第7話 プリストラ・ストノストは信じきれない

 『今日は、マギヤがウリッツァ班に復帰して早々の、ウリッツァ班の聖女護衛当番日。』の一文から始まった今回。

 とある通り、マギヤはウリッツァ班を一時期離れてたことがあった。


 その原因を端的に言うと、主にウリッツァへの片思いを拗らせての奇行やら暴走やらを経てのことだ。

 ところが、マギヤはウリッツァ班を離れたのに、ウリッツァに危害を加えたことがある。



 その日、ウリッツァとプリストラが過ごす部屋に、ウリッツァを米俵のように担ぐマギヤ――このマギヤをウリッツァがいる肩側から見るとウリッツァの腹とマギヤの肩の間が数ミリ浮いている――が訪れた。

 そのとき部屋にいたプリストラが、目の前のマギヤにギョッとしながら、何事?! とマギヤに尋ねる。


 マギヤはウリッツァの担ぎ方を姫抱きにしながら「傷付けたのも傷の処置も、私がやりました」とだけ言う。

 今のウリッツァから血は出てないようだが、シャツが所々切り裂かれてて、ウリッツァが流血したシミがいくつかある。


 マギヤがウリッツァのベッドの位置をプリストラに確認して、ウリッツァを魔法で浮かせて、二段ベッドの上側に寝かせる。

 その後、マギヤはウリッツァの寝てるベッドの上に瞬間移動テレポートし、ウリッツァのシャツに修復魔法と洗浄魔法をかけ、去っていった。



 あの出来事から何日も経ち、今、プリストラはマギヤを見ている。

 トロイノイの手を握り、うっとり微笑んでるマギヤを見ている。

 トロイノイ、あれから気が変わってマギヤの恋人だって言ったのかな? それとも……そもそもマギヤは異性の記憶を無くしてなかったのかな?



 プリストラがマギヤについて、そう疑い始めたきっかけは、マギヤがトロイノイやヴィーシニャを誰と尋ねてすぐのこと。

 トロイノイが自分についての情報を話してて、プリストラがそのフォローに回るべく、一番大事であろうトロイノイがマギヤの恋人なことを言ったら、それを消し飛ばされた感じがあった。


 その翌日プリストラが、トロイノイに自分がマギヤの恋人なことをマギヤに言ったか尋ねたら、トロイノイは言ってないと答えた。

 さらに、そもそもプリストラがトロイノイについて「あとマギヤの恋人」と言ったのが聞こえたかも確認する。

「『あとマギヤの』までは聞こえたけど……その後は聞かせたくなかった」

 トロイノイはそう答えた。


 あの場に、プリストラの発言だけピンポイントに消せるものなんてあった、いた?

 きっとマギヤが時間停止の魔法を駆使して……ん?

「ごめんトロイノイ。『あとマギヤの』までは聞こえて、なんて?」

「あたしがマギヤの恋人だって、まだ聞かせたくなかった……」

「ええ?!」

 あれの犯人はマギヤじゃなかった。

 だが、その後もプリストラは、マギヤの記憶喪失を疑う理由を、数多あまた見つけている。

 それらを突きつける日は、来るのだろうか……?

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