第45話 最後の洗礼始まるよ! 特別ゲストもいるよ! その一

「さぁさぁ今宵も始まるぞぉ!」

「皆大好きこの企画!」

「最後の【洗礼】のお時間だああああああああああああ」


 遂に最後の【洗礼】の時間が訪れた。


『いえええええええええええい』

『ふーーーーーーーーーーーー』

『カイリちゅわあああああああああん嫁になってええええ』

『婿でも可』


 コメントも大盛り上がりである。嫁にも婿にもならんぞ。


「今日はMC兼チーム【混沌】の一員として頑張るよ!」

「初期組も【混沌】呼びされてるのかよ」


『【混沌】と【混沌の申し子】が対決するのエモいな』

『エモいか?』

『エロいな……』

『カイリキュンはエロい』


 こいつらセクハラで訴えようかな。


「カイリはエロい(確信)」

「カイリ君にエロい事されたい。鞭で叩かれたい」

「お前らも訴えてやろうか。……また怒られるから一旦やめような」


 この前。否、毎度尺を使いすぎだと言われるのである。


「それではそれでは早速紹介!」

「本日も主役!【混沌の申し子】だあああああ」


『うおおおおおおおおおお!』

『きゃうぃりちゅわあああああああああん』

『瑠花ちゃそおおおおおおおおおおお』

『むぅおむぅおくゎちゅわぁぁぁぁん』


 呼び方の癖強いな。それ文字で打ったのかよ。


 さて。瑠花にも言われてるし。たまにはファンサもしなければいけない。


 咳払いを一つして。


「【混沌の申し子】のカイリ・ホワイトだよ! よろしくね!」

 うわきっつ! これ自分でやっといてなんだがきっつ!


