第9話
「かくかくしかじかと言う訳で、彼女たちが巻き込まれた」
ここは、ボナハルトの執務室。
居るのは浄と部屋の主であるボナハルトのみだ。
由貴たちは別室で千弥が対応している。
「知っておる。全部、鈴が見ておったわ」
「そうだっ! 鈴のヤロウをぶっ飛ばさないと」
ガタンと音がしそうなほど勢いよく立ち上がった浄に、とある言葉が投げかけられる。
「女の子なのだからもうちっと、おしとやかにできんのか?」
「ちッ解ったよ。女らしくすればいいんだな?」
ニヤリと何かを企んでいるような笑みをボナハルトが目撃した瞬間、浄は行動に移していた。
「きゃあああああああああ、犯されるーーーーー」
ギルド中に聞こえるようにわざわざ拡声器を使い、穢れを知らない少女の様に悲鳴を上げた。
浄が女になっていると知らない者たちは、ボナハルトが今来ている一般人の女子高生に手を出したと勘違いしたことだろう。
「恥しくないのか? 男なのに女みたいな声を出して」
「…………」
羞恥心を煽るボナハルトの一言で、浄が紅葉を散らした。
「と、とにかくだ、魔術師に襲撃されたのは事実なんだ。また襲撃されるかもしれないから、強化薬(ブースター)の携帯と使用を許可してくれ」
「しかたないのう。まあそれくらいならいいじゃろ。ヴァチカンを襲撃した奴らといつ遭遇するかも解らんからな」
「よし! これで寝坊しても加速すれば間に合うな」
ガッツポーズをする浄を呆れたように半眼で見つめるボナハルト。
『パパ電話が鳴ってるよ? 出なくてもいいの? あたしが出ちゃうよ?』とあどけない幼女の声が執務机に置かれた電話機から流れ出す。
「幾らなんでもこれは無いだろ?」
「うるさいわい」
いそいそと話題をそらす為に電話に出るボナハルト。その際、受話器をとる前に、今出ますからと呟きながら受話器を持ち上げた。
「うむ。解った」
たった一言を交わしただけで、ボナハルトは受話器を下ろす。
そして、浄に向き直り険しい表情で言葉を発した。
「この町に、ヴァチカンを襲った機神が出現したそうじゃ」
「じゃ、じゃあ…………」
「戦争の幕開けじゃ。行ってくれるな」
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