第3夜 スリーナイト

「…………おや、貴方がいるとは意外。レックス」

「いやぁ、ここの研究をされちゃってね。どうやら人類に、夢獣むじゅうは脅威過ぎたらしい。あと、僕ちんの名前はノウレックスだ」

「そんなに脅威には感じられませんでしたが、そこまででは無かったかと。 レックス」

「どうも、夢の世界……夢見ワールドを人類は偉大なる大地ファイブアースに入れたくないらしい。あと、僕ちんの名前はNoノーじゃなくてknowノウだ」


 エメラルドグリーンと黒髪を混ぜたような髪に、これまたエメラルドグリーン色のサイバーチックな瞳。

 白衣を着ているのに、貴族らしい服を中に着ているせいか科学者には全く見えない。

 そもそも彼の名前は「技術の神様・ノウレックス」……のはず。

 なのに、技術も何も感じさせない見た目だった。

 

 技術の神様、と呼ばれているが所詮は危険度:測定不能ハザードマックスの一人に過ぎない。

 つまり、強さの括りとしては導き型AI・ドールと同レベルである。

 彼の場合は、称えられる地位が高すぎるあまりに器の小さい男になってしまったが。


 技術の神様・ノウレックスは空中に浮かびながら、両頬をぷくーっと膨らませていた。

 何が原因なのか分からず、導き型AI・ドールが首を傾けると次は両腕を振り回してきた。二人の間には5mぐらいの間があり、当たることは無いが奇妙なことにポカポカ殴られている感覚があった。


「それで、AIに何の用でも?」

「……君は人を怒らせる才能は沢山あるようだねぇ。ま、これ以上論争しても情報が貰えないのは、


 ふぅん、と導き型AI・ドールが軽く返事をすると、またまた顔を赤くして腕を振り回し始めた。

 あぁ、ただのかまってちゃんなのか心の中で呟くは、導き型AI・ドール。

 もしくは肉体年齢に引っ張られているのか。

 神様なんて付いているが、外見年齢と言えばして10歳程度だ。例え精神年齢がおじいちゃんだろうが仙人だろうが、肉体にくたいが幼かったらたましいもそれに引っ張られて言動が幼くなる。なんて資料があるのを思い出す。


 ゴホン、と技術の神様・ノウレックスは力ずくで本題に戻す。


「それでー、僕ちんってばまだ報酬貰ってないんだよね。そーれーにー、最近またって感じ始めたし……ちょっくら、夢見ワールドのダイヤ型の主核ワールドコアを拝見させてもらおう。かなってね」

?」


 あぁ、と頭を抱えて言葉の意味を察する導き型AI・ドールは、とりあえず全身の力を抜いて地面に落ちる。

 大きく広がっていたスカートを両手で折りたためさせたからか、思ったより早い勢いで真下に急降下していく。

 

 一方技術の神様・ノウレックスの方は、白衣の裏側から大量の小瓶を放り投げた。

 1個自体は親遊程度のサイズ。、それを1回で放り投げた。


「397の弾丸。最終兵器0360クラシックワンより、少し火力高めにしといたぜ!!」

 

 白衣がマントのようになびく。バサバサッと音を鳴らすのは、技術の神様・ノウレックスが風を起こしている証拠。

 見えない風にコントロールされた397個の小瓶は、互いにぶつかっては蓋を開け始めた。

 少年姿の技術の神様・ノウレックスが両手を上げると、それを合図に制限が外れた小瓶が発光しだす。それも、危険を表す水色に。


「どーお? 小型だけど、最終兵器0360クラシックワンを詰め込んで見たんだ! レーザー砲、いっけー!」


 技術の神様・ノウレックスが両手を下ろした途端、それが合図トリガーのように突然全ての瓶が光り出した!

