第5話 氷の瞳に映るのは 感想・深まるエアリアルの謎

 地球寮の面々に受け入れられ、ようやく婚約・恋愛云々を抜きにした人間関係が築けそうなスレッタですが、またもトラブル発生の今回。【考察1】で予測した通りエランが強化人間だったり、ファラクトの戦闘シーンが解禁されたりと新情報が続々登場しましたね。それでは感想に参りましょう。



◆ミステリアスなエアリアルの謎

 序盤でニカが絶妙なバランスで調整されたエアリアルを見て、「君って最高にミステリアスだね!」と言っていましたが、その言葉通り機体の謎が深まる回でした。個人的にポイントだと思う点を、順に考えてみます。


 ――製造時期の謎

 アリヤの占いでスレッタに「きょうだい」がいることが示唆されたことから、ネット上ではスレッタ≠エリクト説が浮上していましたが、個人的にはプロスペラ=エルノアかつ、スレッタ=エリクトだと考えています。この占いで示された「きょうだい」はスレッタが作中で何度も「家族」だと表現しているエアリアルのことともとれるので、本感想置き場ではそちらを採用します。

 ただし、スレッタ≠エリクト説の傍証として、「ゆりかごの星」の記述を挙げる向きもあり、そちらは考察が必要だと考えます。

 問題のシーンは、6歳のスレッタがエアリアルのコックピットでシューティングゲームをする際、エアリアルが独自で「初めてスレッタがこのゲームを遊んだのは4歳の頃だったろうか」と言っている部分です。つまりスレッタが4歳のときにはエアリアルの、少なくともOS部分は完成していることになるわけです。しかしprologueでエルノア・エリクト母娘が逃げたのはエリクトが4歳の誕生日の時。逃げ込んでわずか1年以内で、あれだけ高性能なMSを完成させることができたとは考えにくいというのがスレッタ≠エリクト説の傍証のひとつです。ほかにもいくつか傍証として示されている項目は存在するようですが、私は特にこの点について検証が必要だと感じています。


 一番簡単なのは、ルブリスのOSをそのままエアリアルに転用している可能性です。これであればルブリスはもともと(エリクトをパイロットとした場合)OSが完成しているので、「4歳の頃」が逃げ込んで間もない頃だろうと話が成立します。それにスレッタが4歳の頃、エアリアルがエアリアルの形として存在していたとは明言されていないので、4歳の頃遊んだシューティングゲーム=ルブリスのOSで、6歳になって遊んだシューティングゲーム=エアリアルに移し替えられた元・ルブリスのOSという説明もつきます。

 あるいはヴァナディース機関の協力者が水星に存在しており、ルブリスのOSをベースにエアリアルのOSを構築したとも考えられます。5話でヌーノが「一流エンジニアをどれだけ動員したんだか」といった旨の発言をしていることから、エアリアルはエルノア一人の力で組み上げられたとは到底思えません。とはいえ、エリクト=スレッタであるならば、前述した通りルブリスのOSは完成しているので、まったく同じOSをベースにして機体を組み上げればよいだけです。もっとも、ゆりかごの星には「たった二人で逃げてきた」という記述があるため、エルノアらと共に水星に逃げてきた一行がいたとは考えにくいです。となると何故水星にエアリアルを組み上げられるだけの技術力がある協力者がいたのかという謎は残りますが(3話でシャディクも似たようなことを言っていましたね。彼がその謎を解いてくれるといいのですが)。

 いずれにせよ、エリクト=スレッタと考えた方がむしろ、ルブリス→エアリアルの開発期間を短縮することができるので自然ではないかと思うのですが、皆様の考えは如何でしょうか。


 これは私の想像ですが、「ゆりかごの星」で描かれているエアリアルは、わたしたちがいまアニメで見ているエアリアルとはビジュアルも性能も異なる存在だったのではないでしょうか。水星での人命救助にガンビットは不要ですし、それらの機能は少しずつ研究・開発されて付け加えられていったのだと思われます。

