第11話

千弥は人が到底及ばないような脚力で、砕けたコンクリを足場に、まだ破壊されていない雑居ビルの屋上へと一直線に跳躍する。

 屋上の床に着地すると同時にグフィトのトリガーを引き絞る。

 砲口に光を放つ粒子が収束し、光条として解き放つ。

 光の帯が消える前に、千弥はグフィトを左から右へと振りぬき、屋上に陣取った魔術師たちを薙ぎ払った。

 高エネルギーに嘗め尽くされた魔術師の大半は、塵一つ残さず消滅した。

 運よく、千弥の攻撃を回避できた魔術師は、攻撃目標を千弥へと定めた。

 魔法の矢の大群が千弥を目掛け、空中を突き進んでいく。

 回避不能の物量に物を言わせた攻撃。

 だが、迎撃は可能だ。

 千弥は、表情一つ変えずにグフィトを雀蜂の大群のような矢に叩き込んだ。

 それだけで、魔術師の攻撃はキャンセルされる。

 しかし、魔術師たちは今の攻撃は時間稼ぎだとでも言わんばかりに呪文を唱えていく。

 魔術師の唯一の攻撃手段である魔術は、詠唱さえさせなければ攻撃を受けることすらない。

「遅い」

 肉眼では捉えられない速度を持って、千弥は魔術師たちの視界から消えた。

 それだけで、魔術師たちの間に驚愕が走り詠唱が中断された。

 そのまま、千弥は名も知らぬ魔術師たちの間を疾走し衝撃波で吹き飛ばした。

 敵はビルの屋上から、虚空へと投げ出される。

 それに止めを刺すために身動きが取れなくなった魔術師へとグフィトを撃ちこみ蒸発させる。

 その熱量がコンクリを溶かし、赤熱化させる。

「殲滅思考から索敵思考へと移項」

 溶けた無機物が溶岩のようになっているその上で、千弥は周囲一体から己の機能をフル活用して、情報をかき集めていく。

「魔力反応感知。予測攻撃対象――アルケミオン」

 集めた情報をすぐさま解析し、敵の正確な位置を割り出していく。そして、敵をもっとも確実に葬り去れる地点へと消滅の光を叩き込んでいく。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る