『カイリちゃあああああああああああああああああああ』

『ア』

『顔真っ赤でやってると思ったら萌え゛っ゛……』

『死人が多すぎる』


 死にたい。穴があったら入りたい。


「相変わらず脳がバグる……」

「どっから出てるのその声」

「いや、そう言われても……戻すか」


『いかないで』

『でも元のカイリきゅんも好きだよ俺は』

『元のカイリきゅんの方が好きまである』

『ぎゅって抱きしめられて『漢』を感じながら耳元で囁かれて脳みそバグらせたいね』


 やばいな。とんでもないのが出てきた。でも俺の隣に居る奴の方がとんでもないんだよな。


「【混沌の申し子】一般枠の雨崎瑠花です」

「どの口で言ってんだよ」

「同じく一般枠の桜浜桃華よ」

「だからどの口で言ってんだよ。一般とは対極の位置に居るだろ」


『草』

『一般枠かぁ。すっごい清楚な子達なんだろうなぁ』

『初見です! 幼馴染にドスケベしそうな子と鞭で叩かれて喜んでそうな子ですね』

『幼馴染にドスケベしそうな子(固有名詞)』

『固有名詞じゃないよ! 居るよ!』

『他に居てたまるか』


 コメントに先に突っ込まれたが。瑠花みたいな奴が他に……。


 そういえば瑠花の友達。幼馴染が居たんだったか。

 まさかな。いや本当にまさかな。


「まあそれはそれとして。残りの【混沌】さん、いらっしゃーい!」

「ノリが別番組なんだよ。危ねえよ」


 壮大なオーケストラのBGMが流れ始め、二人が部屋に入ってくる。


「まずはまずはー!?」

「【Vtop】は彼女なしには語れない!」

「触れる者皆我がものにする! 力が欲しいか! ならば彼女の糧になれ!」

「【首領ドン】天井蜜!」

「Vtop一般枠の天井蜜でーっす」

「お前もかよ。一番一般枠であってはいけない人間だろ」


 天井である。相変わらずメガネに三つ編みのお下げである。

 ……黙っていれば可愛いと思うんだがな。癖が強すぎる。パクチーくらい強い。俺はパクチー好きだけど。


「そしてそしてお次はー?」

「【首領】の相棒も【首領】!」

「というか元締めと言っても良いかー?」

「【Vtopの若頭】芦澤カナタぁぁぁぁぁぁぁ!」

「Vtopの村人Aこと芦澤でーっす」

「1Vtuber事務所の肩書きじゃない」


 若頭て。あの手の道でしか聞いた事ないぞ。


「あとこんなバイオレンスな村人Aが居てたまるか」

「私は無害! 釘バットは標準装備や!」

「一行で矛盾しないでくれます?」


 やっぱ怖いよこの人。なんで標準装備が釘バットなんだよ。そんな世界ソシャゲかゾンビパニック系の映画でしか見た事ないぞ。


「さあさあお次は私達!」

「みんな大好き双子姉妹のー?」

「自己肯定感高いな……」

「そこ! やかましいよ!」

「肩書きを【炎牙穿剣レーヴァテイン】にしてやろうか!」

「はいすみません」


 でもちょっとかっこいいとか思ってしまっている自分が居る。やめろ、俺。正気に戻れ。


炎牙穿剣レーヴァテイン君さぁ……』

『理解らせカイリきゅん。良いな』

『メスガキカイリチャソを理解らせるカイリきゅんはよ』

『一人で二度楽しめるの美味しいな』


 もうやだぁ……このコメント。


「ちょっとカイリ。そんな顔したらいじめたくなっちゃう」

「私もいじめられたくなっちゃう……」

「SかMかどっちかにしてくれ。いやどっちも嫌なんだが」


 このままだと無限に話が脱線しかねない。また怒られてしまう。


「無限脱線編だね」

「興行収入ワースト一位とかになりそうだな」


『お前もメスガキにならないか?』

『メスガキボイスから逃げるなあぁぁぁぁ』

『やだぁ……こんなの見たくないぃ。お金返してぇ』

『興行収入ワースト一位の理由、分かっちゃったね』


「ちょっと怒られそうだからその辺で」


 そこで切ってあきふゆコンビにぶん投げる。困ったら先輩に任せれば良いのだ。


「後輩からのキラーパスが胸に痛い……」

「助けてみっちゃん」

「ごめんね。じゃじゃ馬には興奮剤投与するのが私の主義だから」

「これぞVtopって感じやな」


 助けて瑠花。Vtop怖い。


「ダメだよカイリ……そんな目で見られたら、鞭振りたくなっちゃう」

「味方がいねえんだ」

「じゃあ鞭は私にお願い!」


 もういいや。なるようになれ。


「じゃあじゃあちょっと巻けとスタッフから言われましたので!」

「改めまして私たちの紹介をば!」


『あきちゃあああああああああああ』

『ふゆちゃんかわいいよおおおおお』


 フライングしてるが凄い盛り上がりである。やはりこの二人も人気なようだ。


「紅葉のように可憐でー?」

「雪のように真っ白な心!」

「梨みたいにみずみずしくて?」

「みかんのようにあまずっぱい!」

「その正体は〜!」


 ばばん! と音が鳴って二人が背中合わせになってカメラへ指を向ける。


「【秋色天使!】大空秋と!」

「【冬色天使!】大空冬でーす!」


『あああああああすきいいいいいいい』

『美味しいものいっぱい食べてすくすく育つんだよ』

『天使だあああああああああ』


 凄い人気だし、まともな前口上である。正直羨ましいが、これもMCの特権か。


「みんなありがとうねー!」

「お布施の分しっかり働くよー!」


 しかし――あと一人、居るんだよな? 誰なんだ?


 全然想像がつかない。グループによってモデルっぽいのはあるようなので、また高校生だろうか。


「さあさあ大トリはこの子!」

「緊張してる? してるかなあ? 胃薬いる?」


 とか考えていたら答え合わせの時間が来たらしい。


「誰よりも優しく誰よりも気高い!」


 ほう?


「その肉体に包まれると天国が見えると言われている!」


 ふむ? お姉さん系か?


「しかしその正体は闇に隠れし鋼の筋肉マッチョ!」

「流れ変わったな」


 方向転換が凄まじい。180°変わったぞ。


「その肉体に包まれて圧死してきた男子おのこは数しれず!」

「その筋肉の輝きは見るものの視力を皆無にする!」

「【生まれつき腹筋6LDK】林原門左衛門はやしばらもんざえもんだあああああああ」

「なんでここに来て過去一キャラ濃いのが出てくるの!?」

「――と、言いたかったんですが」

「はい?」


 どんな筋肉が入ってくるんだろうとソワソワしていたが、また流れが変えられる。


「門左衛門ちゃん、急性胃腸炎のため今日はお休みになります」

「ここに来てお預け!? めちゃくちゃ気になるんだが!?」

「門さんもカイリ君と会えるの楽しみにしてたんだけどねー、残念」


 門左衛門さんめちゃくちゃ気になるが。この前口上でどんな人が来るのか気になったんだが。

 生まれつき腹筋6LDKってなんだよ。お母さん怖くて悪魔祓い呼ぶだろ。


『門さん今朝めちゃくちゃ体調悪そうだったもんなー』

『どんな化学反応起きるか楽しみだったけどしゃーない』

『また今度コラボしてくれカイリきゅん』


 まあ……体調不良なら仕方ないか。うん。


「じゃあ今日は四人なんだな」

「ふっふっふ。やっぱり君がVtopで良かったよカイリきゅん」

「という事で! 急遽特別ゲストを呼びました!」

「え?」


『特別ゲスト?』

『お? 社長出てくる?』

『こんなカオス空間にVtopの社長ぶち込むのは可哀想だろ』


 特別ゲスト? Vtopの誰かか? というか俺も聞かされてないんだが。


「さあさあみなさん盛り上がれ!」

「今宵来るはカイリきゅん達と同じく新進気鋭のスーパールーキー!」

「僅か一週間でSNSのフォロワー十万超え!」

「Vtuberかと聞かれれば少し怪しいのには目を瞑ってね!」

「さあ! 来い!」


 扉が開いて、とある人物が入ってきた。


「【バズりの神童】ルム・フトゥー!」


 ゴスロリを着た美少女…………いや、違うな。


『おとこの娘コラボキタ━(゚∀゚)━!』

『ルムチャソだって!?』

『ルムチャソとカイリチャソに罵倒囁きASMRされて歪まされたい』


 やはりそうか。同じ匂いがしていた。


「……えっと。ルム、です。よろしくお願いします?」


 声もちゃんと可愛いな。仕上げられてる。


「燃えてきたね、カイリ。メイク道具は持ってるよ」

「お前さっきまで手ぶらだっただろ。どっから出したんだよ」

「さあ! カイリもおとこの娘になるんだよ! ……ってのは後にして」


 瑠花がそこで言葉を止め、ルムを見た。


「うん、やっぱりそうだね」

「る、瑠花?」

「凄いね、カイリ。まさかこんな所で会えると思ってなかったんだけどさ」

「知り合いなのか?」

「んー。知り合いって言うと微妙だけど。聞いたらカイリも分かると思うよ」


 ルムが動揺したように目を泳がせる。瑠花がニコリと笑った。


「ね、北のジャックナイフさん?」



 ……はい?

 え? ジャックナイフって。……あの厨二病四天王? 自分で言いたくないが。え?


 いや、さすがに瑠花の考えすぎだろう。そう思っていた。


「……ど、どうしてそれを」


「……ガチ?」


 え? ここで? ここで邂逅するの? 四天王と?


 って事はまた黒歴史掘り返されんの?

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