第5話

 裸の女性が映っていた。もう、胸を曝け出し丸見えな状態だった。そんな女性の画像をパソコンの有機ELが描いていた。


「…………なんだこれ……………………あの禿は何がやりたいんだ?」


 矢印型のカーソルが×印のアイコンをクリックし、別なファイルを表示していく。

 展開されたテキストファイルには、

『あぁんっ、はぁ、そん、なの、はいら……ないよぉ。神さまの大き、すぎるぅ、あっ!』

 こんな文章が書かれていた。俗に言う官能小説というものだ。


 浄は、最初の一文で読むのを止め、別なファイルを開いていく。


『神秘は幻素によって引き起こされる。生物の誕生は細胞の結合で説明が付けられているが、心の誕生は科学では説明されていない。しかし、神秘学をも取り込んだ錬金術ならば説明は可能である。それらの形無き存在はすべて幻素の集まりによって形成される。幻素とは、総ての神秘の源である。


 この幻素を取り込み増幅させるのがキャスターであり、キャスターには個人個人に合わせて様々な形状をしている。』


「一体何のことだ? 幻素?  元素の間違いじゃないのか」


 そこまで呟き、ファイル名に気づいた浄が唖然となる。

 浄の網膜には、小説設定☆という文字が刻まれていた。


 本気であのハゲ馬鹿は本当に何がやりたいんだ……

 浄は、デスクトップパソコンの電源を切ると、自分の研究室に置かれている研究結果をまとめる為の執務机に、両肘を付いて何とはなしに考え事をする。


 もうそれしかやることが無いのである。


「はぁ。何か、面倒なことになって来たな……」


 浄は思う。今すぐにって訳じゃなさそうだから最後の日常を堪能しようと。

 戦いになったら、恐らく人が死ぬ。敵味方関係無しに。誰かが死ねば今までどおりには振舞っていられないだろう。何かをするにも贖罪が付きまとうのだから。


「全く、折角綺麗な人にあったっていうのに台無しだよ」


 浄は、昼間会った女性のことを思い浮かべていると、次第に自分が夢を見ているのか、それとも考え事をしているのか解らなくなり、硬く冷たい机に突っ伏し寝てしまった。


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