深雪: deep snow
@mounfield
第1話「吹き抜ける風」
ヒノメ皇国、首都日京。
時刻は夜の23時。
街灯の少ない路地裏には、二人の男の姿があった。
一人は白衣を着た長身の男。もう一人は黒スーツ姿の大柄な男性だ。
「……ふむ、やはり私の言ったとおりになったようだね」
白衣の男はそう言うと懐から何かを取り出した。
それは銀色に輝く注射器のようなものだった。
「はい。残念ながら」
大柄の男性は心底不服そうな表情を浮かべていた。
彼はもう片方の手で懐から資料を取り出す。
そこにはソニア・ホワイトという文字と共に、一人の少女の写真が載っていた。
白髪の少女は虚ろな目で空を見上げている。
「この子ですか?」
「ああ、そうだ」
白衣の男が答える。
「しかし、本当にこれで良かったんですかね?この子はただの一般人ですよ。」
「いいんだよ。この子が居なければ皇国は滅んでいたんだ」
「まあ、確かにそうかもしれませんが……」
「それにこの子の両親は既に亡くなっていて、身寄りもないらしいじゃないか」
「はい」
「なら、私たちが貰っても問題はないだろう」
「……分かりました。それじゃあ私は戻ります」
男性は一礼するとその場から立ち去った。
残された白衣の男は写真を眺めて笑みを浮かべる。
「これで、皇国は救われる......君には期待しているよ。」
白衣の男の呟きに応えるように風が吹く。
夜の街を冷たい空気が包み込んだ。
深雪: deep snow @mounfield
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