第8話 彼らの採択 感想・ 物語がついにprologueと繋がる

 バックは強いが学内での仲間は少ないミオリネ。スレッタが所属する地球寮に押しかけて、強引に会社設立に巻き込んでいきます。案外乗り気な女性陣と、やや腰が引けている男性陣。ひとりひとりの考え方が微妙に異なるのが興味深かったですね。次回はシャディク回になりそうなので、今回ひたすら根回しに徹していた彼の動きから見ていきましょう。


◆動き出すシャディク

 ――GUND-ARMに価値を見出すも、方向性が異なる

 ミオリネとの会話内容から、シャディクはGUND-ARMに兵器としての価値を見出しているようでした。ベネリット・グループの硬直した軍需産業を盛り返すべく、カテドラルの(GUND-ARM廃棄の)協定関係なく欲しがる人に売りたいと考えている模様でしたね。これは終盤に打ち出された、ミオリネたち㈱ガンダムの思想とは相容れません。ゆえに校則を書き換えてまで、ミオリネの計画を阻止しようとしているのでしょう。

 シャディクはミオリネの経営戦略能力を高く買っているようなので、できれば自分が会社を引き取りつつも、彼女とは共同で事業に当たりたいと考えていそうです。しかし夜の温室での交渉はおそらく決裂。ミオリネはシャディクの手にGUND-ARMが渡ることをよしとしないでしょうから、次回の決闘は不可避だと思われます。

 ――5機のベギルペンデとパイロット科の5人の女性たち

 サリウスからシャディクへの電話で、ベギルペンデとミカエリスを送ったとの連絡がありました。終盤に映っていた取り巻きの女性たちの人数と、ベギルペンデの数は一致するので彼女らが乗る用の機体だと思われます。となると、次回は団体戦でしょうか。

 私は柔道の試合をたまに見るのですが、団体戦は1vs1を人数分繰り返す(1番手同士、二番手同士……と繰り返し、大将戦まで行う)戦い方と、先鋒同士が初めにぶつかり、勝った方が残り負けた方が次鋒に交代していく戦い方(いわゆる勝ち抜き戦)の2パターンがあります。また、水星の魔女の5話でエランが1vs3の試合をしていたことから、複数対複数のチーム戦も考えられそうです。

 しかし、問題は㈱ガンダム側にパイロットが5人もいないということ。戦えるのはスレッタと、一応パイロット科のチュチュくらいですが、チュチュの搭乗機であるデミトレーナーはブレードアンテナがついておらず、決闘用の機体とは考えにくいです。


 そのほかエラン(強化人士5号?)&ファラクトは㈱ガンダム傘下になるはずなので、スレッタ側についてくれそうではあります。しかしベギルペンデは対ガンダム兵器を搭載しているようなので、ガンダム2機vs対ガンダム用MS5機はあまりにも分が悪い展開でしょう。

 ネットではグエルが㈱ガンダム側について参戦してくれるのではないか? と期待する声もありますが(私もこの展開は熱いので見てみたいです)、彼はジェターク寮から追い出されている状態なので、ダリルバルデを使うことはできないと思われます。そもそもダリルバルデ、学園から引き上げられてましたしね。そうなると彼は何に乗って戦うことになるのか。間違ってもファラクトに搭乗して、データストームの被害に遭ったりしないことを願います。

 OPで映っているルブリスウルとルブリスソーンがチュチュとグエルの搭乗機になり、二人がガンダムの新たなパイロットとして参戦してくれるなら熱い展開ですが、データストームの人体流入問題を解決しない限り、二人に人体障害が出てしまいます。シャディクガールズとは、早ければ次回戦うことになりそうなので、この二機の開発は間に合わないですよね……


 仮にグエルが参戦してくれたとしても、㈱ガンダム陣営のパイロット候補はスレッタ・チュチュ・エラン・グエルの4人なので5vs5のチーム戦は望めません。シャディクの温情で勝ち抜き戦にしてもらえればまだ目があるかもしれませんが、prologueでの戦闘シーンを見るかぎり、対ガンダム兵器搭載MSへの対処法は1対複数の状況を作ることにあるので、チーム戦にしたほうがスレッタ達が有利になるという微妙なバランスです。


 大穴としては、授業中にオジェロが見ていた決闘のオッズ表が伏線で、トップ10に入っていたブリオン寮の二人を勧誘し(この場合グエルは入らない)5vs5の状況をつくるという可能性もありますが、今まで全く出てきていないブリオン寮のパイロット科のキャラクターに感情移入できるかどうかは微妙なところです。そもそも彼らと㈱ガンダムの面々の面識があるかも怪しいですし、御三家を敵に回す動きに賛同してくれる可能性は極めて低いです。

 会社の起業をかけて決闘するのはほぼ間違いないと思いますが、実際にどういう戦い方になるのかは最速で次回、明らかになると思うので楽しみに待ちます。



◆GUND医療とGUND-ARMの折り合いをどうつけるのか?

