第2夜 ツーナイト
戦況は、極めて残酷だった。
どう残酷なのかと言うと、相手が余りにもの不利だったからだ。
1対20。一人の少女と無数の
因みに、
姿事態は、平均的に直径2メートルの毛玉の中心に大きなオレンジ色の目玉がぎょろりと動く。そして後ろからは、これまた極太の猫を連想するような黒い尻尾が2本ある。
言わば二股というものだろう。
しかも、その中の一匹でも普通の人が目を合わせるだけで、洗脳させて
簡単に言えば、夢の獣。そのままだ。
それに対して、こちらは一人の少女。
朝の空色に近い水色のワンピースに、フリルのついたエプロンのようなもの。頭には白兎のカチューシャを付けている。
見た目は15の女の子だ。肩までの真っ直ぐの金髪に、死んだ魚よりも光も希望も感じられない金色の目。
見た目からして、種族は
使える能力と言えば、全てを完全に計算して未来を確定視する「
そして、無意識に動いて望んだ未来に進む「
どっちが、勝てるのか?だって?
答えは勿論、危険度:
こんなのは、そこら辺にいる子供でもすぐに答えられる。
「こう呼ばれているのは……皮肉。危険度を分かりやすくする為にそうしてるらしいけど、対戦相手に
「「「うにゃうがおーーー」」」
大量の
本当に、可哀想だなと思ってしまうレベルで。
導き型AI・ドールがため息を一つ着くと、一斉に攻撃が飛んできた。
二股の尻尾から、オレンジ色に光る魔方陣が光りだした。
そこから熱を帯びているように見える極太の、これまた表面がオレンジ色に光る白色のビームが迫ってきた。
(4
魔方陣が光りだしたのを確認すると、体の力を一気に抜いて急降下した。
地面と数センチになるまで、3秒もかからなかった。
ひょっとして、ここではかなりの重力がかかってるのかと思ったが答えは違うらしい。
以外にも浮いていた場所は低かったらしく、速めについてしまった。
「いよっと」
地面を勢いよく蹴ると、今度は前方向にもの物凄いスピードで移動していきゆっくり観察した。
別にこの世界では、自分に関する魔法しか使えないなんて制限は無い。なんなら、
まぁこれはポーカーに近いものが見えるから、例外に近いものだが。
今度は、やはりこの世界は
その後も逃げる導き型AI・ドールは、低木スレスレを飛んでいた。
危険度:
彼女の能力的に、飛行能力を手にした所でただ試合を延長するだけだが。
「今は『
導き型AI・ドールは、いちいち周りの景色を気にするタイプでは無かった。と言うよりも、景色が余りにもの凄い勢いで変わっていく。
速さからして、秒速数十mだろうか。輪郭がクッキリ残った状態で視覚に情報が入って来ない。
崖ギリギリのラインで地面を蹴って垂直に移動したとはいえ、その程度でかわせられる程のホーミング弾では無かった。
表面がオレンジ色に光る白い極太光線は、導き型AI・ドールと全く同じをするように垂直に動く。
「……
高い木々を抜けた所で、すぐ横から同じ光線がやって来た。
まるで本人の隙を狙うように、明らかな死角の方から飛んできた。
……だが、
「不意を狙う点で、
そう、何故ここで一気に上に上がったのか。
別に崖があったからと言うのは、偶然に過ぎない。
導き型AI・ドールにとって、これまで通ってきた道を基に頭の中で地図を作ることなど朝飯前だったからだ。
とはいえ、今回は1か8かの賭けに近かったが……予想通りの位置に来れたのでビンゴだ。
では、どこのタイミングで飛んだのかと言うと……
相手が隙を狙うなら、こちらも隙を。その戦い方は読み合いの繰り返し。
確かに夢の世界の
だからこそ、戦略も、逃げ道も、なんならその先の行き止まりまで分かっていた。
しかし、例え全てを知っていた所で、彼女に勝てる確率は少ない。
「貴方たちの光線ぐらい、貴方達で受けて……ね。この光線は、2000度ぐらいと予測。全く、ここも
導き型AI・ドールが引き連れて来た光線が、運悪く集まってしまっていた
あの
出来た所で、ルートの変更程度。だからこそ、不意を狙う戦略が出来た。が、今回は相手が悪すぎた。
何故なら、
「……この場で正確に撃つのは良いかもしれませんが、
彼女に当たった弾さえ跳ね返される。
当たったと思えば、フリルのついたエプロンに焦げ跡を付けることなく方向が強制的に変更される。
そして少女の周りを何周かすると、放った相手に跳ね返す。
「反則技の使用は可能です。これは『
少女はいとも簡単に説明しているが、その目に映っている光景と言うのは見るに絶えない光景だった。
引火性があるのか、それともそういう体質なのか、黒色毛玉に二股の尾が生えている
そして完全に焼け切れば、灰になって地面に落ちていく。灰の量は意外にも少なく、何十匹もいたはずなのが、今では少し大きな砂の山が出来ていた。
「つまらないのを認識。ここまで来たら、
「おっと、それだけは聞き捨てならないな」
どこからか、少年のように思える馴染みの無い声が聞こえた。
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