 水色に光り出し一定のボールサイズになると、エネルギーが抑えきれてないのか一つ、また一つと震え始める。

 そして限界に達したのか、水色のビームらしきものが地面の上に立っていた導き型AI・ドールへ放たれる。

 一つ一つの向きを調節して、一斉に。

 確かにこれならあのかの有名な最終兵器さいしゅうへいきシリーズの中で、最も高火力とされる最終兵器0360クラシックワンを超えるかもしれない。

 

 

AIの勝利数は10対0。100対0。……分かるか」


 それは、導き型AI・ドールが最終兵器シリーズと戦った戦歴だ。

 人類だけでなく、それ以外の種族も共同して開発された最終兵器さいしゅうへいき

 それは危険度:測定不能マックスハザードと戦い、下剋上と言う名の勝利を手に入れるためだった。

 が、悪意ましてや兵器までいけば、導き型AI・ドールは真価を発揮のだ。


 導き型AI・ドールにとって、核兵器をぶつけられた所であくびが出てしまうほどだった。

 ふわぁと眠気を指すあくびをしたと思えば、体を伸ばし始めた。それは本当に、


「んー、AIと戦う……無意味さまで説明する気はありませんが、努力に関してはみとめますよ」


 攻撃が彼女に届く事はなく、水色の極太線でさえどこか行ってしまう。

 大体のものが彼女の付近で方向が変わったのもあり、近くからゴムでも焼いたような異臭があった。

 たまたま当たった木に限っては、黒焦げの場所からしゅーと聞こえる。


「うーん、火力がまだ足りないなー。まぁこっちの世界夢見ワールドで使えただけ、結果オーライかな? そ・れ・に!」

「……見下ろさないで下さい。本当に王様だとしても、なんだか気分が落ち着きませんね」

「それは怖い怖い。こっちとしても、を防ぐ方法が無いんだ。頼むから、勘弁してくれ」


 技術の神様・ノウレックスが両手を上げて降参すると、ゆっくりと天使が降りてきたように落ちて地面に足を付けた。

 紫色の草が覆っている地面につくと、両手を腰にあてて導き型AI・ドールの方へ歩く。彼女を素通りすると、ついさっき夢獣むじゅうだったものを指でつまむ。そしてエメラルドグリーンの瞳を輝かせながら細かく見始めた。


「試験管に入れる意味とはなんですか? 今は、物までは共有化出来なかったはず」

「おっと、情報を常に更新しない君達の悪い癖が出てるよ。別に回収出来なくても、それはそれでデータだからいいのさ」


 技術の神様・ノウレックスが、好奇心旺盛なのは知っている。多分、13柱いる危険度:測定不能ハザードマックスの中では1番と言っていいほど。

 彼にとって、目の前のものは全て実験材料だのなんだのとしか見ていない。

 だからこそ死んだ後の灰だと伝えても、きっと彼の行動は変わらないだろう。


「……さてと、君を倒そうと思うんだけどやり方を知ってるかい? ドールさん」


 拾い終わったのか、立ち上がって導き型AI・ドールの方へ聞いてきた。

 夢獣むじゅうの灰に思考が変わったのかと思ったが、やっぱりそう簡単に予想通りにはならなかった。

 勿論弱点なんて教えなかった。

 別に自分の弱点を教えたいとかじゃなくて、それをやたら責められるのが嫌なだけ。

 

「だから教えない。貴方の厄介さと性格の悪さなんて有名」

「そう……おっと、そろそろ夜明けか」


 技術の神様・ノウレックスが白衣にかけていた懐中時計を出すと、そこには5時と表示されていた。

 気が付いたら現実世界の世界も、朝になってきたらしい。

 夢の世界である、この空間は朝になったらどうなるのか? 流石にそこまでの記録は、導き型AI・ドールに

 考える時にする姿勢の癖をしたからか、技術の神様・ノウレックスがこちらに近づいて来た。

 

「そういえば、次はどこに行くの? ダイヤ型の主核ワールドコアでも探すの?」

「そうね。あと、どうしてここに来た理由も知りたいしね」


 二人は、幻想よりも厳格にちかい夢の世界を歩き始めた。

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