第3話 ウリッツァは素晴らしい人ですもの

 マギヤが異性に関する記憶を無くした翌朝、マギヤは喜色満面でウリッツァに自分の朝食の鮭をあーんして食べさせていた。

 そのさまを見せつけられて、若干引いてるトロイノイ。


 マギヤとウリッツァが朝食等のおかずを交換する行為自体は、最初にマギヤがウリッツァ班だった当時、たまに見かけていた。

 だが、そのときは空いた皿やおわん等に載せてたのに対し、今はあーんで直接食べさせている。


 マギヤがウリッツァのことを友人以上に慕っているのは、付き合ってるときに少し聞いた程度なトロイノイ。

 マギヤがトロイノイと付き合っていることを忘れてるとはいえ、これはさすがに限度がある。



「……ずいぶん、ウリッツァに尽くすのね?」

 朝食を食べ終えたウリッツァ班一同が、マギヤを先頭に二列になって廊下を歩く中、マギヤの隣を歩くトロイノイの引きつる笑みから出た質問。

 それに対し、「ウリッツァは素晴らしい人ですもの」などと朗らかに笑ってほざくマギヤ。

 マギヤのその回答にトロイノイは多少同調しつつも、次のマギヤの返事には複雑な顔をせざるを得なかった。

「私の自業自得で二人になれないとはいえ、ウリッツァが私を受け入れてくれて、私もウリッツァを愛していることを忘れてなくて……今はそれで十分です」



 プリストラと少々話しながら、そんな二人のやりとりも聞いてたウリッツァは、そんなマギヤを見て「オレを……愛してる、って、言ってくれるのは嬉しいけど……。……オレ、ヴィーシニャと付き合ってるからさ……」と正直に言う。


 次の瞬間、ウリッツァを見て「じゃあ今すぐその女と別れてください」と言い放つマギヤ。

 真顔を通り越した氷の目で自分を見るマギヤに、若干びびるウリッツァ。


「『ヴィーシニャと正式に結婚して聖女邸を出るまでならマギヤの思いに応える』とか、『中途半端が嫌ならヴィーシニャと別れる』とか言ったのは嘘だったんですか?」

 手近にいたプリストラの上腕の袖を握るほどにマギヤに詰められるウリッツァ。

 そんなウリッツァの態度に、さらにウリッツァを責める語調が強くなるマギヤ。

 そんなマギヤに、あれこれ理由をつけて「今すぐは無理!」とウリッツァがごねると、マギヤは思いっきり舌打ちすらする。

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