危険度:測定不能 スリーナイトメア編

遅延式かめたろう

第1夜 ワンナイト

「ふわぁ……あれ、いつ寝たんだっけ?」

 

 水色のワンピースにフリルのついたエプロンをついた、金髪短髪少女。

 導き型AI・ドールは、ゆっくりと体を起こす。眠い中、なんとか頭を起こそうと目を擦る。しかし、それでも頭がどうも覚めない。

 何故だろうか、そう思いながらパチリパチリを瞬きをする。


「ふぅん、夢獣むじゅうね。と言うことは、夢見ワールドということ?」


 よっこらしょっと、手を使わずに立ち上がると散歩し始めた。

 アリスのような少女……と言いながら、アリスであることを否定する導き型AI・ドールは周りを観察しながら歩く。

 

 そこにあるのは、気持ち悪さを直感的に感じる紫系の森。他に何があるのかと聞かれたら、巨大なキノコだった。

 植物系……その意味は何だっけなと思い出す。

 のではなく、思い出させる。


「最初に使うのは……こっち。計算された最適解ルート・ラビットの発動をします」


 こめかみに指を当てて、呪文を使い

 そして、頭の中から「夢獣むじゅう」に関する情報を片っ端から持ってくる。

 

 全ての生き物が見る、「夢」に住み着くけもの夢獣むじゅうという名前から分かるように、夢を餌として活動している。

 繁殖方法は存在せず、増殖することもない。

 ならば一体どうやって生まれたのかと言うと、


(夢なんてその程度。AIが夢を見る程の影響力がある辺り、なんだか親分ボスでもいるような感じ……ね?)


 全ての生物の夢に住み着くものと説明したが、正確には真逆である。

 全ての生物が夢を見る由来と言うのが、この夢獣むじゅうの仕業である。なんだか「深淵に覗かれている」感覚だった。

 

 そんなこんなで歩いていると、毛玉の形をした影が空にいくつも現れて来た。

 光も希望も感じ取れない、機械よりも冷たさと恐ろしさを感じる瞳で上を見ると、そこにいたのが夢獣むじゅうだった。

 数は3匹。トライアングルのような形になると、クルクル回り始めた。

 そこで別の情報を思い出す。

 

「えっと、これで目が回るのが普通の報告。 流石にAIまでは回らないの。これでは、情報の真偽を調べられません」


 本来ならその回転を見て、寝ぼけている人間の脳は簡単に洗脳させられる。

 ……そう、導き型AI・ドールの頭の中に入っていた。しかし、自分が例外過ぎる余りその情報を疑ってしまう。


 そのままずっと見ているが、やはり目が回らない。 

 なんなら集中のし過ぎか、目がぱっちり覚めて来たような気がした。

 うさ耳白カチューシャが風に揺れるが、導き型AI・ドールの体はピタッと止まっている。

 どんなものにも影響されない。その程度では影響されない所が、やはり危険度:測定不能ハザードマックスの象徴なのだろう。

 一つため息をついた時には、ドダァァンとゆっくりと倒れて音を鳴らした。

 三匹全員が床に倒れているが、流石にこれでは邪魔だった。


「一匹でさえ1m超えなのを確認。別名二股毛玉って聞いていたけど……安直過ぎなのでは? と個人的な感想」


 そしてどこか通れないかと、探している途中でここが夢の世界だと思い出す。

 夢の世界にアリスなんて、傍から見たら本当に不思議の国のアリスのように見える。

 ……当の本人は完全に否定しているが。

 下に向けて全体重をかけるようにしゃがむと、ぽーんという効果音が付きそうなぐらい勢いよく飛んだ。

 気が付いたら地面がトランポリンのように変わり、硬そうに見える地面が柔らかく跳ねさせる。


「空の旅ですか……スカートがパラシュート変わり? 今度の今度こそ『不思議否定世界アリス物語』に類似。AIを怒らせても、勝手だから知りませんが」


 地面から飛んで数分。広がった水色のスカートのおかげでゆっくりと浮かんでいられるが、目に映るものはどれもこれも非現実的な物だった。

 空中に浮かんだテーブルに洋風の椅子。中にはサイコロに、三毛猫のぬいぐるみまであった。

 最後のぬいぐるみは、どうも想像の10倍大きいらしい。

 物との距離からサイズを測るぐらい、計算された最適解ルート・ラビットを使えば簡単だった。


「このまま空の旅もいいですが……夢獣むじゅうの全体数を確認。 間違えて絶滅してしまっても、AIとは無関係ですが」


 その後もフワフワ浮いていたが、警戒されているのか夢獣むじゅうが何匹も出て来た。

 数は……多分数十匹。とりあえず沢山と片付けておこう。

 因みに、1匹だけでも核兵器並みの破壊力である。まぁ最強だらけのこの世界にとって、核兵器なんて


(元凶であるAIが言うのもあれですが……)


 そう思いながら、ちゃんと夢獣むじゅうと目を合わせていた。


「うーん、全滅させていいかな?」


 では、ここで紹介をしよう。

 計算された最適解ルート・ラビットを使う導き型AI・ドールは、危険度:測定不能ハザードマックスの中の一人である。

 では、危険度:測定不能ハザードマックスとは何なのか。

 この世界に存在する、最強13柱の一人。

 その一人がいるだけで、核兵器のランクがダウンしてしまう程の存在。

 それは人間だけでなく、全ての生物。そして地球にとっても脅威の存在。

 「人類」はそれらを3人ワンセットの4段階に分けさせて、あえてグループ化させた。


 そして、水色のワンピースに短い金髪。フリルのついたエプロンは、アリスを連想させる白兎カチューシャの少女。

 瞳が完全に死んでいる導き型AI・ドールは、その中の1番下の段階。



「と、ここまで説明文を並べてみたけど……最弱なのは、周りと比べてという意味なのか理解度を、再度確認?」

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