第5話 桜色の髪等が美しい女性

 ウリッツァ班が非番のある平日の昼休み。

 自分の席に座っているマギヤが、真顔で遠くを見つめているので、何を見てるのか尋ねるプリストラ。


「あそこにいるヴィーシニャさんです」

 そう言ってマギヤが指さす方向を見て、プリストラは、ん? と目をパチパチさせたり、自分の眼鏡を軽くいじったりして「あ、ほんとだ」と呟いた後、こう言う。


「最初に会ったときからずっと綺麗だよね〜、ヴィーシニャって」

 プリストラの言葉に対して、マギヤは「……そうですね」と同意する。

 そんなマギヤに「ね~」と同調しかけて、プリストラは、ふと違和感を覚える。


 いや、マギヤはヴィーシニャの記憶を無くしてすぐ、ヴィーシニャを、桜色の髪等が美しい女性、って評したんだから、ずっと綺麗、に漠然と同意してもおかしくないはず。

 前に何度かマギヤにヴィーシニャ綺麗って話をしたときの反応が「……見た目はそうですね」とか「どうでもいい」みたいに冷たい反応だったせいで、同意するのが気になっただけ。

 それでも違和感が拭えず、マギヤに何を聞こうか悩むプリストラ。


「二人とも、何見てんだ?」

 そこにウリッツァが話しかけてきた。

 あっちにいるヴィーシニャ、とプリストラが答えたので、ウリッツァもそっちを見る。

「……いや、よく見えてんな、二人とも。オレ、プリストラに言われて見て、ああ、ヴィーシニャの頭があるなとしか思わなかったレベルだぞ?」


 実際、割と遠い所にヴィーシニャはいた。

 まず、ウリッツァ班男子がいる教室が校門側、逆コの字型校舎の二画目の線側にある。

 で、ヴィーシニャがいるのは、コの一画目の横線側。

 教室の廊下側の窓、教室近くの廊下にある窓、ヴィーシニャがいる廊下の窓の三つ経由している。


「僕もちょっと信じられなかったけど、眼鏡に軽い望遠魔法を付与して、やっとヴィーシニャの顔が見えたぐらいだからね。……マギヤはどれぐらい見えてんの?」


「プリストラに、ヴィーシニャさんはずっと綺麗、と言われたとき、ヴィーシニャさんが笑ってるのが見えていたぐらいですね」

 マギヤはそう答えて、というかプリストラ、とプリストラを見上げる。

「先程の発言を聞くに、ついさっき望遠魔法を付与したんですか?

少し魔力を込めたら望遠魔法が発動するようにしてなかったと?

貴方のヴィーシニャさんの想いはその程度なんですか?」

 そう、マギヤはプリストラを見下しすぎて見上げていた。

 表情こそほとんど真顔ながら、ため息もついた。

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