第2話 恋人繋ぎは両方に離す意志がないと離れられない
翌朝になっても、マギヤはトロイノイやヴィーシニャなどの女子に関することを一切思い出さなかった。
昨日聞いたことは思い出すが、そこ以前のことは全く思い出してない。
男子のことは概ね覚えている。
ただ、マギヤ本人は気にしてないようだが、男子のことで一つ、割と大事なことを忘れている。
「おはようございます、ウリッツァ。今日もいい心音ですね」
「……マギヤ……重い……」
ウリッツァとの距離感である。
本来、マギヤとウリッツァは別々の部屋で寝ている。
だが、今朝マギヤが目覚めてすぐ「……ウリッツァに会いたいな」と思い立ち、
「ん? ああ……ごめんなさい。一秒でも早く愛する貴方に会いたくて、つい……」
ウリッツァの「重い……」に対して、にこやかにそう謝るマギヤ。
繰り返すようだが、ヴィーシニャやトロイノイをはじめとした異性のことは思い出してないが、同性のことは忘れていない。
少し前にマギヤがウリッツァに「愛しています」と告白し、ウリッツァを正々堂々と抱いたことを昨日のことのように思い出せる。
「じゃあ、廊下でまた」と挨拶してテレポートで去っていくマギヤ。
それからウリッツァは、マギヤが開けなかったパジャマの前ボタンを外しつつ、服を着替え、同室のプリストラと共に廊下に出た。
「おはようございます、ウリッツァ。……手でも繋ぎますか?」
マギヤの双子の弟でもあるプリストラの挨拶をさしおいて、ウリッツァにそんな提案をするマギヤ。
「いや、何いってんのマギヤ――」
「ああ、いいぜ?」
プリストラのツッコミを遮って、ウリッツァはマギヤの提案を了承し、マギヤの手を握る。
マギヤはウリッツァに手を握られた直後、こっちがいい、と指を絡め、恋人繋ぎの形にし、ついでにプリストラにおはようと、「行きましょうか」を言う。
マギヤ一行が向かったのは、聖女邸の食堂である。
さすがに朝食及びそれを置くおぼんを片手で持ったり物体浮遊の魔法で浮かせたりして運ぶのは大変なので、一度お互い手を離し、班ごとに集まって朝食をとる。
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