 エアリアルがMSとして存在していることが確認できるスレッタが11歳の時の時点(=アニメ本編放送開始の6年前)には、既にアニメ1話レベルの機体が完成していたとなると、潤沢な資金をもって日々MS開発に邁進している御三家以下グループ他社が浮かばれません。特に1話であの世界の標準的なMSであろうディランザをボコボコにされたジュターク社は……グエルが可哀想なのでこれくらいにしておきましょう。


 ――パーメットのパイロットへの流入がない謎

 エランがエアリアルに単独で搭乗し、パーメットスコアを2に上げた際にデータストームの体内流入が無く、エランの体内にあるパーメットも反応していないことが判明しました。ペイル社が開発したガンダム・ファラクトはGUNDフォーマット搭載に伴うデータストームの人体流入を、それに耐えうる改造人間(強化人士)を作るというコンセプトで解決しているようです。それに対しエアリアルは何か別な方法で問題をクリアし、データストームが人体に流入しないようにできています。


 エランのファラクト操縦時に、ガンビットの使用=パーメットスコア3であることが判明したため、恐らくその仕様はエアリアルも同じでしょう。このレベルだと普通の場合、データストームによってパイロットは即死であるとペイル社のCEOたち(割と特徴的な見た目ですが、顔と名前が覚えられません……)は述べていました。エリクト≠スレッタ説を提唱する方は、ここで「エアリアルにはエリクトの脳ないし生体OSが搭載されており、データストームを肩代わりしているのでは?」という考察を展開されていましたが、私はこれは当てはまらないと考えます。なぜなら、前述した通りエリクトが登場した場合に限られますが、ヴァナディース機関が理想としたGUND-ARMはルブリスで完成しているからです。

 prologueにて、エリクトはパーメットスコア3が必要となる(=今までのGUND-ARMだと人体が無事では済まないレベル)はずのガンビットを使いこなし、敵MSを撃破しています。このことから、既にルブリスの時点で「データストームの人体流入」問題はクリアしていると思われます。その後継機であろうエアリアルも同様に、当該問題をクリアしているのはある意味当然といえます。エリクト=スレッタならなおさらです。当たり前ですがルブリスのOSにエリクトの生体データが流用されているなんてことはない(ましてや脳が積まれているなんてことはあり得ない)ので、エアリアルも同様にエリクトの生体OSで動いているわけではないと考えます。


 とはいえ、ルブリス&エアリアルがデータストームをどうやって回避しているのか? は謎のままです。おそらくprologueでモビルスーツ開発評議会にルブリスが課されていた条件というのが、この「MSの性能向上によるデータストームの人体流入の回避」だったのではないかと思われるので、prologueから続く謎といえます。早ければ6話で明かされるかもしれませんが、本作の肝になる部分ですのでもしかすると終盤まで謎のままかもしれません。デリングは何を危惧して、prologueでルブリスの完成を阻もうとしていたのか、条件をクリアしたルブリス・エアリアルにはどんな可能性があるのか。今後の展開に期待します。


 ――赤目の謎

 最近、SDガンプラのガンダム・エアリアルを入手したのですが、ツインアイのシールが緑目と赤目の二種類付属していました。ネット情報を見る限り、1/144のエアリアルにも同様に赤目シールが付いているようなので、今後作中で赤目になるシーンがあるのでしょう(さすがに大喜利用ではないと思いたい)。しかし、今のところエアリアルの戦闘シーンではいずれも緑目で、赤目になる気配はありません。


 それに対して、5話で登場したガンダム・ファラクトは常に赤目でした。これは製作陣の明確な意図があるように思えてなりません。例えばデータストームの人体流入がある状態=パイロットにとって危険な状態のときは赤目になるとか。その場合、エアリアルに赤目が付属している=今はデータストーム問題をクリアしているようにみえるエアリアルも、何かのきっかけがあればその前提が崩れてしまう可能性があることを示唆しているように思われます。