 ――ヴァナディース機関の理想とGUND-ARMは合致するのか?

 ミオリネは(おそらく)ベルメリアからカルド博士の映像を入手し、GUND技術の理想形を知りその実現を目指します。カルド博士の説明によれば、GUND技術により身体能力を拡張させることで、脆弱な人体を保護し、宇宙でも活動できる肉体を手に入れることができる模様です。チュチュはそれを「人体欠損を補う技術」として理解したようですが、博士の目指した着地点はそこではないように思います。

 なぜなら、「身体欠損を補う技術」としてのGUND技術はエルノラ(プロスペラ)が使用している右手の義手のようにすでに完成しており、安全性の確証は得られているはずです。データストームの人体流入によってパイロットに悪影響を与えるGUND-ARMとは全くの別物と思われます。

 そもそもGUND-ARMはヴァナディース機関がMS開発企業のオックス・アース・コーポレーション(以下オックス社)から資金援助を得たことで開発が始まったMSであり、医療技術としてのGUNDとは別のベクトルに位置するのではないでしょうか。医療目的のGUND技術と、GUND-ARMは相容れる存在なのでしょうか。


 二つを繋げるヒントとなるのが、ミオリネが持ってきた映像の右上に書かれた暦と、prologueでのカルド博士の発言です。

 まず、カルド博士が喋っている映像右上にはA.S.101と書かれていました。つまり、ヴァナディース事変が起きた年、水星の魔女の本編の時系列から見て21年前に撮られたものだとわかります。ということはヴァナディース機関がオックス社から資金提供を受けるようになった後と考えるのが自然です。ならばカルド博士は、GUND-ARM開発も視野に入れた上で、PVの発言をしていることになります。

 また、prologueでカルド博士は、幼いエリクトに対し、ルブリスのことを「こいつは特別だからね」と言っています。となると、宇宙に適応できる身体を手に入れる、身体拡張としてのGUND技術をGUND-ARMに転用したMSがルブリスだと考えられます。

 ここまでくると、なぜGUND-ARMが完成する=宇宙に適応できる身体を手に入れられることになるのかが気になってきます。スレッタを見るかぎり、GUND-ARMを操縦するだけではその恩恵が得られているようには見えません。他のMSと同じように宇宙空間で戦う際にはパイロットスーツを身にまとい、真空や放射線etc.から人体を保護する必要があるわけですから。


 ある意味では、ベルメリアが研究していた強化人士が解のひとつなのかもしれません。強化人士は人体にパーメットを注入することで、GUND-ARMのデータストームにも耐えうる身体を身に付けた強化人間ですが、結果としてGUND-ARM搭乗時のみならず宇宙空間での生活への耐久値も引き上げていた可能性があります。GUNDの理想を実現しようとしていたベルメリアにとっては、GUND-ARMの開発よりむしろ強化人士の開発のほうを、理想の実現に近づく手段として捉えていたのかもしれません。

 では、プロスペラが開発したエアリアルのほうはどうでしょうか。彼女はベルメリアに対し「ベルヴァナディースの意志を継いだのね」と告げていたことから、自身はGUND-ARMをベルメリアやカルド博士が考えていたのとは違うアプローチで完成させた可能性があります。

 考えられるのは、人間自体がGUND-ARMに取り込まれることで一体化し、GUNDという強靭な肉体を得ることで外宇宙へと適応していくという解釈です。文字通り「俺がガンダムだ」状態ですが、エリクトがこの状態になっていると考えると、エアリアル搭乗時、スレッタにデータストームの悪影響がないことの説明がつきます。エアリアルの身体はエリクトのもので、スレッタはエアリアルに指示を出しているように見えて、実際はエアリアルという肉体を手に入れたエリクトに指示をして操縦しているわけですから。発生しているであろうデータストームはエリクトが肩代わりしていることになるのでしょう。

 こう考えると、エアリアルのような「パイロットに負荷のかからない」GUND-ARMを作るためには生体パーツとして生身の人間が必要となるため、容易に量産化できないのは頷けます。もしこの説が正しいとするならば、ファラクトよりむしろエアリアルのほうが業が深い機体ということになってしまいますが。


 いずれにせよ、「医療技術としてのGUND」と「ガンドフォーマットを用いて直観的な操作を可能にしたGUND-ARM」という一見隔たりがあるように見える両者をどう組み合わせて事業を展開していくのか。ミオリネたちがエアリアル・ファラクトの真実に気づいた時にどうするのか。気になるところです。


 これは余談ですが、個人的にはカルド博士の映像を地球寮のみんなで見ていた時に、オジェロだけ後ろを向いていたのが気になっています。単にヌーノと仲違いをしてへそを曲げていただけかもしれませんが、何か意味があるような気がするのは深読みのし過ぎでしょうか。

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