第39話 蛍石-2
気を利かせたショウから、誘いに乗ってくれたお礼を兼ねて部屋に届けられたのは、ジェニソン・バラドン・ヴァンドヴィル・ロゼ。
バラ色のシャンパンが注がれたフルートグラスを軽やかに揺らして、楓はほうっと息を吐いた。
まるで夢のような一日だった。
一生間近にすることが無いと思っていた華やかで刺激的なスタジオ撮影を見学することが出来て、そのうえ集合写真にお邪魔させて貰えたのだ。
データが届くのが今からもう待ちきれない。
打ち上げ始まって一時間ほど経ったところで、智寿からホテルに戻ろうと声を掛けられて、盛り上がっている雰囲気を邪魔しないようにそっと会場を抜け出した。
朝から移動で疲れただろうから、部屋で二人でゆっくりしようと言われた時は、色んな意味を考えて心臓が口から出そうになったけれど。
シャンパンを半分ほど開けたところで気分がふわふわしてきて、ソファの完全に背中を預けてしまった。
踵を浮かせた拍子に、爪先からヒールが抜け落ちていく。
折角撮影現場にお邪魔するのだからと、気合を入れてお洒落をして9センチヒールを履いて行ったが、それでもモデルたちは見上げる程に大きかった。
今頃になって思い出したようにジンジン痺れ始めた爪先を行儀悪くソファの上に持ち上げる。
回らない頭でシャンパンをもう一口飲んだら、隣から伸びて来た手にフルートグラスを奪われた。
「もう酔った?」
肩を抱き寄せた智寿が、楓の顔を覗き込んでくる。
行儀が悪かったなと反省して、足を床に下ろそうとしたら、大きな手のひらでむこう脛を撫でられた。
「・・・平気・・・です」
「足は?疲れただろ」
労わるように足首を撫でられて、アキレス腱を擽られて息を飲む。
「ん・・・だ・・・ぃじょ・・・ぶ」
そのままふくらはぎを撫で上げた手のひらが膝裏を擽って、太ももの裏側をやんわり撫でられた。
当然こんなところを触れられるのは初めての事だ。
心臓はあり得ないくらい早鐘を打っているけれど、酔っているせいか少しも怖くはない。
あれ、太ももを撫でられているということは・・・
マキシ丈のスカートがめくれあがっているこの恰好は、ちょっと身体を捻れば下着が見えてしまうのでは?
智寿がそういうつもりで触っているのか、それともただの気まぐれなのか分からない。
けれど、それ以上不埒な動きをしてこない手のひらを振り払うなんて出来ない。
太股の表面を撫でた指先が、内ももを掠めてくる。
「ん・・・っ」
むず痒い快感が走って、智寿の方へ身を捩った。
その隙に足を開かせた彼が腰を抱き寄せてくる。
次の瞬間には身体が浮いて彼の膝に下ろされていた。
「あ・・・の・・・」
太ももの下に筋肉質な智寿の足を感じて頬が火照った。
どうして良いか分からず視線を揺らす楓の後ろ頭を優しく撫でて引き寄せた彼が、そっと唇を重ねてくる。
息継ぎを教えるように背中を撫でながら唇の隙間を舌で割られた。
忍び込んできた肉厚な感触で狭い口内がいっぱいになる。
上顎を擽って、くるりと舌の周りを舐められると、ぞわぞわした新たな愉悦が肌を侵した。
脳が痺れて思考回路が急停止する。
彼の舌を追いかけて絡ませればご褒美のように表面を舐められた。
仰のいた隙に舌裏を舐められて、逞しい肩に縋りつく。
自分の身体が熱を宿し始めていることが分かった。
もどかしくなっている場所がどこなのかも。
頬を撫でた智寿が、少しだけ唇を離して楓の名前を呼んでくる。
「楓・・・・・・触ってもいい?」
どこに?という疑問の前に、頷き返していた。
首筋にキスが落ちて、耳たぶを甘噛みされる。
彼の吐息を鎖骨で感じたと思ったら、胸を包み込まれた。
やわやわも服の上から揉みしだかれて、じれったい心地よさが走る。
わき腹から擽ってそっと胸の尖りを探り出す指の動きに勝手に腰が揺れてしまった。
「ぁ・・・っ」
「これ、気持ちいい?」
見つけた凝りを洋服越しに引っ掻きながら智寿が小さく尋ねてくる。
身体を洗う時にもさほど意識しないその場所が焼けるように熱い。
小さく頷けば、カットソーの内側に手のひらが差し込まれた。
キャミソールを捲し上げて、背中を撫でた指が邪魔なホックを器用に外す。
まろび出たふくらみを手のひらに収めて、智寿が静かに息を吐いた。
優しく指を沈めながら掬うように親指で胸の尖りを嬲られる。
降りて来た唇が胸の谷間に吸いついて、智寿がそこに頬ずりした。
そのまま固まって動かない彼の肩を撫でながら、肌に触れる吐息を感じる。
胸が大きい事で得をしたことなんて一度もなかったのだけれど、こんな風に心地よさそうに頬を寄せる彼の姿を見られるなら、肩こりも我慢できる。
胸のふくらみに何度もキスを落とした彼が、少しだけ上目遣いになって、指で弄っていたその場所をぺろりと舐めた。
「ひぅっ」
舌の表面で押し込めるように舐められて、かと思えばすぐに転がされて、次々変わる刺激に唇から零れる声を我慢できない。
「ん、ぁ、ぁっん・・・っゃ・・・っ」
「これも、気持ちいい?」
「ん・・・・・・ぃい・・・っ・・・っん」
指で嬲られて、摘まんでは弾かれて、執拗に愛撫されればされるほど視界がだんだん濁っていく。
見せつけるように両方の胸を真ん中に寄せた智寿が、ちゅうっと赤いその場所に吸いついた瞬間、目の前がスパークして意識が飛んだ。
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