 いずれにせよ、エアリアルが赤目になるときは、スレッタがピンチに陥るときだと思うので、それがどんなシチュエーションで現れるのか興味深く待ちたいと思います。


◆「強化人士“4号”」の意味

 ――ベルメリアの個人研究の可能性大

 【考察1】で、エランが強化人間の可能性に触れていたので、それ自体は意外性はありませんでした。全身が赤く光る描写は歴代強化人間の中でも「身体中いじられている」感があって異様に見えましたね。

 御三家の筆頭の中では直系のグエル、養子のシャディクと異なりエランはペイル社とのつながりを示す表記が公式HPに何もありませんでしたが、あくまでガンダムを動かすための生体パーツとして見做されていることが明らかになりました。エランが学園のホルダーだった場合、ミオリネはエランと結婚することになっていたわけですがデリングはこのことをどこまで把握しているのでしょうね。知らなかった可能性は高そうですが、prologueで宣言していた「全てのガンダムを否定します」の言葉通りファラクトも処分扱いするのか、それともヴァナディース機関――ルブリスとは開発コンセプトが異なるため利用する気でいるのか(それこそダブスタク○親父になりますが)。


 デリングによる処分命令が下されるリスクがあるにもかかわらず、ペイル社がGUND-ARMの開発を密かに進めていた理由も気になりますね。今回、開発コンセプトは違えど同じGUND-ARMであるエアリアルが決闘に勝利し、廃棄処分を免れたことで「決闘に勝ちさえすれば、たとえGUND-ARMであっても廃棄されない」という前例ができたことにより表に出すことに決めたのでしょうか。

 しかし、エランが「強化人士4号」と呼ばれていたということは、前に1~3号がいたことになります。彼らがどんな末路を辿ったのかはあまり考えたくありませんが、ペイル社はかなり前から――おそらくベルメリア(エランの身体調整をしていた、プロスペラの後輩)がペイル社に流れ着いたときから――研究開発をスタートさせていたのでしょう。データストームの人体流入に耐えられる強化人士をつくることで、GUND-ARMを完成させるというコンセプトは、ヴァナディース機関の理想とは異なりますが、なぜヴァナディース機関に所属していたのであろうベルメリアがそうした研究を進めることになったのかは興味があります。ペイル社CEOの誰かがそういうアイデアを出して、ベルメリアは拾ってもらった恩があるので粛々と指示に従っていただけという線もあり得ますが。


◆エランの学籍番号はKP-002

 ――御三家の力関係が判明

 グエルがKP-001、エランがKP-002であることが今回明らかになりましたね。学籍番号=推薦企業のヒエラルキーという公式の説明に則るのであれば、ジェターク社>ペイル社>グラスレー社であることが判明しました。2話の審問会の席次+デリングがグラスレー社出身(※prologueより)という経緯からして、ペイル社とグラスレー社の力関係は逆だと思っていたので少し意外でした。1話でベネリット・グループの成績優秀企業として名前が呼ばれた順ではあるので、少なくともグエルたちが入学したころからこの3社の序列は変わっていないことになります。


 御三家のうち上位二社がGUND-ARMの存在を認めている(ヴィムはプロスペラに脅され、渋々ですが)のに対し、グラスレー社はアンチGUNDフォーマットの対抗兵器を積んだベギルベウを開発するなど、GUND-ARMに対する忌避感がとりわけ強いのは今後の展開のポイントになりそうですね。もしかするとシャディクが乗るミカエリスにもGUNDフォーマット無効化武器が搭載されている可能性があるので、スレッタVSシャディク戦はかなり苦戦が予想されます。GUNDフォーマットが使えなくなるというピンチが訪れた際、スレッタとエアリアルはどう立ち向かっていくのか、非常に気になります。

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