソンになりえるのか注目です。
◆フォルドの夜明けの襲撃
アーシアンの組織、「フォルドの夜明け」がボブ……グエルの乗る輸送船を襲ったところで話が終わりました。彼らが依頼されていたのはデリングの襲撃だったはずなのに、なぜ輸送船を攻撃しているのか訝しみましたが、恐らくこれは襲撃の条件として提示していた「移動手段の確保」なのでしょう。輸送船をジャックすることでプラント・クエタまでの足を確保し、現場に到着後GUND-ARMで以てデリングを斃すという計画だと思われます。たまたまその船にグエルが乗り込んでいたことをシャディクが把握していたのかはわかりませんが、知っていたとしても彼の提案にグエルが乗ってこなかった時点で、切り捨てるのもやむなしと考えているかもしれません。
ところで、フォルドの夜明けとはどういった組織なのでしょうか。
フォルドは、シンプルに英語だとするとfold=折る・折りたたむ・収納するという意味になります。これとアーシアンの組織という性質を重ね合わせて考えると、「スペーシアンたちに抑圧され、地球に押し込められた(=fold)自分たちの解放を目指す」組織であると予想できます。アーシアンの地位向上を目指した政治結社、あるいはテロほう助団体という雰囲気がありますね。
また気になるのは、組織の構成員二人が乗っていたガンダムが「ルブリス」の名を冠している点。ルブリスのパイロットはエルノア、もといプロスペラだったので、彼女との関連性を疑いたくなりますね。『ゆりかごの星』でもプロスペラが地球圏と宇宙を行ったり来たりしていると書かれていたので、地球圏に行っていた用事はこの二機の開発か? と疑いたくなってしまいます。
その場合、プロスペラはフォルドの夜明けが巡り巡ってデリングを襲撃するところまで読んでいたと思われます。一体彼女は何をどこまで想定して動いているのか。プロスペラがデリングを差し置いて、OP映像のラスボスポジションに位置しているのも納得です。
降って湧いたデリング暗殺計画。しかしその場にはプロスペラ・スレッタ・ミオリネ・ボブ(グエル)もおり誰が犠牲になるか、予断を許さない状況です。次話以降の展開が気になるところですが、まさかの一週お休み……! ファンアートや他の方の考察などを読んで、続きを待ちたいと思います。
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